ソーシャルレンディング海外事情

ソーシャルレンディング海外事情

今回は、世界で急速に拡大するソーシャルレンディングの事情について解説していきます。

米国のソーシャルレンディング市場規模はすでに5,500億円

コンサルティング会社のPwCは、2014年の1年間に、米国におけるソーシャルレンディング(P2Pレンディング)を通じて投資された金額は5,500億円(1ドル100円で計算。以下同様)に達すると報告しています。

また同社は、米国におけるソーシャルレンディング市場規模は、2007年と比較して、(年率ではなく)四半期あたり84%で成長していると試算しています。

ソーシャルレンディングが、消費者ローンだけでなく、不動産ローンやその他の資産クラスにも広がったことがこの市場拡大の原動力になっているといわれています。

通常、ソーシャルレンディングによる投資家と資金需要者のマッチングは、銀行等の金融機関よりも相対的に低いコストでおこなわれるため、より低い金利で融資が可能となっていることが、ソーシャルレンディングに競争力をもたらしています。

アメリカの中央銀行の一つであるクリーブランド連銀は、クレジットカードローンの金利に比べ、ソーシャルレンディングによる消費者ローンのほうが同条件であっても金利が低いという統計を発表しており、ソーシャルレンディングの普及は緒についたばかりであると報告しています。

グローバルのソーシャルレンディングは年率50%以上で成長見込み

リサーチ会社のTechnavioは2016年7月の市場調査レポートとして、2020年までの全世界のソーシャルレンディングの市場規模は年率53%以上で成長すると試算しています。
年率53%とは、2020年には市場規模が現在の約4倍になるということにほかなりませんから、爆発的に成長しているといえます。

また、コンサルティング会社のPwCは、保守的に予測しても2025年における市場規模は、米国だけでも15兆円を超えるであろうと試算しています。

仮に、成長率が現状より格段に鈍化し、また、ソーシャルレンディング事業者が新たな資産クラスへ進出しなくともこの15兆円という市場規模は達成されるであろうとしています。ある米国のベンチャーキャピタリストに至っては、2025年までに100兆円に達すると考えています。

PwCによると、現状の米国におけるクレジットカードローン(リボ残高)は80兆円、クレジットカードローン以外の消費者の金融機関からの借り入れ(住宅ローン等)の残高は140兆円に達し、そのうちクレジットカードローンの10%、クレジットカード以外の借り入れの5%をソーシャルレンディングが提供することで、この市場規模は達成されるであろうと試算しています。

証券監督者国際機構The International Organization of Securities Commissionsは、グローバルの市場規模は今後5年以内にも7兆円を超えると想定しています。

世界の主要プレーヤー

世界のソーシャルレンディングにおけるプレーヤーの特徴としては、いくつかの大手事業者と多数の中小プレーヤーが存在するところに対し、いくつかの新たなスタートアップ企業が参入し、既存プレイヤーより多くの投資家、ユーザー、メディア露出などを集めているという点にあります。

従って、今後5年ほどの期間においては、競争はますます激化することが予想されます。
ある調査会社は、スマートフォンへの取り組みがひとつの差別化ポイントになると考えています。また、グローバルプレーヤーの中にはM&Aにより非連続的にシェアを高めようというプレーヤーも出てくるものと考えられます。

世界のソーシャルレンディングを牽引する、ソーシャルレンディングプラットフォームとしては、CircleBack Lending、Lending Club、Peerform、Prosper、Upstartなどがあげられます。

いずれも、日本国内には参入していないため、馴染みのない方も多いのではないかと思います。これらの巨大プレーヤー以外にも、Borrowers First、Daric、Funding Circle、Pave、そしてSoFiなどがあげられます。

地域別では南北アメリカが45%を占める

調査会社Technavioによると、2020年時点においても米国がソーシャルレンディングの最大市場であることには変わりなく、南北アメリカ地域で世界全体の45%のシェアを占めると考えられています。

また、EUの議決機関である欧州委員会はすでに、欧州においてソーシャルレンディングを活性化させるための法的制度的な枠組みを調査しはじめており、欧州におけるソーシャルレンディングの成長が見込まれます。

中小企業向けローンの拡大

金融危機を経て、銀行その他の金融機関は自己資本比率規制により貸出を削減するオフバランスの動きが活発化しました。その結果として、中小企業向けの融資や消費者向け融資が大きく縮小しました。

これらの借り手は銀行にとって非常にリスクが高く、従って自己資本比率規制への影響が大きいと考えられたためです。

日本でも貸し剥がし、貸し渋り、事業性評価でなく担保のみを評価する融資姿勢などが問題になりましたが、同様のことが世界中でも起きたわけです。

ソーシャルレンディングはこのようにして発生した中小企業、消費者向け融資の需要をうまく取り込むことに成功しました。

ソーシャルレンディングによって新たに生み出されたあるいは活発化した融資の形態は多様ですが、主に5つの領域にわけられることは確かでしょう。

すなわち、マッチングによるピア・ツー・ピア(P2P)レンディング、小売・Eコマース向け融資、請求書のリファクタリング、サプライチェーン融資、そして貿易ローンです。

調査会社Technavioの主任アナリストであるAmit Sharmaは以下のように説明します。

「先進国では、中小企業向けの貸し手としてソーシャルレンディングが台頭し始めている。例えば自動車産業、製造業、重工業などにおいて、中小企業が大手企業と新規取引を獲得した際の仕入れ・設備投資にかかわる資金ニーズは多額になりうる。中小企業が貸出審査や支払いサイクルにおいて不利であることは周知の事実であり、このような資金の出し手としてソーシャルレンディングに活動の余地がある。通常ソーシャルレンディング事業者は10〜15%の金利手数料をつけてこのような貸出を行う」

ソーシャルレンディング事業社が銀行貸し出しの呼び水になりつつある

中小企業は通常、銀行や金融機関からリスクの高い借り入れを引き出すために十分な、優良な担保資産や長期にわたる返済実績を持ち合わせていません。

なぜなら、銀行はこれら中小企業の短期的で比較的少額な資金ニーズにこたえる融資商品をもっておらず、従って中小企業からみれば返済実績を積み重ねる機会をのがしているためです。

今後、技術の発達と貸し手と借り手のマッチングが精緻化していくにつれ、ソーシャルレンディング事業者が、中小企業向けの多種多様な融資を提供し、リスクやシナリオの異なる商品をポートフォリオ化することで、既存の銀行の貸出ニーズとも一致した商品を作り出すことが可能になると考えられています。


上記の記事は以下の記事を参考に編集しました。