
ソーシャルレンディング投資や不動産融資(投資)において、「シニアローン」や「メザニンローン(メザニン融資、メザニンファイナンス)」という単語が出てくることがあります。
これらの用語は、不動産融資における形態を表します。
投資や融資、ファンドの安全性を評価する上で、これらの言葉を理解することは非常に重要となります。
今回は、これらがどのように異なるのか、ファンドの安全性の判断基準にどのように関わるのか解説いたします。
目次
2つの資金調達方法
シニアローンとメザニンローンの説明をする前に、まずは資金調達の基本を理解する必要があります。
まず、企業が事業資金を準備する際には2つの調達方法があります。
1つは負債による調達、もう1つは自己資本による調達です。
前者の負債による調達は、金融機関などを通して間接的に資金を調達する方法です。
負債は返済の義務があり、もし返済が滞ると、担保とする企業の資産を差し押さえられてしまいます。
不動産担保ローンによる調達方法は「負債」に該当します。
ソーシャルレンディングの不動産ファンド(借り手企業が不動産企業のファンド)も同様のケースが大半です。
つまり、ソーシャルレンディングを用いて資金調達をした債務者は、ファンドへの分配金や元本償還が義務です。
一方で後者の自己資本による調達は、自社が保有する資金を繰り入れたり、投資家から資金を調達したりする方法で、返済の義務はありません。

負債にはシニアローンとメザニンローンがある
負債の中にもシニアローンとメザニンローンという2種類があります。
シニアローンとメザニンローンは、金利と保全性の観点で大きな違いがあります。
それでは今回の本題でもあるシニアローンとメザニンローンについて、詳しく見ていきましょう。
シニアローンとは
シニアローンとは従来からある通常の貸付です。
後述するメザニンローンよりも返済順位が高く、比較的ローリスクなローンを意味します。
シニアローンは貸し手側から見れば、保全性が高い点がメリットとなります。
万一、債務者からの返済が滞った場合、債権者は貸付に設定された担保や保証を使って回収を行いますが、シニアローンの債権者が優先的に回収することができます。
一方で借り手側から見れば、金利を抑えて調達できることがメリットとなります。しかしながらその分、審査が厳しいため、資金調達に時間を要したり、必ずしも希望の全額を調達できるとは限らないこと等がデメリットとなります。
メザニンローンとは
メザニンローンとはシニアローンと対極にあるローンで、劣後するローン(貸付)を意味します。
貸し手側から見れば高い金利を設定できることや、相対的に審査が楽で借りやすく、返済方法もアレンジがきくため、柔軟性が高い点等がメリットとなります。
しかし、万一、債務者からの返済が滞った場合にはシニアローンが優先して回収されるため、メザニンローンは全額を回収できないリスクが高いことがデメリットとなります。

シニアローンとメザニンローンの関係性?
両ローンの関係性を表すと、「メザニンローンはシニアローンの補完的な役割を担う」と言うことができます。
不動産事業を例にとって解説します。
自己資金300万円で価格2,000万円の不動産を購入したいと考える人がいたとします。
この場合、不動産価格と自己資金の差額である1,700万円を工面する必要があります。
そして、差額:1,700万円の資金調達先として、まずは銀行にローンを依頼します。
審査の末、銀行からは、不動産価格の70%にあたる1,400万円まで借りることができました。こちらがシニアローンにあたります。
しかし、残る300万円の資金調達が必要となります。この調達方法として、金利は高いものの、信販会社から資金調達することができました。こちらがメザニンローンです。

このようにメザニンローンは、シニアローンで調達しきれなかった資金を補完する役割を担うものとなります。
ソーシャルレンディングにおけるメザニンローンの活用
シニアローンとメザニンローンを組み合わせるスキームは、ソーシャルレンディングにおいてもよく使われます。
特に不動産型ソーシャルレンディング事業者であるOwnersBook(オーナーズブック)では、ほぼ全案件がシニアローン・メザニンローンのスキームとなっています。
トラストレンディングなど、OwnersBook以外のソーシャルレンディングでも、「本案件の貸付は第3順位の抵当権を設定します」のような記載で「第2順位以下」の抵当権が設定される場合、その案件はメザニンローンということになります。
※トラストレンディングを運営するエーアイトラスト株式会社に対し、2018年12月14日付けで行政処分が行われました。詳しくはこちらをご覧ください。
メザニンローン案件に投資する際の注意点
メザニンローン案件に投資する際、担保評価額の確認を怠らないよう注意する必要があります。
自分の案件より上位のローン額と担保評価額の差額を計算し、自分の案件が担保評価内に収まるか否かを確認しておくことをオススメします。
もし、投資を検討しているファンドにおける担保評価額からシニアローン額や上位のローン額を引いた額が、自分のファンドの募集額を上回っていない場合、債務者が返済不能に陥った場合のリスクについて注意が必要です
ソーシャルレンディングにおける不動産事業者
ソーシャルレンディングの中で現在不動産に特化した事業者は8社、不動産ファンドを扱う事業者も合わせると16社存在します(2018年3月時点)。
こうした不動産ファンドを扱う事業者では、シニアローン・メザニンローンのスキームが広く使われています。
投資を行う際には、シニアローン案件なのか、それともメザニンローン案件なのか確認を怠らないようにしましょう。
リスクを抑制した不動産ファンドへの投資にはこうした確認が不可欠です。
【不動産投資ができるソーシャルレンディングサービスの一覧はこちらから】
・【16社】不動産投資ができるソーシャルレンディング事業者一覧と比較
まとめ
最後に今回の投稿をまとめます。
従来からあるシニアローンに対して、補完する役割としてメザニンローンがあります。
メザニンローンは回収の権利がシニアローンよりも劣るため、万一の際は全額を回収できないリスクが高まります。
その一方で、メザニンローンはそのリスクに見合うだけの高い金利が設定できる点が魅力です。
貸主から見れば、メザニンローンのリスクが高いことは否めませんが、担保分析をしっかり行ったうえで安全性が確認できれば、最高の投資機会であると言うことができるのです。