ソーシャルレンディングにおけるカントリーリスクを国ごとに分析してみた

ソーシャルレンディングにおけるカントリーリスクを国ごとに分析してみた

投資に興味のあるみなさんであれば、カントリーリスクというキーワードについてどこかで見聞きしたことがあるはずです。
この言葉に対して、「いかにも損をしそう」といったネガティブな印象をお持ちの人が多いことでしょう。

今回はカントリーリスクについて詳しい解説やお役立ち情報、そしてソーシャルレンディングとの関係について書きます。

カントリーリスクとは?

カントリーリスクとは、投資した対象国や地域において、政治・経済の状況の変化によって証券市場や為替市場に混乱し、投資した資産の価値が変動する可能性のことをいいます。

「リスク」はあくまで変動幅を指す言葉なので、カントリーリスクは常に悪いことばかりが起こすのではなく、場合によっては投資家が有利なリスクが生じることもあります。

とはいえ、投資の世界では投資家へネガティブな影響を与える事象にカントリーリスクという言葉を使うことが多いでしょう。

主なカントリーリスクの分類

カントリーリスクについて代表的な事象を下表にまとめました。

分配 代表的な事象
政治に関わるリスク ・政権交代に伴う政策の転換
・外資に対する規制強化
・対外関係の変化
経済に関わるリスク ・財政・金融政策の変更
・労働法制や雇用問題
・財政不安に伴う国債利回りや為替の急変
戦争・テロなどの社会的リスク ・戦争・紛争、及びその兆候
・反体制勢力による社会不安、テロ
・疫病の発生
・モラルの欠如

カントリーリスクが高いのはどんな国?

一般的に先進国よりも新興国や発展途上国の方がカントリーリスクは高いと言われます。

上表の項目を先進国や途上国に当てはめて考えれば、たしかに納得できる感じがしますね。

もちろん先進国にもカントリーリスクは少なからずあります。
最近の日本で言えば北朝鮮関係の緊迫化が上表の「戦争・テロ等の社会的リスク」に当てはまります。

北朝鮮からミサイルが発射されると日経平均株価が下落するという事象が何度も見られるのは、カントリーリスクが意識された影響と考えられています。

カントリーリスクが高い国の見分け方

投資家としてやはり気になるのは、カントリーリスクの高い国、低い国を見分ける方法です。

投資を検討している国のカントリーリスクが高いのであれば、本当にこの期待利回りで投資して良いのか、再検討の余地があるでしょう。

カントリーリスクを判断するにあたり参考になる情報として、株式会社日本貿易保険が発表している「国・地域ごとの引受方針」があります。

これは世界各国に対して安全~危険の基準をA~Hの8ランクで定め、同社の貿易保険の査定に使っているものです。

8ランクの基準ですが、もちろん適当に付けられたものではなく、OECD(経済協力開発機構)のカントリーリスク専門家会合において下された国際評価をもとにランクを決定しているそうです。

カントリーリスクは定量評価するのが難しく、他では見られない有益な情報であるため、ぜひチェックしてみてください。

※日本貿易保険社による「国・地域ごとの引受方針」はこちら

カントリーリスクとソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングにおいても、特に海外案件に投資する際はカントリーリスクに注意して投資判断する必要があります。

海外案件を扱うソーシャルレンディングとは?

2017年10月時点で海外案件を主に扱っているのは以下の5事業者です。

事業者名 対象国
ガイアファンディング アメリカ
アメリカンファンディング アメリカ
スマートレンド 香港(中国)
クラウドリアルティ エストニア
クラウドクレジット ペルー、ジョージア、エストニア、リトアニア、カメルーンなど

それぞれが融資対象とする国や地域のカントリーリスクについて、詳しく見てみましょう。

ガイアファンディングとアメリカンファンディング : アメリカ

※ガイアファンディングではほぼ全てのファンドで返済遅延となっています(2018年11月22日時点)。詳細はこちらをご覧ください。

ガイアファンディングとアメリカンファンディングは、ともにアメリカの不動産事業会社への融資を専門に扱うソーシャルレンディングです。

アメリカは世界経済をけん引する先進国であり、カントリーリスクは比較的低いと言われています。日本貿易保険社の評価も最高位の「A」となってます。

しかし近年の大規模な金融危機と言えばアメリカ発のサブプライムローン問題であり、その原因の1つに不動産価格の高騰がありました。
また近年話題になっている巨大ハリケーンの影響で、該当不動産が損壊することにも注意が必要です。

対象国 日本貿易保険の評価 主なリスク
アメリカ A(8ランク中最も良い) ・不動産・金融バブル
・ハリケーンなどの自然災害

スマートレンド : 香港(中国)

スマートレンドは、日本国内の案件に加えて香港(中国)の事業者に対する融資も扱っています。

香港はアジア圏内において最も金融ビジネスが盛んな地域の1つであるものの、日本貿易保険社の評価は中国と同ランクで上から3番目の「C」となっています。
香港だけで切り取って考えると、不本意な評価なようにも思えます。

香港に対しては中国の影響が及ぶ可能性もあることから、いわゆるチャイナリスクが懸念されます。

対象国 日本貿易保険の評価 主なリスク
香港(中国) C(8ランク中3番目に良い) ・中国政府による規制
・中国経済成長率の鈍化

クラウドリアルティ : エストニア

クラウドリアルティは国内案件に加えてエストニアの事業者に対する融資も扱っています。

エストニアのことを詳しく知っている人は少ないでしょうが、実はIT先進国として有名です。
人口が少なく人手が足りないことが、セルフサービスやデジタル化を促進しているようです。
国民 ID カードを活用して電子申告だけでなく、e ヘルス、e 警察、e スクール、e 不動産など、日本でさえできてない様々なITサービスを実現しています。

エストニアに対する日本貿易保険社の評価は2番目に高い「B」となっています。

エストニアの代表的なカントリーリスクはロシアとの関係悪化があげられます。
以前も領土問題で両国は対立していたことがあったため、問題が生じた時にエストニアへの政治的・経済的影響が懸念されます。

対象国 日本貿易保険の評価 主なリスク
エストニア B(8ランク中2番目に良い) ・ロシアとの関係悪化

クラウドクレジット :多数の対象国からペルーとカメルーン

クラウドクレジットは多数の国で融資を行っているため全て解説するとキリがないので、同社の代表的ファンドであるペルーとカメルーンのカントリーリスクを取り上げます。

・ペルー(南米)
クラウドクレジットの最初の案件でもある債務者ファンドの投資対象国はペルーでした。

ペルーの経済状況やカントリーリスクを想像できる人は少ないでしょうが、実は南米の中では安定した国と評価されており、日本貿易保険社の評価でも南米エリアではチリに次ぐ第2位の評価を得ています。

特定要因でのカントリーリスクはないものの、先進国ほど政治・経済に安定感はありません。
一般的なカントリーリスクの要因に注意して投資する必要があります。

対象国 日本貿易保険の評価 主なリスク
ペルー B(8ランク中4番目に良い) ・経済成長率が鈍化するリスク
・失業率が高まるリスク
・通貨ソルの為替リスク

・カメルーン(アフリカ)
ソーシャルレンディング初のアフリカ系ファンドは、クラウドクレジットのカメルーン中小企業ファンドでした。

カメルーンの内情はアフリカ諸国の中では安定していて、農業開発、道路・鉄道建設、石油産業開発などが順調に進んでいます。
しかし地域によっては政権と衝突するなどの危険地域があり、その地域に行くのであれば渡航を控えるよう外務省が注意突起をするほどの場所もあります。

つまりカメルーンは、経済的な成長を見せているものの社会的には未成熟な面が多分に残る国です。そのため、日本貿易保険社の評価では下から2番目の「G」評価となっています。

実際、過去にクラウドクレジット社のカメルーンファンドで返済遅延が生じるなど、カントリーリスクが顕在化したこともあるため注意が必要でしょう。

対象国 日本貿易保険の評価 主なリスク
カメルーン G(8ランク中下から2番目) ・現長期政権の後継者リスク
・一部地域と政権との衝突
・モラル欠如で生じるリスク

まとめ

今回の記事のまとめです。

  • カントリーリスクとは、海外への投資・融資や貿易を行う際に対象国の情勢が変化したことで、損益が大きく変化するリスクを指す
  • カントリーリスクの高さは各国やエリアで様々でだが、一般的に先進国よりも新興国や発展途上国の方がリスクが高い傾向にある
  • 各国のカントリーリスクを知りたい場合、OECDの国際評価をもとに日本貿易保険社が定める「国・地域ごとの引受方針」が参考になる
  • ソーシャルレンディングでもカントリーリスクの影響を受ける可能性は十分にあり、特に海外ファンドに対しては考慮のうえ投資判断する必要がある
  • 実際にクラウドクレジットのカメルーンファンドにおいて、返済遅延が生じた。カントリーリスクが高いと評価される国には、やはり細心の注意が必要である

以上、今回はカントリーリスクについて詳しい解説やお役立ち情報、そしてソーシャルレンディングとの関係について書きました。
それでは!