ソーシャルレンディング業界大手のSBIソーシャルレンディングは、東証1部上場のSBI
ホールディングスのグループ会社で、貸借対照表(B/S)は開示されています。
今回は同社の17/3期のB/Sを見ながら、同社の経営状況を簡単に解説いたしました。
目次
貸借対照表を開示するSBIソーシャルレンディング
昨今、多くのソーシャルレンディング事業者の決算書が開示されるようになりました。
以前であれば未上場会社の場合、maneo程度しか決算書の開示はなされていませんでしたが、業界として成熟の方向に進んでいる証と言えるのではないでしょうか。
B/Sのみでも、過去との比較で様々なことが分かります。
今回はSBIソーシャルレンディングの17/3期決算について、B/Sを見ながら解説いたします。
SBIソーシャルレンディングの17/3期の貸借対照表
開示されているSBIソーシャルレンディングの17/3期の貸借対照表(B/S)は、下記のような状況となっています。
営業貸付金 112億円 | (負債)匿名組合預り金 120億円 (負債)その他 6億円 |
その他 15億円 | (純資産)資本 8.0億円 (純資産)利益剰余金 ▲6.5億円 純資産合計 1.4億円 |
資産合計 127億円 | 資産合計 127億円 |
SBIソーシャルレンディングは資産合計127億円と、大きな資産を有しています。
そのB/Sの中において、大きな割合を占めているのが「営業貸付金」及び「匿名組合預り金」となります。よってこの両者について3期分の推移を探ってみます。
営業貸付金の推移
SBIソーシャルレンディングの営業貸付金の過去3期分は下記のように推移しています。
- 15/3期 25億円
- 16/3期 46億円(+21億円)
- 17/3期 112億円(+66億円)
営業貸付金は17/3期に+66億円と、前期の+21億円に対し約3倍と大きな伸びを見せています。
営業貸付金は読んで字のごとく、同社から企業に対する貸し付けとなります。同社が募集するファンドから、対象企業等に融資された金額が営業貸付金となります。
よって同社は17/3期に一気に貸し付けを伸ばしたことが、B/Sの過去比較から分かります。
匿名組合預り金の推移
SBIソーシャルレンディングの匿名組合預り金の過去3期分は下記のように推移しています。
- 15/3期 31億円
- 16/3期 51億円(+20億円)
- 17/3期 120億円(+69億円)
投資家からソーシャルレンディングファンドの形式で募集した金額が、匿名組合預り金として計上されます。
随時ファンドの募集や償還がなされていることから、資金の出入りが発生するため、匿名組合預り金と営業貸付金の数字が若干異なりますが、おおむねバランスしています。
17/3期に営業貸付金が急増した同社ですが、当然貸付金の調達原資である匿名組合預り金の金額も急増しています。
営業貸付金及び匿名組合預り金の急増から、同社は17/3期にソーシャルレンディングファンドの募集金額を大きく伸ばし、順調に募集資金で対象企業等に融資も行ってきたという姿を読み取ることができます。
17/3期に黒字化を果たしたと考えらえるSBIソーシャルレンディング
SBIソーシャルレンディングの開示資料は貸借対照表(B/S)のみで、損益計算書(P/L)の開示はなされていません。しかしながらB/Sの推移を見ることで、同社の損益状況について大枠の把握は可能となります。
同社のB/S上の利益剰余金の金額は過去3期下記のように推移しています。
- 15/3期 ▲565百万円
- 16/3期 ▲663百万円(▲98百円)
- 17/3期 ▲653百万円(+10百万円)
※以下、百万円単位での解説
利益剰余金とは、過去の利益の蓄積金額となります。
同社は17/3期▲653百万円の利益剰余金が存在していますが、これは過去の決算で累計653百万円の赤字を計上したということです。
よって業界大手の同社といえども、黎明期では大きく赤字を掘って経営していたことがわかります。
その利益剰余金の推移を見ると、16/3期は前期比▲98百万円と赤字が継続していたものの、17/3期は前期比+10百万円となり黒字化。
同社の黒字化が初かどうかは3期分の決算書だけでは分かりません。ただし6億円を超える過去の累計赤字に比べれば微々たる黒字ではありますが、17/3期は10百万円の黒字化を達成したと考えられます。
ファンド募集及び貸付金の急増が17/3期黒字化の背景
貸借対照表の分析で見たように、同社は17/3期にファンド=匿名組合の募集額及び営業貸付金の金額が前期比3倍弱へと急増しています。
ソーシャルレンディング事業者のビジネスモデルは、ファンド募集時の手数料やファンドからの融資先に対し上乗せ金利を徴収するというもの。
同社の場合は、おおむね融資先から徴収する約2%の上乗せ金利がその収入源となります。
よって同社の17/3期黒字化の背景は、貸付金額の急増を背景としたものとなります。
同社のファンドは1年程度の期間のファンドが多いため、現状の規模で黒字化するためには年間110~120億円規模のファンド募集と貸し付けを行う必要があります。
同社は当期も順調にファンド募集を続けているため、18/3期もファンド募集額及び貸付金額の増加が予想されます。
両者の増加を背景に18/3期も続けて黒字を維持できるのか、との点が同社18/3期決算の見所となります。
まとめ
既にmaneoは開示されている決算書から黒字が明らかとなっています。
業界ではmaneoに次ぐ存在であるSBIソーシャルレンディングも17/3期は若干ではあるものの、黒字化を達成していると、貸借対照表の分析からは推定することができます。
SBIソーシャルレンディングは18/3期も黒字化を維持して、更に黒字幅を拡大することができるのか。
18/3期の同社の決算書にも注目したいと思います。
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フィンテナでは今後も各ソーシャルレンディング事業者の決算分析を行ってまいります。
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