こんにちは。中田健介です。
皆さんは、「昨年のソーシャルレンディング投資の利回りは何パーセントだったか」と聞かれたら答えられるでしょうか。
「7~8%くらい」と答える方も多くいるかもしれませんが、正確に把握している方は意外と少ないのではないでしょうか。
今回は、ソーシャルレンディング投資の実績利回りをどう計算したらよいかについて考えてみました。
目次
ソーシャルレンディングの利回り実績が把握しにくい理由
ソーシャルレンディングの年間利回り実績が把握しにくいのには理由があります。
ソーシャルレンディングに限らず、一般的に投資の利回りは以下の式で計算できます。
利益額÷投資金額=利回り……1
そのため単純に考えれば、年間の利益額と投資金額がわかっていれば、年間利回りが算出できそうに思えます。
このうち、年間の利益額は、毎年各事業者から発行される年間取引報告書もしくは支払調書を参照すればわかります。
もし貸し倒れなどで損失が出たのであれば、その分は利益額から差し引く必要がありますが、把握するのはさほど難しくありません。
しかし、もう一方の投資金額については、簡単に把握できません。ソーシャルレンディングの投資元本は毎月変動することが多いです。
新規投資すれば元本が増えるのは当然ですが、一方で償還されれば投資元本は減ります。
そのため、単純に1年のうちのある時点における投資元本を元に計算すると、正確な利回りが得られません。
例えば、ある時点での投資元本がたまたま多ければ、実際以上に低い利回りが算出されてしまい、逆に少なければ高い利回りが算出されてしまうという問題点があります。
私の実践している利回り実績の計算方法
この問題点を踏まえて、私はソーシャルレンディングの実績利回りを次のように計算しています。
まず、各月末時点での貸出元本の年間平均値を算出します。
なお、この時の貸出元本には投資中の金額のみを計上し、事業者の口座に入っている投資前の金額は計上しません。
そして1の計算式より、年間の実績利回りを算出しています。
例えば、各月の貸出元本と利益額が以下の通りであったとします。
時期 | 貸出元本(月末時点・(円) | 利益額(税引前・円) |
---|---|---|
1月 | 1,150,858 | 13,054 |
2月 | 1,119,783 | 7,186 |
3月 | 1,557,958 | 6,295 |
4月 | 3,025,691 | 6,714 |
5月 | 3,525,691 | 12,326 |
6月 | 4,499,694 | 22,565 |
7月 | 4,999,694 | 14,694 |
8月 | 4,995,217 | 35,526 |
9月 | 3,995,217 | 37,121 |
10月 | 3,840,597 | 26,859 |
11月 | 3,891,610 | 25,922 |
12月 | 3,891,610 | 21,796 |
この場合の貸出元本年間平均額と年間利益額は以下になります。
- 貸出元本年間平均:3,374,468円(小数点以下切り捨て)
- 利益額合計:230,058円
1の計算式に当てはめると、年間利回りは6.8%という結果になります。
(230,058(円)÷3,374,468(円))×100%=6.8%(小数点第一位まで)
計算の範囲を変えれば、月ごと・四半期ごと・事業者別の利回りなども同様に算出することができます。
利回り実績を把握する目的
このようにして利回り実績を把握する意味は何でしょうか。
目的はいくつか考えられます。
事業者間での比較
複数の事業者で投資をしている場合、利回りが高いかどうかを同一の基準で比較することができます。
事業者を選ぶ際に参考になるでしょう。
時系列での推移
3年前、2年前と比べて昨年の利回り実績が上がったのか・下がったのかといった時系列での推移を把握できます。
現在の投資方針が過去と比べて有効なのか検証が可能となります。
他の投資家との比較
他のソーシャルレンディング投資家と比較して、どれだけ利回り実績が高かったかを確認できます。
他の投資とのパフォーマンス比較
株式や不動産など他の投資を手掛けている場合、それらのパフォーマンスとの比較もできます。
(他の投資の利回り実績もそれぞれ算出する必要があります)
ポートフォリオを検討する上で必要となる情報でしょう。
税金を計算に入れるべきか
ソーシャルレンディングの利益は一般的に雑所得となるため、総合課税で所得税などがかかります。
利回りを計算する際、税引前の金額で計算するべきでしょうか。それとも、税引後の金額で計算するべきでしょうか。
これは、利回り実績を把握する目的により変わると考えています。
税引前計算が良い場合
事業者間での比較や時系列での推移、他の投資家との比較を目的とするのであれば、税引前で計算したほうがよいでしょう。
なぜなら、所得税の税率は、本人の給与所得の額などソーシャルレンディング投資とは関係のない要素によって変わるためです。
例えば給与所得が増えたために、所得税率が2年前よりも昨年は上がったという場合、その影響で利回り実績が下がってしまうことになります。
これらの目的で利回り実績を算出するのであれば、投資の直接的な成果と関係のない要素は排除すべきです。
税引き後計算が良い場合
ただし、他の投資とのパフォーマンス比較を目的とするのであれば、税引後の金額で計算したほうがよいでしょう。
なぜなら、投資の種類によってかかる税金は異なるためです。
例えば株式投資の場合は分離課税とすることができるので、ソーシャルレンディングとはかかる税金が異なります。
そのため、支払う税金も含めて最終的に手元に残る金額がそれぞれいくらなのか、という観点で比較する方がより目的に沿った分析ができます。
なお、ほとんどのソーシャルレンディング事業者では、分配金額の20%相当の源泉徴収税を徴収していますが、税引き後の利益額および利回り実績額を計算する場合は、この源泉徴収税額ではなく、確定申告時に確定する実際の税額を差し引いて行うべきです。
なぜなら、源泉徴収税率の20%というのはあくまで仮の税率であり、実際に税率が確定するのは確定申告時だからです。
先に述べたように実際の税率は本人の給与所得の額などにより変わるので、源泉徴収後の金額を元に計算すると正確な利回りとなりません。
【ソーシャルレンディングの税金はこちらでより詳しく解説されています】
【最新版】不要な場合も。ソーシャルレンディングの確定申告方法。税金計算の仕方や確定申告の必要可否!
おわりに
ソーシャルレンディング投資家の中でも、自分の実績利回りを正確に把握している方は意外と少ないかもしれません。
たしかに各事業者のマイページから金額を取得して利回りを計算するのは多少手間がかかります。
しかし、そうして得られた貴重なデータは、今後投資方針を見直す際に参考になるでしょう。