ソーシャルレンディング投資でどれくらい分散するべきなのか

ソーシャルレンディング投資でどれくらい分散するべきなのか

こんにちは、ファイアフェレットです。

ソーシャルレンディング投資において、必ず行うことを勧められているのが「分散投資」です。

しかし、どのくらいのリスクを取る時に、具体的にどのくらい分散したら良いのか?という質問に答える記事はなかなか見当たりません。

本記事はいくつかの案件のリスクを仮定して、どのくらいの分散投資をしたら良いのかを考察します。

※本記事は分散投資の大切さを伝えることが目的です。そのために分散投資を行なった場合と、行わない場合の結果をわかりやすく提示することを第一とするものの、数字的根拠も併せて記述しています。

高リスク・中リスク・低リスクの案件を仮定する

まず分散投資の効果を検証するため、案件のリスクを3つ(高リスク、中リスク、低リスク)に分けて、下図のように定義します。
※デフォルトは貸し倒れのみを表す(為替差損、返済遅延は含めない)。また案件利回り15%などは仮の数字を設定

表1:本記事で想定した高リスク、中リスク、低リスク案件

高リスクの場合はデフォルト率20%で、償還・分配が無事に行われた、投資額に対して15%の利回りが得られます。反対に失敗(デフォルト)した場合は、投資額の15%を失うとします。

この高リスク案件の投資の期待利回りは9%となります。

期待利回りとは、あなたがその案件への投資を長期的に続けた場合、高い確率で得られる利回りのことです。

期待利回りの計算
もし、1,000万円を10分割して100万円ずつ、この高リスク案件に投資したとします。

この場合、10回のうち8回は成功して120万円が得られます。
8x (100万円x15%)=8x(15万円)=120万円

しかし、2回は失敗して30万円を失います。
2x(100万円x-15%)=2x(-15万円)=-30万円

つまり、得られるのは、120万円から30万円を差し引いた90万円となります。投資資金1,000万円の9%なので、期待利回りは9%となります。
また90万円は投資額1,000万円に対する期待値です。

同様に中リスク案件の期待利回りを7%、低リスク案件の利回りを5%になるように案件利回り、デフォルト率、デフォルト時の損失割合を設定しました。※表1

高リスク案件で分散投資をした場合としない場合

十分な案件数があり、任意の数に分散投資できる状態で、1,000万円を高リスク案件へ投資するとします。(以下、この仮定は同様)

この際、あなたは面倒だから1案件に1,000万円全額を投資しますか?それとも分散投資を心がけて10案件に分散投資しますか?

1案件に全額投資した場合、結果は次の円グラフのようになります。

図1:高リスク案件へ分散しなかった場合

あなたは80%の確率で150万円を得られ、20%の確率で150万円を失います。

これを分の良い賭けと思うかもしれません。

しかし、あなたが投資家ならば、次の分散投資した結果もご考慮ください。

図2:高リスク案件へ分散投資(10分割)した場合

10案件に分散投資した場合、あなたが損失を被る可能性はわずか0.6%です。それに対して、金額の大小はあるものの、利益を得られる可能性は96.7%となります。

あなたがギャンブラーではなく投資家ならば、安定的に利益を得られる方法を選択するべきではないでしょうか。投資が一段落した時、20%という「高い」確率で元本の15%を失っているような投資スタイルを取ることは決しておすすめできません。

分散投資の結果を表にすると、以下のようになります。

表2:高リスク案件へ分散投資(10分割)した場合

80%の確率で成功する投資(賭け)は十分に分の良いものです。しかし、分散投資を行うことにより、より投資家にとって好ましい形にすることができます。

反復試行の確率の計算式

80%の確率で成功する投資をn回行った結果、X回成功する確率が何%かは、「反復試行の確率の公式」で求められます。これは以下の計算式で求められます。

n:試みる数
x:成功する回数
C:コンビネーション(場合の数、確率における公式)
p:成功する確率(1-pが失敗する確率)

高リスク案件10案件に投資した場合、8案件の投資が成功する確率は以下で計算できます。

中リスク案件で分散投資をした場合としない場合

同様に中リスクの場合も見てみましょう。

図3:中リスク案件へ分散しなかった場合
図4:中リスク案件へ分散投資(10分割)した場合
表3:中リスク案件へ分散投資(10分割)した場合

中リスクの場合、分散投資を行った場合の「リスク低減効果」は高リスクほど感じられないかもしれません。

高リスクの投資を行うほど、一般的に分散投資によるリスク低減効果は高くなります。

高リスクの案件へ投資する時ほど、分散投資を心がけよう

図5:低リスク案件へ投資した場合

図5に低リスク案件に成功した場合の結果を示しました。

低リスク案件はデフォルト率を0%に設定してあるので、分散投資をする意味がまったくありません。分散投資をしようがしまいが、結果は必ず50万円の利益となります。
言うまでもなく損失を被る可能性が無い投資など存在しません。ただしリスクが小さくなるほど、分散投資の重要性が小さくなる例として適当でしょう。

高リスクの案件へ投資する時ほど、分散投資の重要性は高まります。

高リスクの案件ほどデフォルト率もデフォルトが起きた場合の損失額も大きくなるため、高リスクの案件へ投資する時ほど、分散投資を心がける。これを念頭に置くべきでしょう。

具体的にどれくらい分散投資をすればよいのか

高リスクな投資ほど、分散投資しなければいけないことはわかりました。では実践するとして、具体的にどれくらい分散投資すればよいのか?

これに対する答えはありません。表1で示したような成功時利回り、デフォルト率、デフォルト時損失が最初からわかっている投資商品など存在しないからです。

ここでは、試験的に表1で示した高リスク案件のパラメーターを変化させ、より高いリスクの案件を想定しました。

その上で1、10、20、50、100分割して投資した結果を示すことで上記の問いに答えられないかを検討してみました。

高リスク案件を想定する

表4:高リスクの案件のパラメーターを変更

表1で示した高リスク案件をベースに、デフォルト率とデフォルト時損失割合を高めて、より高いリスクの高リスク案件2、3、4を設定してみました。※表4

損失を10%以下に抑えるためには20案件以上に分散投資

表5:高リスク案件1~4で分散投資を行った場合の投資結果

高リスク案件1、2、3、4を分散投資しなかった場合(分散数1)と分散投資した場合(分散数、10、20、50、100)の結果を示しました。表5

高リスク案件1の場合

デフォルト率が20%で、損失は元本の15%です。10案件以上に分散すれば10%以上の損失を1%未満に抑えられます。

分散投資をいたずらに多くしても手間が多くなりますが、20案件程度に分散投資すれば比較的安心でしょう。

高リスク案件2の場合

これはデフォルト率が50%と高いものの、損失は元本の15%程度に抑えられると想定される場合です。20案件に投資すれば10%以上の損失を被る可能性を50%から0.13%まで下げられます。

多少デフォルト率が高くとも、担保が設定されているといった理由で元本保全性が高い場合、20案件以上に分散投資すれば10%以上の損失を回避できる可能性が比較的高くなるといえます。

高リスク案件3の場合

デフォルト率は20%ですが、その損失は60%と大きい場合です。

この場合、50案件以上に分散投資すれば10%以上の損失を被る可能性を1.4%まで低めることができます。

高リスク案件2と3は同じ案件利回りと期待利回りです。しかし、案件3の方がデフォルト時の損失が大きいため、大きな損失をさけるためには、デフォルトする案件が全体に占める割合が大きくなる可能性を小さくする必要があるのです。

そのために案件3では案件2よりも、より多く分散投資したほうが有効となるのです。

ソーシャルレンディングに当てはめるならば、無担保案件に投資する時は、担保案件よりもさらに分散投資を心がけたほうが良いといえるのではないでしょうか。

高リスク案件4の場合

デフォルト率を50%、その時の損失を60%に設定した場合、その期待利回りは-22.5%となります。本来ならば投資しないほうがよい案件ですが、あえて投資する場合、どこまで分散投資すれば致命的なリスクを減らせるのか考えます。

20案件以上に分散投資すれば、最悪の事態である50%の損失を被る可能性を50%から1%未満に減らせます。また10~25%の損失に抑えられる可能性は50%以上に高めることができます。100案件に分散すればさらにリスクは減りますが、20案件以上の分散投資が一つの目安といえるでしょう。

高リスク案件1〜4の検討結果まとめ

高リスク案件1〜4は現状のソーシャルレンディングからみて、リスクを高く見積もりすぎているといえます。現状、デフォルトは問題のあるサービス以外では、あまり起きていないからです。(2018年9月時点)

しかし、ソーシャルレンディングが上記の仮定で起きると想定したとしても、どのように分散投資すればリスクを低減できるかに対して、ある程度の想定を出せたと思います。

検証の結果、次の2つことが言えそうです。

1.ソーシャルレンディングが今以上にリスクが高い投資としても、分散投資数を20以上にすれば、致命的なリスクを抑えられる可能性が比較的高くなる。

2.担保などでデフォルト時の元本保全が高い案件よりも、無担保の案件に投資する時には分散投資をより心がけた方がよい。

私は投資において、大きな利益を出すことよりも、致命的な損失を被らないことを大事にしたいと考えています。致命的な損失を被らなければ、いくらでも復活の可能性があることがその理由です。

上記で得た計算結果をもとに、私は「投資額に対して10%以上の損失を被るのを避けたいのならば、ソーシャルレンディング投資では20案件以上に分散投資するべき」を一つの結論としたいと思います。

よりソーシャルレンディングの実感覚にあった場合を想定する

「表1で示した高リスク案件、中リスク案件、低リスク案件」と「表4で示した高リスク案件1、2、3、4」は、以下を示すために、案件利回り、デフォルト率、デフォルト時損失を調整しています。

  • 高リスクほど分散投資をしたほうがリスクを抑えられる
  • 現状以上にソーシャルレンディングが高リスクだとしても、20案件以上に分散投資すれば大きな損失を被る可能性を小さくできる
  • デフォルト時の損失が大きい場合ほど、分散投資を心がけたほうが良い

実際のところ、ソーシャルレンディングにおけるデフォルトは、一部のサービスを除き、現在のところあまり発生していません。

デフォルトが多発して、10案件に1案件、つまり10%より大きい確率でデフォルトが発生しているようならば、ソーシャルレンディングで投資をする人はずっと少なくなっていると思います。

その意味でソーシャルレンディングの安定性には一定の信頼が置かれており、だからこそ投資人口が増えているのだと思います。

しかし、「デフォルトが発生したらどうなるのか?」「ひょっとしたら元本のほとんどが失われてしまうのでは?」と懸念する人はいらっしゃると思います。

そこで「デフォルトが発生する確率は低いけれど、仮にデフォルトが起きた場合、その元本の大半が失われる投資」として、ソーシャルレンディングを捉えた場合、どれくらい分散投資をしたらよいのか、を考えてみたいと思います。

表6:ソーシャルレンディングのデフォルト時損失が大きいと想定した場合の期待利回り

まず案件利回りは12%、8%、5%と一般的なソーシャルレンディングにおける、高利回り、平均、やや低利回りの3つを設定しました。

デフォルト率は2%、5%、10%と小さい値を3つ設定しました。もしデフォルト率が20%ともなると、投資家から現実的な投資商品として選択されなくなると思いますので、10%を最高にしてあります。

デフォルト時の損失は一律90%と高く見積もりました。「もし融資先が破綻した場合、担保が設定されていない場合がある」「担保が設定されていてもうまく回収できない」「運営会社が破たんするなどの「最悪の」理由でほとんど戻らない場合」を想定しています。

その結果、期待利回りは-4.5%〜10.0%となります。

一部想定利回りがマイナスになっているものがあります。期待利回りが一番低い案件I (案件利回り5%、期待利回り-4.5%)を見てみましょう。

この場合、デフォルトが10%の確率で生じ、元本の90%が失われたとしても、損失は投資額の4.5%で済むという計算です。※デフォルト率が10%以下であるという前提はある

表7:案件A、B、Cの検討結果
表8:案件D、E、Fの検討結果
表9:案件G、H、Iの検討結果

結果は表7~9のようになりました。

デフォルト時の損失が大きいと仮定した場合

デフォルト率が5%以下と考えるならば、元本の15%以上の損失を避けるために最低20案件の分散投資を、デフォルト率を最悪10%と見積もるならば、元本の15%以上の損失を避けるために50案件程度は分散投資をしたほうが良いと私は考えます。

人によっていろいろな捉え方はあるでしょう。投資額が100万円程度ならば20案件も分散投資する必要がないと考える方、上記想定した案件ほどリスクは高くないと考え、利回りの高い案件に集中しても良いと考える方もいると思います。

ただ、リスクを今以上に高く見積もっても20案件以上に分散投資すれば、最悪の事態となる可能性は比較的抑えられることを気に留めていただければ、幸いと思っています。

分散投資に関する注意点

注意点1:分散投資の効果は期待値に近づけること、期待値がプラスのときに有効

ここから、分散投資に関する注意点をいくつか述べたいと思います。

分散投資は本来、リスクを低減させるのではなく、その投資結果を「期待値に近づける」ためのものです。

図6:高リスク案件1の分散投資(10案件)結果

たとえば、このリスク案件1の期待利回りは9%、つまり投資額1,000万円に対して90万円の利益が期待値です。10案件に分けて投資することにより、投資利益が90万円近辺になる可能性が高まります。20、50とさらに分散する案件数を増やせば、更に高まります。

つまり高リスク案件1の場合、期待値である90万円に近づけるのが分散投資の本来の効果なのです。「150万円の損失を被る可能性が20%より減る」というのは、その副次的な効果に過ぎません。

図9:高リスク案件4の分散投資(10案件)結果

この高リスク案件4の期待値は1,000万円に対して-225万円です。この場合、分散投資をすればするほど、投資結果がマイナスとなる可能性が高くなります。あなたが案件4に1,000万円投資し、成功して150万円を得たとします。しかし、そこでやめればともかく、何度も同額で繰り返せば投資結果は-225万円の損失に近づいていきます。

ですから、分散投資が「リスク低減」+「投資で儲ける」の二つを両立させる形で有効であるためには、その投資対象は期待値がプラス以上の投資商品でなければいけません。

分散投資を考える前に、その投資商品がプラスの期待値であるかをよく考えましょう。

注意点2:最悪の可能性は完全にゼロにできない

デフォルト率が2%の案件に対して100案件に分散投資したとしても、全ての案件でデフォルトになる確率は計算上も実際にもありえます。

高い確率ではありませんが、最悪の事態が「絶対にない」わけではありません。

注意点3:理解した上で分散投資しよう

投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットは「分散投資は無知に対するリスクヘッジ」と述べています。これは”分散投資”を否定する発言です。

投資対象をよく知らない、無知であるから分散投資をするのであり、投資対象をよく調査して知っており、必ず儲かるとういう確信があるのならば、分散投資などする必要がないという意味です。

図6:高リスク案件1の分散投資(10案件)結果

この高リスク案件1に分散投資をせずに1,000万円投資したとします。成功すればあなたは150万円の利益を出せます。しかし分散すればするほど、期待できる利益は90万円に近くなります。つまり、150万円から90万を差し引くと、60万円小さくなります。

高リスク案件1の投資結果が100%成功であると「知っている」のならば、分散投資をしない方が利益を出すことができます。

ウォーレン・バフェットほどの人ならともかく、あなたはその案件への投資が100%失敗しないと確信をもてるのでしょうか?普通の投資家が普通に投資するのならば、分散投資を心がけたほうがよいと私は考えます。

注意点4:分散するのは「金額」であることに注意

あくまで分散するのは「金額」です。ただ投資数を増やしても、それが本当に分散投資になっているかは留意してください。たとえば案件1~10まで10に分けて分散投資するとしても、案件1への投資額が910万円で、案件2〜10までの投資額が一律10万円というのでは、分散投資の意味はありません。

あくまで分散させるのは「金額」であることに留意してください。

注意点5:すでに1案件で分散投資されている案件もある

現状、ソーシャルレンディングの案件は、二つ以上の資金需要者が一つのファンドとしてまとまっています(複数化)。しかし、大抵は一つの案件の額が極端に大きくなっているので、一つの案件に投資するだけは十分な分散投資になりません。

一方、一つの案件ですでに投資対象が広く分散されているものもあります。こうした案件に投資する場合は、分散投資がより高くなります。もちろん過信は禁物です。

注意点6:利用する事業者数もなるべく増やそう

投資案件数を増やし、金額を分散させても、同じソーシャルレンディング事業者だけの利用、というのも分散投資になりにくいということも注意しましょう。
もし、その事業者に万が一のことが起きた場合、大きな損失となる可能性があります。

まとめ

私はソーシャルレンディングにおいて、約2,500万円を約20の事業者において、約120案件に分散投資しています。

当記事の調査では、想定した範囲内でありますが、20案件以上に分散投資を行えばリスクは低減できることがわかりました。分散投資によって最悪の事態を回避しやすくなることがご理解いただければ幸いです。