「1サービスでバランスの良いポートフォリオを」ーークラウドバンク橋村社長インタビュー

「1サービスでバランスの良いポートフォリオを」ーークラウドバンク橋村社長インタビュー

証券会社が取り扱うソーシャルレンディングサービス、クラウドバンク

今回はクラウドバンクを運営する日本クラウド証券株式会社の代表取締役である橋村社長にこれまでの来歴や展望についてインタビューしました。

投資家と事業者が一蓮托生になれる仕組み

「1サービスでバランスの良いポートフォリオを」ーークラウドバンク橋村社長インタビュー
ーーまずは橋村社長のこれまでの経歴を教えてください。

元々はみずほ証券グループのコンサルティング会社で、エネルギー業界を中心に戦略立案や事業計画策定などのコンサルティングサービスを行なっていました。

その後、同グループ内におけるインフラファンドのタイ事務所に転籍となり、ファンドのフロントスタッフとして勤務していました。ここでモニタリングをはじめとした、投資実務についての経験と知識を培いました。

次のキャリアはアーンストアンドヤング社で、インフラストラクチャアドバイザリー部署の立ち上げに従事。

その後、知人の紹介を通じて日本クラウド証券に参画しました。当時の日本クラウド証券はシステム面や業務執行体制に課題を抱えており、まさに大きな改革を実行しなければならないタイミングでした。

初期メンバーではなく、後から入った人間だからこそ、フラットな目線で会社全体を捉え、過去の経緯にとらわれることなく、思い切ったサービスや体制の改善ができていると考えています。

ーーそんなバックグラウンドを持った橋村社長ですが、どうしてソーシャルレンディングに興味を持ったのでしょうか。

クラウドバンクは成功報酬型の事業です。

もし当社が良質な融資先を開拓できず、貸倒れなどが起こってしまうと、当社も望ましい報酬を得られません。投資家の方々に良い案件をご提供することは当社にとっても重要なのです。投資家と事業者が一蓮托生になれるこの仕組みはとても合理的かつ誠実だと思い、興味を持ちました。

加えて、世の中にはリスクを抑えながらも高い収益性が期待できる案件が多数あることをこれまでの経験から知っていました。ソーシャルレンディングの仕組みを活用することで、これらの良質な案件を一般の個人にも少額で提供できるようになります。これもソーシャルレンディングに魅力を感じた理由です。

投資家目線のサービス設計

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ーークラウドバンクの現時点での投資家数と属性を教えてください。

当サービスの投資家数は1万人を超えています。
属性は女性よりも男性が多く、年齢や職種には偏りがない状況で、幅広い投資家の方々にご利用いただいています。

ーー償還額や分配額の実績を教えてください。
募集金額は12月初旬時点で218億円を超えています。
償還金額は154億円、分配金の総額は4億8000万円です。

2016年までに終了しているファンドは6.78%の利回り実績となっています。

ーー最近は募集金額の勢いが増している印象です。この要因はどのようにお考えですか。

当社は過去の行政処分から、金融業者として体制の基礎を固めることの大切さを身に沁みて学びました。以降、社内のガバナンスやルールを見直し、透明性の高い事業運営、スムーズな業務執行ができる体制を整えて参りました。

投資家の皆さまにはこうした姿勢をご評価いただき、また、業務改善がしっかり行われていることを肌で感じていただけているからこそ、継続してご投資いただけているのだと思います。

併せて力を入れているのが投資家の方々へのユーザービリティやわかりやすさを追求することです。投資家の目線に立ち、様々な改善・取組みを繰り返してきた結果が、現在の実績に繋がっていると認識しています。

担保によって作られるデフォルトが起こりづらい仕組み

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ーーサービス開始以降これまでにデフォルトは一件も発生していません。どうしてこのような実績が残せているのでしょうか。

新規事業者の参入によって業界平均利回りが高くなってきている昨今ですが、クラウドバンクの運営においては利回りの高さだけに重きを置くのではなく「いかに投資家の資産保全性を高めるか」という点を最重視しています。

ソーシャルレンディングは担保を設定しなくてもファンドを組成することが可能ですが、クラウドバンクのファンドは、サービス開始初期を除き、最近では原則全て担保付きとなっています。これには理由があります。

担保はいざという時の保全にもなりますが、それだけではありません。

借り手企業に良い担保を差し入れていただくことができれば、返済の延滞や貸倒れの発生率を低減させることができます。どの企業も資産価値のある担保を延滞や貸倒れによって失いたくないと考えるからです。良質な担保の確保は、結果として、慎重な返済計画の策定及び返済実行につながるのです。

こうした取組みにより、これまでのところ当社では貸倒れが1件も発生しておらず、担保を売却する必要も生じておりません。

ーーどんな借り手企業が多いのでしょうか。
クラウドバンクは特定の業界に偏らず多様な業界の企業に対して融資を行っています。

その中で強いてあげるとすると、最近では、資金需要が旺盛である再生可能エネルギー系の借り手企業が多い状況です。

ーーこれまでに募集した特徴的なファンドを教えてください。
銀行やコンサルティングファームと連携して組成しているファンドがありますが、これは他の事業者には無い特徴的なファンドです。

ファンド毎にリスク差を持たせており、投資家の方々自身がリスク許容度や利回りを選ぶことができます。

細かな情報でも投資家の方々に共有

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ーー融資先企業の健全性や投資家へのご連絡についてはどのような体制で行なっているのでしょうか。

当グループはクラウドバンク・フィナンシャルサービスがファンドの組成を行い、日本クラウド証券が投資家の募集の取扱いを行なっています。

融資先の信用面や保全の仕組みなどに変更があった場合は、ただちにクラウドバンク・フィナンシャルサービスから日本クラウド証券へ連絡するように規定化し、人依存の情報共有体制にならないよう気をつけています。

こうして共有された情報はWebサイトやメールマガジンを通じて投資家の皆様にお伝えします。たとえ瑣末だと思われるような内容であっても当社が伝えるべきだと思っていることは、Webサイト上やメールマガジンにて逐一共有するようにしています。

ーークラウドバンクは他の事業者と比べてどういった点が特徴なのでしょうか。
クラウドバンクでは、多様なテーマのファンドに投資をすることができます。
特定のテーマに特化した事業者が増えていますが、複数の事業者でソーシャルレンディングを行うと資産管理は煩雑になってしまいます。当社はわかりやすいマイページとともに、多種多様なテーマ、利回りやリスクのファンドを提供することで、クラウドバンク口座のみでもリスク分散の効いた投資がしやすい環境をご提供しています。

続いて第一種金融商品取引業者であることも特徴です。
第二種金融商品取引業のみの業者が多いソーシャルレンディング業界の中、当社は第一種金融商品取引業も登録してサービス運営を行っています。二種業者よりもさらに厳格な規制のもと、監督官庁より厳しい監視を受けるため、健全な事業運営への意識が働きやすいと考えています。

また、システムを全て内製化していることも強みであると考えています。同業他社を見てみると、システムについては外注している事業者が多いのですが、その場合、お客様の要望に対して、迅速かつ柔軟な対応が難しくなるという側面があります。当社はシステム開発チームと共に、日々、サービスの使い心地やわかりやすさを追求しています。

預金と株式投資の間になるソーシャルレンディングの未来

「1サービスでバランスの良いポートフォリオを」ーークラウドバンク橋村社長インタビュー

ーークラウドバンクではインタビューコンテンツなど、他の事業者には無い動きが見られます。どのような意図でしょうか。

当社Webサイト上で展開しているプロフェッショナルへのインタビューは第三者の公平な意見等を発信する場として、良い意見も悪い意見も含めソーシャルレンディングに対する議論がなされる場をより増やしたいという思いのもと連載を開始しました。

前年比2倍超と業界は急成長を遂げていますが、多くの一般個人投資家の方々にはまだまだ未知の存在です。マスメディアではクラウドファンディングが取り上げられる機会が少しずつ増えてきてはいますが、それでもソーシャルレンディングについて言及されることは多くない印象を持っています。

高い利回りの影響もあってか、怪しいという印象を持つ方も一定数いるソーシャルレンディングだからこそ、第三者の客観的な意見を発信する場としてプロフェッショナルな方々へのインタビュー企画を始めました。

記事を見ていただけると分かるかと思いますが、中にはクラウドバンクやソーシャルレンディングに対する厳しい意見もあります。こうした意見もあえて掲載することで、議論を活発化させ、その結果、多くの方々に正しくソーシャルレンディングをご理解いただきたいという思いがあります。

ーー投資家のみなさまに伝えたい「ソーシャルレンディング投資において気をつけること」はありますか?

ファンドページで公開している情報はきちんと確認し、内容をしっかりと理解してから投資することが大切です。

また、少し面倒かもしれませんが、過去の類似ファンドの実績を確認し、どのような実績が出ているのかも確認すると良いと思います。

ーーソーシャルレンディング業界に対する展望を教えてください。

市場がさらに成長してくると、デフォルトに対する保険商品も出てくるかもしれません。
利回りの上昇についても、今後は抑制され、さらに良質な案件が増えていくでしょう。

こうしてソーシャルレンディングが保全性の高い金融商品として世の中に認識され、預金と株式投資の中間に位置する存在になれれば良いなと考えています。

ーー最後に投資家の方々にメッセージをお願いします。

今、これだけ多くの投資家の方々にクラウドバンクをご利用いただけているのは、行政処分に対して真摯に対応し、みなさまの信頼回復に努めた結果であると自負しています。

しかし、ソーシャルレンディング事業を行うための基礎固めに注力してきた結果、投資家の方々への情報発信が後回しとなり、業界内で目立たない存在となってきた部分もあるのではないかと反省しています。

これからは金融商品取引業者としてのコンプライアンスを徹底しながらも、これまでの業界では無かった革新的な取組みを皆さまに示していきたいと考えています。

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