これまで不動産や中小企業支援、再生可能エネルギーなど多様なファンドを提供してきたソーシャルレンディング事業者のクラウドバンク。
同サービスで業界初の「米ドルによる募集・運用ファンド」および「円⇔米ドルの両替サービス」が開始されることが6月1日に発表されました。
今回は、機能の詳細や今後のサービス展開について、日本クラウド証券株式会社の代表取締役である橋村氏と、クラウドバンク株式会社の代表取締役である金田氏にインタビューを行ないました。
ソーシャルレンディングの為替リスクはコントロールが難しい
ーー今回発表した機能について、どのような内容なのかを改めて教えてください。
<金田氏>:これまでのような、日本円で出資を募る海外案件ではなく、米ドルで出資を募り、分配や償還も米ドルで行なう海外案件を提供することを発表いたしました。
加えて、償還・分配された米ドル資金を投資家自身がお好みのタイミングで日本円に両替できる機能も提供します。出資する際も日本円から米ドルに、お好みのタイミングで両替することができます。
ーー米ドルと日本円の両替タイミングを自分で決められることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
<金田氏>:米ドル・日本円の両替が強制的に行なわれ、正常に返済はされているにもかかわらず、為替の変動で損失を被ってしまうようなことを避けやすくなります。
海外案件の場合、現地の資金需要者は日本円ではなく米ドルを必要としていることが多いため、これまでは投資家の皆様から円で集めた資金を米ドルに交換して融資を実行し、返済された際に米ドルを円に交換していました。
ただしこれでは、満期が到来したタイミングの為替レートが融資を実行した当時より悪い状況でも、強制的に米ドルから円に替えられるため、投資成果が為替の相場に振り回されやすくなってしまいます。
例えば海外案件に円で5万円を投資したとしましょう。期待利回りは10%で、運用期間1年、米ドル建て、満期一括償還で、融資実行時の為替レートは1ドル=100円と仮定します。
案件自体は正常に運用され、期待利回り通りにドルベースで10%の利回りが出たとします。返済時期の為替レートが融資実行時の1年前と同じであれば、分配金と償還金を合わせて5万5,000円を受け取ることができます。(税金・手数料は考慮せず。以下同様。)
ただし、返済時期に為替レートが1ドル=80円になっていた場合は状況が異なります。
1年前の為替レートで交換した5万円が500ドルになっているので、償還金は1ドル80円だと4万円です。また分配金は500ドルから10%を受け取れるため、4,000円です。
つまり分配金と償還金を合わせて4万4,000円となり、元本割れになってしまうのです。
ただし、為替の両替タイミングを投資家が選べるようにすれば、このデメリットは抑えられます。
長期的に見れば円と米ドルの為替レートは安定している傾向にあると考えており、通貨間の交換をある程度の期間待てば、投資をした当時の為替レートに近づくかもしれません。
そうすれば、これまでであれば強制的に通貨が交換されて為替差損による元本割れが発生していたケースでも、投資家が両替のタイミングをコントロールすることによって、期待利回りと同等の水準で円を受け取ることができる可能性が広がります。
ーーなぜ両替機能の開発に至ったのでしょうか。
<金田氏>:海外案件でも為替リスクを抑えながら、本来得られるはずのリターンを提供できるような仕組みを作りたいと考えたためです。
これまでも海外案件を提供したことはありますが、投資実績は為替相場の影響を強く受けていました。
相場次第で、期待利回り以上の成果が出る方もいらっしゃいましたが、為替だけではなく、ソーシャルレンディングの良い点も純粋に感じて欲しいと思っている私共としては複雑な気持ちがありました。
為替リスクを抑える仕組みについては以前から模索・検討しており、様々な方法がありました。その上で投資家の皆様からのニーズが特に高いと考えられる仕組みとして、今回の両替機能の提供に至りました。
クラウドバンクはソーシャルレンディング業界のパイオニアでも、上場をしているグループでもありません。だからこそ投資家の皆様に本当に喜んでいただけるサービス作りがより大切になると考えており、そうしたサービス作りをしていきたいと思っています。
今回のような機能が出来たことで、投資家の皆様が海外案件へのソーシャルレンディング投資にも興味を持っていただけると嬉しいです。
ターゲットは米国とアジア
ーー今後は海外案件の募集が多くなっていくのでしょうか。
<橋村氏>:これまで国内の案件も多く提供してきましたが、今後は様々な地域の案件を増やしていきたいと思っています。
海外案件の対象地域としては、米国とアジアをターゲットとしています。
米国は担保や保証などの法整備がしっかりと行なわれており、比較的安定したリターンが期待できる案件を提供しやすいと考えています。また資金需要という観点から見ると、これから発展していくアジア地域は、多様な分野の資金需要が旺盛で魅力的です。
ソーシャルレンディングは様々な資金需要に応えられる仕組みです。個人投資家の方々には、距離があって投資機会が得られていなかったような、国外の良質な投資機会を提供していきたいと考えています。
新しい資産運用の選択肢を増やす
ーー今回の機能は業界初の試みですね。クラウドバンクの展望を教えてください。
<橋村氏>:今回の新機能と付随して提供するファンドは、慎重に検討し、議論を重ねてきました。
為替リスクをこれまでよりも抑えながら海外案件に投資ができるという新しい選択肢をご提案できるのは、クラウドバンクのみならず、ソーシャルレンディング業界全体にとっても、非常に意義あることだと考えております。
クラウドバンクとしては、投資家の皆様に長くご活用いただけるサービスとなるよう、これからも資産運用の新しい選択肢を増やしていきたいと思います。
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