社債との違いから考えるソーシャルレンディングの可能性

社債との違いから考えるソーシャルレンディングの可能性

金融商品として似た特徴を持つ社債とソーシャルレンディング。

両者について、資金を調達する企業及び、投資を行う個人の視点から比較を行いました。

同じ貸付型金融商品となる社債とソーシャルレンディング

投資家の視点から見ると社債とソーシャルレンディングは、最終的に企業に対し貸付を行う点で同じ、貸付型の金融商品です。

資金調達を行う企業側から見ても、「両者ともに返済の必要がある」という点で類似の存在とも言えます。

しかしながら同じ性質を持っているとは言え、社債とソーシャルレンディングには大きな違いも存在しています。

下記に社債とソーシャルレンディングの違いを取り上げました。

発行会社から見た社債

社債との違いから考えるソーシャルレンディングの可能性

発行会社から見ると、社債は発行に手間がかかります。

法的には未上場の会社も社債の発行が可能ですが、日本ではリスクのある未上場会社の社債発行を手掛ける金融機関はほとんど存在せず、必然的に上場会社のみが発行できることになります。

公募形式を取ることが多く投資家から広く資金を募る社債は、発行手続きに多くの手間がかかります。

銀行や証券会社を始めとする金融機関とのやり取り、投資家に対する開示資料作成等、多くのプロセスを要します。

仮に早期の資金調達が必要で、「明日にでも社債を発行したい」と思っても、それは難しいでしょう。

その意味では機動性に欠ける存在です。

ただし機動性に欠け、手間のかかる反面、社債は低コストで一度に多額の資金調達が可能というメリットがあります。
社債の場合は数十億円から数百億円単位での発行が可能であり、一度に多額の資金調達が可能となります。

社債の発行企業は発行の手間をかけるに値する金額の資金調達が可能です。

なお、社債は調達金額が大きくなるため、償還日にそれだけの資金手当てが必要となります。

経営状況が良好であれば、継続的な社債発行で資金調達することができます。
しかし経営状況の悪化時は社債の継続的な発行ができずに、一気に資金繰りが悪化するケースも中にはあります。

銀行預金より金利は高いが大きな利回りは期待できない社債

銀行預金より金利は高いが大きな利回りは期待できない社債

投資家から社債を見ると、社債は発行企業に問題が生じなければ、期限到来後に元本と金利収入が期待できる金融商品です。(なお、期限前の売却が可能な社債もある)

ほとんど金利の付かない普通預金や定期預金に比べれば、1%の金利も期待できる社債は魅力的に感じるでしょう。
しかしながら低金利下の日本では、金利が高いと言っても1%程度の金利に留まります。

よって社債投資で大きく利益を上げることはできません。

投資家から見ると社債は、銀行預金より金利水準は高く、保全性も高いものの、他の金融商品と比べて利回り的にそれ程大きな魅力はないとの位置付けではないでしょうか。

しかしながら大手企業を中心に発行される社債は、低金利下の日本では信用力がありながらも利回りの期待できる数少ない金融商品です。

よって発行の際は人気化するケースが多くなっています。

借り手企業から見たソーシャルレンディング

借り手企業からソーシャルレンディングを見ると、ソーシャルレンディングは社債と比べて手間のかからない反面、大きな金額の調達を一気に行う事は簡単ではないでしょう(2017年12月時点)。

ただ、ファンド組成の可否は事業者が握ることになりますが、ソーシャルレンディングで資金調達する際の手間は社債と比べると少なくなります。

通常の銀行融資を受ける際にも、銀行を説得するための資料作成を求められるため、企業の資金調達と資料作成は切っても切れない関係にあります。

ただし手間と言う観点では、投資家との間にソーシャルレンディング事業者が介在するソーシャルレンディングでの資金調達は、比較的簡単でしょう。

しかしながら、ソーシャルレンディングは徐々に一般的な認知が進んでいるとは言え、まだ誰しも知っている金融商品にはなっていません。
よって資金調達にも限度があります。

ソーシャルレンディング業界最大手maneoの案件でも、直近の案件では調達上限が4000万円程度となっています。(2017年12月22日時点)

ソーシャルレンディングでは継続的に資金調達を行うことで調達金額のボリューム増加も図れるでしょうが、ファンド一つ一つの規模は社債に比べると小粒にならざるを得ません。

ただし一度資金調達を行ってしまえば、機動的に調達がしやすくなります。

投資家に支払う金利は、社債や銀行融資に比べ高くなるものの、企業にとって機動的資金調達が可能というメリットがソーシャルレンディングにはあるのです。

5~10%の利回りが期待できるソーシャルレンディング

5~10%の金利収入を得ることができるソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングの年利回りはおおむね5~10%程度です(2017年12月時点)。

1~2%程度の社債の金利と比べると、ソーシャルレンディングの利回りの高さは際立っています。

ソーシャルレンディングの融資は、企業に対する融資との側面とプロジェクトに対する融資との側面があります。

例えば、企業側としては、突発的なプロジェクト等で金利は高くとも短期の資金ニーズが発生するケースは少なくないため、ソーシャルレンディングではこうしたニーズも満たすことができます。

ソーシャルレンディングは金利が高いものの、事業者が審査の上で案件化の可否を判断します。
しかし、融資である限りリスクを100%排除できるわけではないという点は留意するべきです。

まとめ

企業から見ると社債は上場企業が手掛ける敷居の高い資金調達方法でしょう。

ソーシャルレンディングは社債に比べると調達規模限られ、現在は貸し出し金利が高くなるため用途はある程度限られます。

このように社債とソーシャルレンディングは資金調達方法として、異なる特徴があることがわかります。

ソーシャルレンディングは、社債に比べると、知名度はまだまだです。
しかしながらその商品性から、今後も投資家の注目を集めていくのではないでしょうか。