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Real Estate Techカンパニーとして、アパート経営やIoT民泊事業などを展開する株式会社インベスターズクラウド(東証1部、証券コード:1435)が2017年12月決算を開示しました。
同社は不動産投資型クラウドファンディングサービスのTATERU Fundingを運営しており、運営企業の決算状況は事業者リスクを見る上で気になるところです。
今回は2017年12月期のインベスターズクラウドの決算を解説します。
【TATERU Fundingのインタビュー記事はこちら】
・TATERU FUNDING(タテルファンディング)事業責任者インタビュー
インベスターズクラウドの2017年12期決算数字
アパート経営プラットフォームの「TATERU」サービスを展開し、インターネットマーケティング領域を中心にさまざまな事業を展開している株式会社インベスターズクラウド(東証1部、証券コード:1435)。
同社の2017年12月期決算数字は以下のとおりです。
(単位:百万円) | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
---|---|---|---|---|
2016年12月期 | 37,915 | 3,806 | 3,803 | 2,354 |
2017年12月期 | 67,016 | 5,898 | 5,863 | 3,995 |
2018年12月期(予想) | 76,611 | 7,113 | 7,099 | 4,815 |
対前年同期比で売上高+76.8%、経常利益+54.2%と大幅な増収増益を確保し、過去最高益を達成。
また2018/12月期についても、引き続き堅調な業績推移を予想しており、最高益も更新の見込みです。
アパート事業の状況について
同社のアパート事業は「アプリではじめるIoTアパート経営」を前面に打ち出し、ITを駆使したアパート事業を行っています。
2017年12月時点での同社のアパート事業の状況は下記となります。
- 会員数:142,359名(2016年12月末106,592名)
- オーナー数:1,492名(同1,077名)
- 管理戸数:18,699戸(同13,187戸)
- 引き渡し戸数:839棟(同687棟)
- 入居率:97.0%(同97.7%)
アパート事業の各数字についても、前年末比で大きく成長しています。同社の顧客見込み層ともいえる会員数は前年末比+33.6%となっており、2018年12月期以降も堅調な受注が見込まれる状況です。
また入居率も▲0.7%と若干の下落はあるものの、概ね昨年末並みの入居率を維持。人口減少の中、アパート経営は空室率がリスクとなりますが、97%という入居率の高さは、引き続き見込み客に対するアパート経営に対する安心材料を提供することにつながっています。
なお、2018年12月期は引き渡し戸数900棟を目標としていますが、既に50%の進捗と発表されており、2018年12月期計画の達成に向けても順調に事業進捗がなされています。
2018年12月期予想決算について
上述のように、既に当期目標である引き渡し戸数は50%の進捗のため、2018年12月期についても順調に推移しています。
2018年12月期は前年同期比で売上高+14.3%、経常利益+21.1%の成長を予想。17/12期の対前年同期比の成長率が売上高+76.8%、経常利益+54.2%であったのに対し、保守的な計画となっています。
こうした背景は、地方銀行中心にアパートに対する融資スタンスが厳しくなっていることが挙げられます。
またアパート経営に対するリスクも、シェアハウスの運営会社が破綻するなど、世間的な注目を浴びており、昨年に比べると事業環境自体が厳しい状況といえます。よって保守的な計画はやむを得ない面があるといえるでしょう。
事業環境の変化の中でも、継続的な成長を果たすことができるのか、2018年12月期は同社の今後の試金石になると考えられます。
また、2018年4月より株式会社インベスターズクラウドから株式会社TATERUに社名変更を予定です。TATERUブランドでのサービス展開が行われているため、ブランド力の向上に繋がるものと期待されています。
TATERU Funding事業について
同社は自社での取り扱い物件の一部について、不動産投資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)事業で一般投資家からの資金調達を行っています。
不動産特定共同事業法を利用した不動産投資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)として、不動産投資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)業界では独特の存在感を発揮しています。
不動産投資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)事業においても2017年12月期末の会員数20,522人(前年同期1,446人)と会員数が急増。募集の案件も、募集開始後早々に枠が埋まるケースが多く、堅調に推移しています。
不動産投資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)の部門別数字も、売上高563百万円、営業利益302百万円となり、同社の成長を支える存在となっています。
また、これまではインカムゲイン重視のファンドが中心でしたが、売却益が狙えるキャピタル重視ファンドの取り扱いも開始。今後の不動産投資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)事業についても、更なる成長を計画しています。
まとめ
IT活用を武器に、アパート業界において急成長を遂げた同社ですが、業績は引き続き堅調に推移しています。ただし、近年の市場環境はこれまでと違った形で変化しており、当期は保守的な計画となっているようです。
金融庁の指導により、地方銀行のアパートに対する融資姿勢が厳しくなるなど、アパート経営については昨年に比べると環境が厳しくなっています。そのような中でも、同社は2018年12月期も着実な成長を果たす計画です。
また不動産投資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)事業についても、専業の事業者とは異なる、不動産特定共同事業法を利用したファンドスキーム(情報開示の範囲が広い)を利用し、投資家を引き付けています。
環境変化のある中、引き続き2018年12月期も成長を遂げることができるのか。2018年12月期決算は同社の今後を占う上で、重要な決算期になるといえるのではないでしょうか。
※記事内の使用画像は2017年12月期の決算説明資料より