流行?古民家ファンドとソーシャルレンディングの相性について

流行?古民家ファンドとソーシャルレンディングの相性について

こんにちは、SALLOWです。

ソーシャルレンディングの案件には数多くの種類がありますが、そのうち不動産を担保に取って貸付を行う案件は一つの代表例です。

これまで担保となる不動産はオフィスビル、集合住宅、一軒家などが主でしたが、最近はこれらとはひと味違った不動産案件が登場するようになりました。
それが今回のタイトルにもある古民家ファンドです。

今回は古民家ファンドの内容を紹介するとともに、ソーシャルレンディングとの相性について考えていきたいと思います。

古民家ファンドを扱う事業者

クラウドファンディング業者の中で、古民家のファンドを初めて取り扱ったのはクラウドリアルティだったと記憶しています。

クラウドリアルティはこれまでに2件の古民家ファンドを募集済み、現在2件を準備中であり、これら4件の所在はいずれも京都市内です。

その後、ソーシャルレンディング事業者のLENDEXが民泊用不動産を担保とするファンド募集を開始しました。
民泊用ファンドはこれまでに7件募集されていますが、これらの所在も全て京都市内。

つい最近ではオーナーズブックが古民家を扱うファンドの取り扱いを始めました。
オーナーズブックはこれまで首都圏、それも23区内の不動産案件が大部分を占めていたのですが、首都圏を飛び越えた初のファンドとして募集したのは、京都市内の京町家再生ファンドでした。

経営母体のロードスターキャピタルがマザーズに上場しており、堅い案件を募集するという印象のあるオーナーズブックが古民家ファンドに参戦したことで、もしかすると来年には古民家ファンドが多く募集される流れが来るのかもしれません。

また、これまでの3つの事業者の例を見ると、不動産投資型クラウドファンディングやソーシャルレンディングにおける古民家ファンドというのは、実質的には京都における町家再生ファンド、もしくは民泊用の施設ファンドがその中心だということがわかります。

ではなぜ、古民家ファンドはそれほど京都に集中するのでしょうか。

京都の実状1:宿泊施設が足りない

京都の実状1:宿泊施設が足りない

公益社団法人 京都市観光協会と京都文化交流コンベンションビューローが今年7月に出した報告(*1)によると、京都市内の36施設9,364室(市内宿泊施設の客室ベースで4割をカバー)の客室稼働率は92%と、極めて高い水準にあります。

この客室稼働率は最近急に高くなったものではありません。平成26年から稼働率が90%を超えている状況が続いていました。
つまり、京都は少し前から慢性的な宿泊施設の不足状態が続いていたわけです。

これに加え、平成29年については宿泊客のうち、外国人観光客の占める割合が40.5%と初めて4割を超えました。

この二つの事実を考えると、外国人観光客の増加が客室稼働率の上昇を引き起こしているということ、言い換えれば「インバウンド向けの宿泊施設が不足している」と言えるのではないでしょうか。

京都の実状2:古民家への宿泊ニーズが高い

京都の実状1:宿泊施設が足りない

さらに、こんなデータもあります。

リクルートライフスタイルの調査(*2)によると、外国人観光客が次回泊まりたい宿のタイプとして「古民家など日本の古い建築物を利用した宿」と答えた割合は29.2%でした。

古民家に泊まりたいと答えた日本人の割合についてはデータが見つかりませんでしたが、おそらくその割合は外国人観光客より少ないのではないでしょうか。

前述の「京都の宿泊客のうち、外国人観光客の占める割合が4割以上」という事実と、「外国人観光客が古民家に泊まりたいと答えた割合が3割程度」という事実を組み合わせると、「京都に訪れる外国人観光客のうち、1割ほどは古民家に泊まりたいと希望している」という事が明らかになります。

それに対して実状はどうでしょうか。

こちらもデータはありませんが、京都市内で古民家の宿が全体の1割もないのではないでしょうか。
つまり、古民家の宿は需要に対して供給が追いついていないと考えられます。

京都の実状3:民泊の平均単価が高い

もう一つ、今度は京都の民泊に関してのデータです。

Airbnbの統計データを分析できるツール、mister suite labによりますと、各地の民泊の状況は以下のようになっています。

各地の民泊の状況
各地の民泊の状況

このデータからは、外国人観光客に人気と思われる東京や大阪と比べて、京都の民泊施設数はまだ十分ではないこと。
そして、地価の高さで言えば東京と比べても、京都の民泊の平均価格は高いということが分かります。

つまり、需要と価格の面から考えると、京都における民泊ビジネスは魅力的で、参入しようとする事業者が多くだろうことが理解できます。

ここまでの3つの実状、つまり「外国人観光客の増加による慢性的な宿泊施設不足」、「古民家宿泊ニーズが高い」、「民泊ビジネスの旨味がある」ということから、古民家や民泊に関係するソーシャルレンディング案件が京都に集中する背景が分かります。

古民家の改修はWin-Winの関係

古民家の改修はWin-Winの関係

もう一度、古民家に目を向けてみます。

過去の京都の古民家ファンドを見てみると、対象の古民家の説明文に「建築年月不詳」という記述があることに気付きます。

クラウドリアルティが既に募集を終えた2件のファンドや、オーナーズブックが募集を終えた1件のファンドは、いずれも建築年月不詳の古民家を買い取り、リノベーションを施し、宿泊施設として運営を行うという案件です。

歴史の長い京都市内でありながら建築年月不詳ということは、かなり昔から建っている建物であることは容易に想像が付くでしょう。
そういった古い建築物は上物に価値がないばかりか、老朽化の激しさのために景観の点でも問題を抱えているものと推定されます。

このような宿泊施設をリノベーションして蘇らせることは、宿泊施設の運営者にとって利益となるにとどまらず、街並みの景観保護や治安維持にも役立つため、周辺住民にとってもWin-Winの関係になると考えられます。

古民家ファンドとソーシャルレンディングの相性

さて、それではタイトルの古民家ファンド(民泊も含みます)とソーシャルレンディング(不動産投資型クラウドファンディングも含みます)との相性を考えていきます。

古民家ファンドに共通するのは、不動産を取得し、リノベーションを施し、宿泊施設として運営する、という3つのステップを踏む必要があるということです。

最初の不動産取得のステップでさえ、個人投資家の資金力で行うのは容易な事ではありません。
リノベーションや施設運営を個人でやろうとすれば、資金力だけではなく経験と知識、または人脈も必要となり、個人の手の届くところではなくなってしまうでしょう。

自然と、経営主体はたいていの場合法人事業者となりますが、古民家の宿泊施設化を営む事業者はまだ小規模のところが多く、銀行から十分な資金を調達するのは簡単では無いと思われます。

このため、古民家を取得し、リノベーションを行う資金として、ソーシャルレンディングを活用することは理に適っているのではないでしょうか。

投資家の立場からは、京都において需要が高まっている古民家宿泊施設に投資できるというメリット。

また施設運営者の立場からは、古民家宿泊施設を開業するための初期資金を機動的に柔軟な審査を受けながら準備できるというメリットがあります。

お互いに利害関係が一致することから、古民家ファンドとソーシャルレンディングの相性は良いものと考えています。

古民家ファンドのお楽しみ

また、古民家ファンドの一部案件には、投資へのリターン以外に「ちょっとしたお楽しみ」が用意されています。

例えばクラウドリアルティの「京都馬町町家」案件やオーナーズブックの「京都市下京区京町家再生ファンド」がそれで、いずれも投資家に対し、対象宿泊施設の宿泊費の割引券が贈呈されます。

対象施設はいずれも京都ですので、京都市へ気軽に行ける投資家でないと恩恵を感じにくい特典ではありますが、単純な投資のリターンにプラスアルファの楽しみがあるというのは嬉しいもので、投資の切っ掛けになるのではないでしょうか。

ソーシャルレンディングの案件の中でも、古民家ファンドはまだ始まったばかりで今後がどうなるかは何とも言えません。

ですが、前述した宿泊施設の不足や古民家への需要を背景して、また投資家・施設運営者・地元住民が所謂「三方良し」となれる可能性を秘めた案件であるだけに、今後の発展に期待したいと思います。


1)「平成29年5月 外国人客宿泊者状況調査」について http://hellokcb.or.jp/info/pdf/03-20170703-kanko.pdf
2) https://www.recruit-lifestyle.co.jp/news/travel/news1582_20141121.html