平成29年6月2日、昨今増加するソーシャルレンディング事業者の一つである「クラウドバンク」が、事実とは異なる表示や表示のある広告をしたとして、証券取引等監視委員会は行政処分を行うよう金融庁に勧告する方針であることが明らかとなった。
以下、証券取引等監視委員会による行政処分勧告における事実内容に関して、証券取引等監視委員会の発表を元に解説する。
著しく事実に相違する表示又は著しく人を誤認させるような表示のある広告をする行為は以下の通り。
1. 不動産開発事業に対して融資を行う広告
クラウドバンク社は、平成28年1月から同年7月までの間、一部の資金募集において、関係会社が関与する不動産開発事業に対する融資に関して、ウェブサイトに広告を掲載し、投資を募っていた。
ウェブサイトにおいて行った広告の中では、クラウドバンク匿名組合の融資先は不動産を実際に取得するSPC(以下「不動産取得SPC」という。)であること及び、融資の形態は、劣後特約付金銭消費貸借契約(以下「メザニンローン」という。)であることを説明していた。
しかし、実際には、クラウドバンク匿名組合は、不動産開発事業に投資を行う「甲事業会社」に融資を行い、甲事業会社が不動産取得SPCにメザニンローンとして4億6000万円を融資していた。さらに、不動産取得SPCを営業者とする匿名組合に対して、1億7950万円の出資(以下「本匿名組合出資」という。)を行なっていた。
加えて、クラウドバンク社は、ウェブサイト上で上記不動産開発事業のリスク説明において事実と異なる表記をしていた。
実際には、本匿名組合出資を除くと、不動産取得SPCの「エクイティ」に相当するものは55万円しかない状況であったにもかかわらず、「プロジェクトの継続が困難になった場合」と題した図(本ページ下部参照)では、クラウドバンク匿名組合の融資したメザニンローンは、クラウドバンク匿名組合とは別の出資者(事業者)の「エクイティ」があるため毀損しないという旨の表示をしていた。
2. 営業者報酬等の還元をうたった広告
クラウドバンク社は、平成26年5月から同27年5月までの間、手数料還元をうたったキャンペーンファンドの募集を行っていた。しかし、実際は募集したキャンペーンファンドの一部において手数料等の還元がされていなかった。
クラウドバンク社の発表
なお、クラウドバンク社は自社のウェブサイトにて、勧告内容についてはすでに態勢改善ができていると述べている。
1. については、平成29年1月27日に表記の修正を行なっており、また、関連する全ファンドの投資金は全額償還されている。社内態勢についても、広告作成責任者および広告審査責任者が、ファンド営業者の融資審査に同席するなどで、ウェブサイトにおける表示と齟齬が起きない態勢にしているとのこと。
2. については、キャンペーン対象者に対して、平成29年1月27日付で手数料の還元については支払済としている。また、新任内部管理統括責任者の募集前における確認及び平成28年9月以降、管理表による一元管理を全てのキャンペーンにおいて行っていることからキャンペーンにかかる支払いなどを確実に行う態勢が整理できているとしている。
こちらの件については、進展があり次第随時フィンテナにて取り上げていく予定。
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