こんにちは、A氏です。今回は投資商品の収益計算に欠かせない「利回り」について取り上げます。「利回り」なんて誰でも知っていると多くの人が思うかもしれません。
しかし、利回りと利率を混同して理解していたり、「利回り」と思っていたものが「表面的な利回り」だったりというところまでしっかり理解されていない場合もあります。
投資した後、「こんなに利益が少ないと思ってなかった!」という思いをしないためにも、正しい「利回り」について理解しておきましょう。
目次
利回りとは?
利回り(年利回り)とは、投資した金額に対する収益割合を1年当たりの平均に直した数字を意味します。計算式で表すと以下の通りです。
例えば100万円を金融商品で3年間運用した結果、30万円の分配金を受け取り、その金融商品を130万円で売却できたとします。
この場合、元本100万円が、3年間で160万円(利益と売却差益)を生んでいます。これを1年間では20万円の収益を生んでいるため、年利回りは20%となります。
※正しくは年間利回りとして1年間の利回りを表現しますが、多くの場合年間利回りとして利回りと記述されています。
利率とは?
利回りと異なる言葉として「利率」があります。利率(年利率)は、1年内の元金に対する利息の割合を指します。
先の例になぞらえると、1年間あたり10万円の分配金を受け取っているため、利率は10%となります。
利回りと利率の違い
上記の説明から、利回りと利率は利子を考慮にいれるかどうかという違いがあることを理解してもらえたかと思います。
また期間の考え方の違いに伴い、「複利」という違いも生じます。
複利とは、運用期間中に生じる分配金を再投資することで投資元本を上乗せして利回りを高める効果を指し、利回りにのみ適用される考え方です。
例えば年間1%の金利が設定された定期預金に対して、100万円を繰り入れて3年間運用する例を考えてみましょう。
毎年得られる利息を定期預金から引き出してしまった場合、利回りは1%となります。
一方で毎年の利息を再投資に回した場合、利回りは約1.1%となります。
この例では「年間1%の金利」が利率にあたり、どんな運用方法であっても利率は1%です。
一方で利回りは「複利」を利用するか否かで差異が出ており、運用のやり方次第で良くできる指標であることが分かります。
表面利回りと実質利回り
利回りについてさらに詳しく見ていきましょう。
利回りには大きく分けると「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。投資にかかる手数料・税金などの費用を加味するか否かが2つの利回りの違いとなります。
投資から得られる収益から単純に利回り計算する場合は「表面利回り」、費用を加味して利回り計算する場合は「実質利回り」となります。
それぞれの利回りを計算式で表現すると以下の通りです。
検討中の投資商品は表面利回りですか?実質利回りですか? これを意識しなければ、期待していた利益を上げられないどころか、マイナス利回りの商品をつかまされることさえあるので注意しましょう。
金融商品ごとの利回り計算
ここまで利回りに関する一般的なことを説明してきましたが、実際の資産運用では各金融商品に応じたアレンジが必要となります。
3つの金融商品を例に、それぞれの利回りについて深堀りしてみましょう。
以下、すべて実質利回りの計算式となります。
不動産投資
不動産投資の利回りの計算式は以下の通りです。
経費の中には、維持管理費、固定資産税、火災保険料などさまざまなお金がかかります。また家賃収入は満室になっているのか、それとも空室が存在しているのかで変わってきます。不動産の購入金額にもよりますが、空室をいかに減らすかによって利回りも変わりそうですね。
こうして金融商品ごとに計算式を比較していくことで、自分自身に合っているものを見つけられるかもしれません、続いて株式投資を見てみましょう。
株式投資
株式投資に関わる収益と費用の項目を整理したものが下図です。
利回りを計算式で表現すると以下の通りです。
長期保有を考えている場合は配当金で利回りを考える、配当利回りという計算もできます。
以下はその計算式です。
(1株あたりの配当金 ÷ 購入株価) × 100=配当利回り
例えば1株あたり3,000円のA社の株を100株購入し、1株あたりの配当金が30円だった場合、
((30円×100株) ÷ (3,000円×100株)) × 100 = 1%
となります。配当金は年2回もらえることが多いので、配当金が高い企業の株式へ投資していくこともよいでしょう。
投資信託
次に投資信託に関わる収益と費用の項目を整理したものが下図です。
費用項目が増え、株式よりも明らかに複雑な感じがしますね。
それでは、投資信託の計算の例を見てみましょう。
株式投資と比較して費用項目が2つ増え、計算が複雑になりました。投資信託特有の販売手数料・信託報酬・信託財産留保額ですが、商品ごとに費用料率が異なるため、料率の大きい投資信託を選ぶと利回りが悪化してしまう点に注意が必要です。
ノーロード(販売手数料無料)や信託報酬が低い投資信託を選んで、できるだけコストを減らして利回りを高くできる可能性もあることがわかります。計算式を理解することで、売買益を上げていくだけではない方法もあるということが理解できるでしょう。
ソーシャルレンディング
最後にソーシャルレンディングに関わる収益と費用の項目を整理したものが下図です。
ソーシャルレンディングは収益も費用も項目がほとんどありませんので、以下の通りシンプルに利回りが計算できます。
ソーシャルレンディングは販売手数料や運用管理手数料が不要な点が、株式投資や投資信託と比較して優位な点であることが分かります。
ちなみに多くのソーシャルレンディングのファンド募集ページでは、税引き前の利回りが記載されているため、表面利回りを投資家自らが計算する必要はありません。
まとめ
今回の記事のまとめです。
- 利回りとは、投資元本に対する利子も含めた収益割合の年間平均を意味する
- 金融商品ごとに収益や費用の項目が異なるため、特性に応じた利回り計算が必要である
- ソーシャルレンディングは他の金融商品と比べて費用項目が少なく、利回りの目途が立てやすい
利回りを正しく理解することはできたでしょうか? 今後の資産運用でこの利回りを正しく計算していくことで、目標とする資産金額まで迷うことなく進むことができるようになります。しっかりと理解して、さまざまな資産運用に役立てましょう。
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