2017年3月8日(水)にミッドタウンにて行われた「ソーシャルレンディングサミット」。
ソーシャルレンディングの主要な事業者と投資家が一同に会し、ソーシャルレンディングの現状や課題、今後の展望について語りました。今回の記事では、第一部のソーシャルレンディングの現状と仕組みの様子を書き起こしにてご紹介いたします。
<講演者>株式会社クラウドポート 代表取締役 藤田 雄一郎
目次
みなさん、お忙しい中ソーシャルレンディングサミットにお越し頂き、誠にありがとうございます。
私の方からはソーシャルレンディングの現状と仕組みということで簡単にお話させていただきたいと思います。
ソーシャルレンディングとは?
今日ここにいらっしゃっている方はソーシャルレンディングの知識がおありになると思いますが、念のためにお話しさせていただきますと、ソーシャルレンディングとは「お金を借りたい企業とお金を増やしたい人をマッチングするサービス」です。
今日はいくつかのデータを見ながら、ソーシャルレンディングの現状がどうなっているのか見ていこうと思います。
ソーシャルレンディングはFintechの中核である
まず1つ、記事を見ていただきたいんですが、こちらは日経新聞の記事です。
2015年はソーシャルレンディングとクラウド型会計ソフトがFintech市場を牽引、と書いてあります。
実はこれまで、ソーシャルレンディングというのはFintechの文脈で語られることは少なかったのです。
ただ、最近になってその風潮も変わって来ており、「ソーシャルレンディングはFintechの中核である」というような見解を述べられる方も少しずつ増えて来ています。
その背景には、ソーシャルレンディングの国内における市場規模の急拡大があります。
1度こちらのグラフをみていただきたいのですが、2014年には143億円だった市場規模が、2015年で310億円、そして2016年には533億円まで急成長しております。
前年比1.7倍となっております。
さらに、ソーシャルレンディング参入事業者数も影響を受けております。2014年には6社だった事業者数が、2015年には10社、2016年には20社にまで増えております。
我々が把握しているだけでも、今年度中にあと5社ほど参入する予定ですので、ますます事業者数がこれから増えていくのではないかと思います。
直近の募集額の推移を見てみましょう。
ちょうど2016年の11月から急激に増え始めておりまして、2017年の1月に過去最高の91.6億円という募集額になっております。
なぜ募集額が急激に増えていったのかには理由が色々あるかと思いますが、こちらは後ほど行われるパネルディスカッション(近日公開予定)のテーマになっておりますので、そちらを楽しみにしていただければと思います。
非常に盛り上がっている国内のソーシャルレンディング市場ですが、海外を見ると、実はまだまだということがわかります。
ソーシャルレンディングの本場アメリカ、向こうでいうとPtoPレンディングやマーケットプレイスレンディングなどとも呼ばれますが、アメリカは2015年に市場規模が227億ドル、日本円にしておよそ2兆5000億円ほどの規模になっております。
こういった海外の市場規模を見ると、日本も成長はしているのですが、まだまだ成長余力があるということをわかっていただけるのではないでしょうか。
ソーシャルレンディングの仕組み
ここからはソーシャルレンディングの仕組みについてご案内いたします。
ソーシャルレンディングは個人投資家から資金を集めて、それを集約して大口化して、資金需要のある企業に融資をする仕組みです。
当然融資なので返済金利が発生しますが、その返済金利の一部を分配することで、投資元本を増やすというサービスになっています。
ソーシャルレンディングの特色は、なんといっても「魅力的な利回り」と「保全性の高さ」だと思います。
こちらに2つの数字を並べてあります。
こちらは当社が運営するフィンテナというソーシャルレンディングに特化した比較サイトに掲載されている18社の国内企業様の平均数値となっておりますが、平均利回りはなんと8.15パーセントにまで達しています。
その一方で貸倒発生率は、この3年間で0パーセントということで非常に高い保全性を維持していることがわかると思います。
ただ、この0パーセントという数字は、延滞や為替差損は含まれておりませんので、その点ご留意ください。また、この0パーセントという数字は今後もずっと継続するものではないので、その点もご注意いただければと思います。
ソーシャルレンディングの利回りが高い理由
ではなぜソーシャルレンディングの利回りが高いか。
これはいくつか理由があると思いますので、1つずつ説明していきたいと思います。
まず1つはコストを抑えて運営できるということです。
ソーシャルレンディングはインターネットを介して募集や販売を行っていますので、店舗を持つ必要もありませんし、また、営業マンを雇用する必要もありません。
非常に低コストで運営ができているので、その分を投資家にリターンできているわけです。
もう1つは貸出金利が高いという点が挙げられると思います。
例えば、銀行の貸出金利は現状、大体1パーセントから3パーセント程度ですが、結果、資金の貸し手である預金者には0.1パーセントから0.05パーセント程度の利息が支払われています。
一方で、ソーシャルレンディングの方は、各社にヒアリングしたところ、貸出金利は大体10パーセントから14パーセントの水準にあります。
だからこそ、事業者利益を差し引いても、結果的に、5パーセントから12パーセント程度の高い利回りを投資家様に分配できているということです。
ではなぜ企業は金利の低い銀行ではなく、わざわざ金利の高いソーシャルレンディング事業者からお金を借りるのでしょうか。
その答えの1つに審査基準の違いがあります。
銀行はかつて、不良債権の処理に苦しんだ経験から、非常に厳しい審査基準を設けています。
その結果、融資審査の柔軟性が欠如しており、幅広い資金需要に応えきれていないという現状があります。
一方でソーシャルレンディングはかなり柔軟な審査基準を敷いています。
それによって、これまで調達が難しかった資金ニーズに対応することができています。
とはいえ、ソーシャルレンディングもデフォルトを起こしてしまうと、投資家様にご迷惑をかけてしまうので、返済確実性という点はかなり慎重に審査をしています。
この点においては、ある意味、銀行よりもシビアかもしれません。
具体的な事例を見ていきます。
例えば、短期の借り入れや少額の借り入れ。
銀行というのは大きなお金を長期で運用することで、利益を得るビジネスモデルです。
なので、短期の借り入れや少額の借り入れというのは、基本的には好んで融資しない傾向にあります。
一方でソーシャルレンディングは短期の借り入れと相性が良く、少額の借り入れでも受け入れることが多いのです。
また、銀行は、予定していた金利収入が得られないと困るので、期限前返済に関して違約金を儲けることが結構あります。
一方、ソーシャルレンディングでは、期限前返済に対しても柔軟に対応しています。
また、銀行は、決算書3期分を前提に融資の話を進めることが多いのですが、ソーシャルレンディングは担保さえ確保できていれば、こういった業歴関係なく融資することもあります。
ここまで見ていただいた通り、ソーシャルレンディングは銀行がカバーしきれていなかった、多様な資金需要の新しい受け皿になっています。
その結果、財務的には健全でありながら銀行の審査基準に該当しないため、資金調達に苦慮する中小企業に、新しい選択肢を提供する。それによって、保全性を維持しながら、高い貸出金利を確保することができているのです。
ソーシャルレンディングの保全における工夫
ここからは、ソーシャルレンディングの保全の工夫ということでお話しさせていただきたいんですが、実際の細かい話は後ほどの事業者プレゼン(近日公開予定)で聞けると思いますので、簡単にお伝えします。
まず大きく分けて2つの保全の仕組みがあります。
1つは担保・代表者保証を確保するということです。
これは貸し出しをする時に、不動産であったりとか売掛債権を担保にします。
もし万一、借り手企業がお金を返済できなくなった場合には、その担保として取得したものを売却することによって、投資家の損失を回避するという方法です。
もう1つは小口分散という方法があります。
最終的な借り手を大量の個人に分散することによって、もし万一、1人や2人がデフォルトしたとしても、全体への影響を限定的にする方という方法です。
この2つのケースを取っていることが多いということです。
ソーシャルレンディングに向いている人、向いていない人とは?
続きまして、ソーシャルレンディング投資が向いている人と向いていない人に関して簡単にお話しさせていただきたいと思います。
ソーシャルレンディング投資が向いている人はこんな人です。
- 安定的にコツコツ資金を増やしたい人
- 忙しくて資産運用に手間をかけられない人
- 投資経験が少ない、もしくはない人
- 少額から投資を試したい人
ソーシャルレンディングは経験者と初心者の方のパフォーマンスの差が開きにくい金融商品です。
少額からはじめられ、事前知識も無駄な手間も発生しません。
なので、投資経験のない方が最初の1歩として取り組む金融商品としては非常に適しているのではないかと思います。
一方でソーシャルレンディング投資が向いていない方はこういう方だと思います。
- 一攫千金を狙いたい人
- 投資のスリルを楽しみたい人
- 最低限の貯蓄がない人
- すぐに換金、解約したくなってしまう人
ソーシャルレンディングはあまり値動きがありません。なので、投資のスリルを味わいたい人には向いていないでしょう。
一気にお金が増えることもないため、一攫千金というのは非常に難しいです。
また、ソーシャルレンディングのデメリットとして、1度お金を投資するとその期間資金がロックされてしまうので、途中換金しようとしてもなかなか難しいです。
そのため、最低限貯蓄があって、緊急の資金ニーズに対応できる余力がある人がやるべき投資だと思います。
では私の方からは以上となります。今日は最後までぜひ楽しんでいってください!
ありがとうございました。