お金を借りたい会社と、お金を運用して増やしたい投資家をマッチングするサービスであるソーシャルレンディング。
昨今増加しているソーシャルレンディング事業者の一つである「みんなのクレジット」が、投資家から集めた資金を事前の説明とは異なる融資先に貸し出すなどをしていたとして、証券取引等監視委員会は行政処分を行うよう金融庁に勧告する方針である。
以下に、証券取引等監視委員会による行政処分勧告における事実内容に関して、証券取引等監視委員会の発表を元に解説する。
金融商品取引契約の締結又は勧誘において重要な事項につき誤解を生じる行為は以下の通り
1. 実際はみんなのクレジット社の親会社及びグループ会社に対する貸付であるにもかかわらず、ウェブサイト上では「不動産ローンファンド」や「中小企業支援ローンファンド」等と表示しており、「貸倒れリスクが分散できている」と投資家に誤解を与える表示があった上、投資家に対して出資を募った。
また、投資家から集めた資金の返済は債務者の不動産事業等による収益から行うとウェブサイト上に記載がある。しかしながら、実態としては、返済資金が償還期限前であるファンドの資金から充当されている案件があった。
2. 貸付先(債務者)からの担保として、不動産、または有価証券を設定する旨を表示しているにもかかわらず、実際は担保の大半がみんなのクレジット社の親会社及びグループ会社が発行した未公開株であった。また、担保が設定されていないファンドも存在した。
投資家保護において問題が認められる状況は以下の通り
1. ファンドの償還資金に他のファンド資金が充当されている
2. キャッシュバックキャンペーンで還元した現金に投資家から集められた出資金が充当されている
3. 代表である白石氏自身の借入返済などに、ファンド資金が充当されている
4. グループ会社の増資に投資家から集めた出資金が充当されている
5. 最大の融資先(債務者)である親会社がファンドからの借入を返済することが困難な状況
ソーシャルレンディングは、当局の指導により融資先の企業名など詳細な情報を明らかにできない。こうした制限は、債務者保護を第一に考えるために設けられている(1)一方、投資家にとっては情報の透明性が損なわれるという問題も孕んでいる。
今回の事象について金商法に詳しいユナイト法律会計事務所の川中浩平弁護士は以下のようにコメントしている。
「ソーシャルレンディングでは、当局の指導や貸金業法の要請により融資先に関する詳細な情報を投資家に開示することが難しい。だからこそ、投資家保護の観点から、出資金の使途に関しては、高いレベルの管理が求められる。それにもかかわらず、運営業者が今般公表されたような投資家軽視の杜撰な行為に手を染めているとなると、ビジネスモデルそのものに対する信頼性が損なわれるおそれがあり、非常にマイナス。業界全体として、出資金管理の徹底を図るとともに、出資対象事業や融資先企業のモニタリングについても強化することが求められる。」
証券取引等監視委員会は「平成28年11月末現在で償還期限が到来していないファンドは、56本、出資金約17億6000万円」と発表しているが、既に投資家から集めた資金の今後の運用に関しては不透明であるため、みんなのクレジット社からの発表が待たれる。
現在、フィンテナは、みんなのクレジット社に今回の勧告に関する取材を申し込んでいる。こちらは進展があり次第フィンテナにて取り上げる予定。
(2017年3月30日追記:本記事において言及されている事象について、本日未明、関東財務局およびみんなのクレジット社より発表がありました。本件についてはこちらもご覧いただきご自身で判断されるようお願いいたします)