投資型クラウドファンディングとは?その特徴や関連法律をまとめて解説

投資型クラウドファンディングとは?その特徴や関連法律をまとめて解説

投資型クラウドファンディングは寄付・購入型クラウドファンディングと違い、多くの関連法令が存在し、その内容も複雑であるため、この全ての仕組みを理解するには時間がかかります。

今回はクラウドファンディングの中で、投資型クラウドファンディングはどのような特徴があり、どんな法律が関わっているのかなどを網羅的に解説します。

投資型クラウドファンディングとは

投資型クラウドファンディングは、クラウドファンディングの類型の1つです。(別名金融型とも呼ばれます。)

クラウドファンディングの類型は主に3つあります。

類型 内容
寄付型 インターネット上で寄付を募るプロジェクトが分類される。リターンは特になし。
購入型 リターンにモノ・サービスが設定されているのが特徴で、事前予約ECサイトのようなイメージ。
投資型 分配金や株式など金銭的なリターンが設定されている。

寄付型、購入型のクラウドファンディングは法規制のハードルも低く、多くの事業者が参入していますが、投資型クラウドファンディングは法規制のハードルが高く、参入事業者数は寄付型、購入型と比較すると少なくなっています。

また投資型は、融資型、ファンド投資型、株式投資型の3つに分けられますが、それぞれの類型で国内初のサービスは以下の通りです。

開始年 類型 サービ名
2008年 融資型クラウドファンディング maneo(マネオ)
2001年 ファンド投資型クラウドファンディング セキュリテ
2017年 株式投資型クラウドファンディング FUNDINNO

特に株式投資型クラウドファンディングは、2014年5月に金融商品取引法の一部が改正(2015年5月施行)されたことによって、事業開始の要件が緩和されました。

株式投資型クラウドファンディングのように、投資型クラウドファンディングはさまざまな法律が関わっているため、これらを理解することが必要です。以下よりその法律を紹介します。

投資型クラウドファンディングに関連した法律と制度

金融商品取引法

投資型クラウドファンディングのほぼ全てに関わるのが金融商品取引法(以下、「金商法」といいます)です。(不動産特定共同事業法に基づくスキームの一部を除く)

株式や債券などの有価証券をはじめとする、金融商品について、公正・透明な市場を整備し、投資家を保護するための法律で、2007年9月に施行されました。((旧)証券取引法から名称変更)

金商法に基づいて投資型クラウドファンディングのサイトを運営する企業は、後述する第一種、第二種少額電子募集取扱業の登録を受けない限り、第一種金融商品取引業又は第二種金融商品取引業の登録を受けている必要があります。(銀行等の金融機関が金商法上の登録金融機関として行う場合を除く)

各サービスのWebサイトには通常金融商品取引業登録の表示として、「(管轄監理当局)長(金商) 第◯◯号」という記載があるため、もし会社概要などに表示がない場合は、どういった仕組みで事業運営がされているのか確認しましょう。

貸金業法

融資型クラウドファンディングの場合、投資家から集めた資金を事業者を経由して借り手に融資するスキームが主流です。この借り手に融資する際に必要なのが、貸金業法に基づく貸金業登録です。

貸金業登録がない場合は、投資家から資金を集めても融資することが出来ないため、融資型クラウドファンディングのサイトを運営することは基本的にできないといえるでしょう。(子会社貸付などスキームによって例外あり)

第一種、第二種少額電子募集取扱業

第一種、第二種少額電子募集取扱業は、2014年5月の金商法の一部改正(2015年5月施行)によって、新しく出来た登録制度です。

海外では、上記の金商法改正以前から株式投資型クラウドファンディングのサービスが始まっていましたが、日本では主要株主規制や自己資本比率規制があるため登録のハードルが高い第一種金融商品取引業の登録が必要となることから、株式投資型クラウドファンディングは行われていませんでした。

しかし、この金商法の一部改正によって、インターネット上で非上場のベンチャー企業が株式・新株予約権を用いて資金調達を行うことが可能になり、2017年に日本初の株式投資型クラウドファンディングサイトがリリースされたという経緯があります。

不動産特定共同事業法

融資型クラウドファンディングでは不動産案件に特化した事業がいくつかあります。従来は第二種金融商品取引業と貸金業を合わせたスキームでサービスを運営している事業者が一般的でした。

しかしながら、2017年5月に改正された不動産特定共同事業法の同年12月の施行により、契約成立前書面の電子交付等が認められ、インターネット上で手続きが完了可能な不動産投資型クラウドファンディングサービスが同法に基づき運営できるようになりました。

投資家からお金を集めた企業が現物不動産を取得し、賃貸や売却で得た収益を投資家に分配する場合は第二種金融商品取引業や貸金業の登録が必要なく、2018年以降、このスキームを利用した不動産投資型クラウドファンディング事業者は増えると予測されます。

融資型クラウドファンディングの特徴

高利回りで資産運用になる

融資型クラウドファンディングの平均利回りは約8%前後となっており、定期預金や債券よりも高い利回りを出しています。※(2018年7月時点)

融資型クラウドファンディング事業者が掲載している案件に投資をして、あとは償還日まで基本的には待つだけという、手間がかからない資産運用として、近年投資家からも注目を集めています。

融資先がわからない

融資型クラウドファンディング事業者が掲載している案件は貸金業法に基づく当局の指導によって、融資先が匿名化・複数化されています。これは債務者保護という観点から、具体的な法人名や代表名などの具体的な情報は公開してはならないとされているためです。

そのため案件に投資しようと思っても、その案件のリスクを正確に把握することができないといった特徴があります。

ファンド投資型クラウドファンディングの特徴

売上に応じた分配金

ファンド投資型クラウドファンディングは、特定の事業に対して投資することになり、その事業の売上高に応じて分配金が支払われるのが特徴です。決算日が定められており、毎月分配ではなく、1年に1回分配金を受け取ることができるようになっています。

事業計画通りに進捗していれば、期待通りの分配金を受け取れますが、進捗が思わしくないような場合は、元本割れになることもあるため、注意が必要です。

投資先がわかる

融資型クラウドファンディングと違い、案件ごとに資金需要者の情報がわかるようになっています。

所在地や代表者名、詳細な事業内容などを見ることができ、投資する際の判断材料が多くあるといえるような状態になっているのが特徴です。

株式投資型クラウドファンディングの特徴

未上場のベンチャー企業に投資できる

これまで未上場のベンチャー企業に投資できる機会はVC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家など、限られたネットワークの中にしかありませんでした。株式投資型クラウドファンディングは、これを個人投資家にまで開放し、誰でも未上場のベンチャー企業に投資することを可能にしました。(※ただし、投資家審査などの条件あり)

未上場のベンチャー企業への投資はハイリスク・ハイリターンではありますが、機会があれば投資をしたかったという人に市場が開放された点は注目すべきといえるでしょう。

流動性がない

未上場のベンチャー企業の株式は、上場企業の株式と違って証券取引所で売買することができません。原則として、そのベンチャー企業がIPOかM&Aによる買収がない限り、手放せないことになっています。

日本の投資型クラウドファンディングサイト

融資型:maneo(マネオ)

maneoは日本初の融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)サイトで、2008年からサービスを開始しています。

サービス開始当初は個人間融資のモデルでしたが、2011年以降は現在主流の法人融資モデルになっています。累計応募額は約1,300億円超と融資型クラウドファンディング業界第1位の実績を誇ります。(2018年8月6日時点)

ファンド投資型:セキュリテ

セキュリテは2001年に設立されたミュージックセキュリティーズ株式会社によって運営されている、ファンド投資型クラウドファンディング事業です。

個人が小口で投資できるインパクト投資プラットフォームとして、日本酒や古民家改装、地方の特産品など多種多様な案件を掲載しているのが特徴です。

株式投資型:FUNDINNO

FUNDINNOは日本初の株式投資型クラウドファンディングとして、2017年4月にリリースされました。

ファッションや教育、IoTなどさまざまな業種の企業が資金調達を実施しており、累計資金調達額は約13億円を超えています。(2018年8月6日時点)

まとめ

投資型クラウドファンディングのそれぞれの特徴や関連した法律を解説してきました。

投資型クラウドファンディングの市場は今後更に成長することも予測されているので、興味がある方は各事業者のサイトやその仕組みをさらに調べてみるとより理解が深まるでしょう。

フィンテナでは融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)の各事業者の情報をまとめています。興味がある方はぜひチェックしてみてください。


※:フィンテナ調べ