「未上場企業への投資機会を」ーーエメラダ澤村社長インタビュー

「未上場企業への投資機会を」ーーエメラダ澤村社長インタビュー

個人投資家がオンラインでベンチャー企業に出資できるプラットフォームを運営するエメラダ

同社は11月7日に「エメラダ・エクイティ」というサービスを新しく公開しました。
今回はサービス開始にあたり、代表取締役社長である澤村氏に、「エメラダ・エクイティ」についてお話を伺いました。

「エメラダ・エクイティ」とは

ーまずは「エメラダ・エクイティ」がどのようなサービスなのか教えてください。

「エメラダ・エクイティ」は、個人投資家がオンラインでベンチャー企業1社に対して最大49万円まで投資ができるプラットフォームです。

「エメラダ・エクイティ」

ー「エメラダ・エクイティ」ではどういった企業へ投資できるのでしょうか。

投資対象は非上場企業です。
非上場企業の中でも、ずっと未上場で経営する中小企業ではなく、将来IPOやM&Aでの株式売却を目指すベンチャー企業を対象とします。
このようなベンチャー企業に限定している理由は、個人投資家に投資先が成功した場合のリターンを提供するためです。

また、ベンチャー企業の中でも、既にベンチャー・キャピタルやエンジェル投資家※1から出資を受けている企業に限定します。
プロの投資家から出資を受けている企業は、一般的に成長への期待があると考えらえるからです。

米国では「エンジェルリスト」というオンライン増資プラットフォームが既に大きくなっています。
米国では過去数年で1,500億円以上の金額がこれらのオンライン増資プラットフォームを通じて調達されています。

日本でも「エメラダ・エクイティ」の登場でこのような機運が増していくと考えています。

ー「エンジェルリスト」とはどのようなサービスですか。

「エンジェルリスト」とは、プロの投資家が出資したベンチャー企業に対して、ベンチャー業界にアクセスのない個人投資家でも出資できるようにしたオンライン上のプラットフォームです。
これにより一般の個人投資家でも、プロの投資家が「目利き」したベンチャー企業に出資できるようになったのです。

未上場企業への投資時の情報開示は必ずしも多くない中で、このような仕組みにより個人投資家としても抵抗感が小さくなっているのだと思います。

日本では、法制度の観点からこうしたサービスの実現は難しい状況が続いていました。
しかし、金融商品取引法の改正をきっかけに、「エメラダ・エクイティ」のようなサービスを提供できる土壌が作られたのです。

エメラダは、ベンチャー企業に資金調達の選択肢を、個人投資家の方々に開放していきたいと思っています。

出資先を投資によって支援できる

オンライン証券→大手投資銀行→フィンテック起業

ーエメラダ社設立の経緯を詳しく教えてください。

エメラダを立ち上げたのは、未上場企業が不自由なく最適な資金調達ができる世界を作りたいという想いがあるからです。

これには私の経歴が大きく影響しています。

まず、大学生の時にマネックス証券で松本大社長の近くでアルバイトをする機会をいただきました。

初めてデスクに座ったときに、マーケットではある大きなイベントが生じていて、モタモタしていたら社員さんにすごく怒られました。
初日からものすごく落ち込んだ記憶があるのですが、金融市場というのはとても動きが速くて面白い世界だなと思いました。

また、インターネットで金融を変えるというトレンドにもとても関心を持ちました。

このアルバイトでの経験をきっかけに金融業界でのキャリアをこころざし、大学卒業後は野村證券の投資銀行部門、その後ゴールドマン・サックス証券の投資銀行部門で働きました。
大企業の株式上場や資金調達などをたくさん担当しました。

ここでは洗練された金融の世界にどっぷり浸かり、本当にいろいろなことを学べました。

働く中で知ったのは、未上場企業の中で最適な資金調達を選択できているのはほんの一握りであること。
大企業ともなると、豊富な経験を持つ財務担当者がいますし、そのような財務担当者に対してたくさんの金融機関が多種多様な資金調達の提案をしています。

「判断できるひと」と「たくさんの選択肢」という二つが存在していて、情報が対象な世界なんです。

一方、多くの未上場企業は、情報が非対称な世界にいました。

多くの未上場企業では、少人数でたくさんの業務を担当します。
従業員は常に忙しく、資金調達に関する十分な知識なく、とにかく前に進むという状況です。

また、資金提供者の提案や付加価値についてはもっと多様性があってもよいのではと感じられました。

情報が対称な世界では効率的なお金の流れが生まれるのだと思います。
そして、効率的にお金が流れるからこそ、成長領域にしっかりと必要資金が流入していくと信じています。

だからこそ、未上場企業の世界に、テクノロジーを活用して、情報対称な世界、効率的な世界をもたらしたいと思いました。
そんな中、ニューヨークでフィンテック企業の創業者たちと話す機会があり、ビジネスの着想につながりました。その後、エメラダを設立しました。

エメラダエクイティは出資先を支援する投資

ベンチャー企業への投資における、新しいリスク・リターンのバランス

ーベンチャー企業の審査基準を教えてください。

外部のプロの投資家がすでに株主にいることを重要視しています。

プロの視点で「このベンチャー企業なら成長する可能性がある」と判断された案件に限定することで、普段ベンチャー企業への投資に慣れていない方でも取り組みやすくなると考えています。
プロの投資家とは、エンジェル投資家やベンチャー・キャピタルを想定しています。

そのほかに、経営者の資質、市場選択、ビジネスモデル、法令順守等の観点も考慮します。

ただ、「エメラダ・エクイティ」は、個人投資家とベンチャー企業をつなぐオンライン・プラットフォームです。
弊社が前もって審査を行うものの、そこは一定程度の水準に留めたいと思います。

投資するかしないかの判断は、個人投資家の方々に委ねて、楽しんで頂きたいと思っています。

ー個人投資家はどのような情報が見られるのでしょうか。

投資にあたり必要な情報は原則的に開示いたします。

例えば経営者へのインタビューを動画で配信して、経営者の資質などを知っていただけるようにいたします。
そのほか、どのようなプロの投資家がすでに出資をしているのかや、事業概要、沿革、事業戦略、財務状況等もわかりやすく整理しています。

さらに、上場や売却など、将来的にどういったエグジット(既存の投資家が投資持ち分を現金化すること)を目指しているのかなども確認できます。

ー個人投資家は出資した企業が株式上場したり、買収されることにより、収益を得ることを期待していると思います。どのくらいの企業がそのような結果を得られると想定していますか。

どのくらいの会社が上場するか、もしくは買収されるかについては、なかなか想定しにくいですね。
日本のベンチャー投資金額は近年、急速に増えていますが、全体の中でどれくらいの企業が成功していくのか、日本全体が見守っていく必要があると思います。

「エンジェルリスト」をはじめとした欧米の株式型クラウドファンディング・プラットフォームでは想定IRRが開示されており、しっかり実績も出ています。
最近では、「エンジェルリスト」で資金調達をしたCruise Automationという自動運転のスタートアップ企業が1,000億円以上(1ドル=100円換算)でGeneral Motorsに買収されたという有名な事例があります。※2

もちろん、不確実性の高いベンチャー投資ですから、全ての元本を回収できるという状態は想定しづらいでしょう。

ですので、個人投資家の方々には一ヶ所に集中投資していただくのではなく、複数のベンチャー企業に投資を分散することをおススメします。

たとえいくつかのベンチャー企業が失敗して価値がゼロになっても、そのほかの投資先でリターンを出すことが出来れば、全体としてはプラスになる可能性があります。もちろん、そうならないかもしれません。

エメラダの想い

ー個人投資家の方々はどのように「エメラダ・エクイティ」へ投資するべきでしょうか。

すでに述べた通り、高いリターンが見込める一方、リスクも相応にあります。

そして、流動性の低い投資資産です。つまり、一度投資をしたら、投資先企業がIPOやM&Aでの売却が生じない限り、売却や換金する機会は基本的にはありません。

重要なのは、まずはご自身の投資ポートフォリオの中で、流動性の低い未上場株式に投資する比率を何パーセントとするか決めることだと思います。
その上で、リスクを抑えるために分散投資すると良いかもしれませんね。

ー「エメラダ・エクイティ」上ではどれくらいの企業数が掲載されるのでしょうか。

1件あたり5,000万円前後として、まずは一件ずつ徐々に公開していきたいと思います。
個人投資家の皆様の温度感をしっかり理解したいと思っています。

その後、頻度をあげていくことを検討します。

ベンチャー投資をもっと多くの人ができる世の中に

ーどういった個人投資家の方々に「エメラダ・エクイティ」を使っていただきたいですか。

「エメラダ・エクイティ」ではベンチャー企業の成長をサポートしたいという方に投資をいただきたいと思います。

ベンチャー企業の多くは、成長に必要な人的資源と金銭的資源が限られています。
もちろん、エンジェル投資家やベンチャー・キャピタルはアドバイスや事業展開の側面サポートをしますが、それでも資源が十分ではないかもしれません。

事業展開を加速させるためには、「1. 必要な人員が整っていること(採用の必要性)」、「2. 自社の認知度が高まっていること(PRの必要性)」、「3. 顧客を獲得できていること(営業の必要性)」が大切です。

個人投資家の方々が、これまでのキャリアを通じて得た経験や人脈を活用して、例えば投資先に必要な人材を紹介したり、SNSで投資先の宣伝をしたり、投資先に顧客を紹介したりすると、そのベンチャー企業の成長速度はもっと上がるはずです。

米国では幅広い個人投資家がチャレンジをするチームに株式投資をする文化が根付いてます。
そうした個人投資家が投資をしたベンチャー企業が、将来株式上場したりM&Aで売却などされると、「〇〇さんはあの有名な〇〇社に初期段階で投資をしたすごいひとだ」というような評判にもつながります。

このような文化が日本でも根付くためのきっかけとして、「エメラダ・エクイティ」が活用されたらうれしいと思います。

金融業界とテクノロジー業界の専門家集団

ーエメラダ社の体制や従業員の役割などについて教えてください。

現在の従業員数は、役員を含めて15名程度です。今後もどんどん人材を採用していきます。

経営陣の多くは10年ほど大手金融機関で働いた経験者で構成されています。
CEOの私は、野村證券とゴールドマン・サックス証券でM&Aや資金調達の助言業に従事していました。
ほかには、ゴールドマン・サックス証券にて株式のアナリストとして、上場している有価証券の株価予測や事業計画の分析などの経験を積んだ者や、ゴールドマン・サックス証券で機関投資家営業をしていた者もいます。

オンライン・プラットフォームの開発では、ソニーでVR開発を行っていたエンジニア、未踏プロジェクトに採択されたことのあるエンジニア、リクルートでデザインに関わっていたものが活躍しています。

金融商品取引業者なので、コンプライアンスも強固にしています。
コンプライアンス、内部監査、外部監査、広告審査などにそれぞれ専属のメンバーが配属されています。三菱UFJフィナンシャルグループで、副コンプライアンスオフィサーを勤めていたものも在籍しており、今後当局とはしっかり対応をしていきたいと思います。

ー最後に投資家の方々にメッセージをください。

ソーシャル・レンディングと異なり、「エメラダ・エクイティ」での投資は、「熱量」と「長期的視点」が個人投資家の皆様に求められます。

すでに述べた通り、投資先のベンチャー企業の採用活動、PR活動、営業活動などをそれぞれの個人投資家なりにアシストすれば、投資先の事業の成功確率はより高まるかもしれません。投資活動自体が、お金だけではなく、投資先とのつながりを持つという「熱量」が伴います。

また、上場株式と異なり流動性が低いので、IPOやM&Aまで事業が大きくなっていくのを見守り、「長期的視点」で考えることが大切です。

シリコンバレーにはエンジェル投資家がたくさんいますが、UberやTwitter等に初期投資を行ったNaval Ravikant氏、GoogleやPayPalに初期投資を行ったRon Conway氏、Facebook、Airbnb等に初期投資を行ったReid Hoffman氏などが有名です。
なお、Naval Ravikant氏は、「エンジェルリスト」を立ち上げたことでも有名です。

「エメラダ・エクイティ」で是非エンジェル投資家やベンチャー・キャピタリストとの「相乗り投資」をしていただけたら嬉しいです。

その経験を通じて、個人投資家の皆様が周辺で起業を促す文化を広めていく流れを作る、そういう流れができるなら、日本のイノベーションの促進を担う独特な投資家コミュニティが形成されるかもしれません。
そういうことを想像しながら、私達エメラダはとてもワクワクしながら仕事をしていきます。


1) スタートアップに対して初期ステージで出資を行う個人投資家。多くの場合、自身が起業や事業の立ち上げを経験しており、その知見や人脈等を活用して、投資先のスタートアップのバリューアップに貢献する。
2) http://fortune.com/2016/03/23/equity-crowdfunding-just-had-its-first-billion-dollar-exit/