ソーシャルレンディングは株や社債のような有価証券ではありません。
匿名組合への出資という形を取ることでファンドを設立し、対象先への融資を行っています。
今回はソーシャルレンディングの投資商品としての立ち位置を解説します。
ソーシャルレンディングの独特の位置付け
昨今、認知が広がってきているソーシャルレンディングですが、実は金融商品としては独特の位置付けがなされています。
株式や投資信託の場合、「株式・投資信託という有価証券の売買」で収益を上げようとするものとなります。
また社債は、「社債という有価証券を保有することで得られる金利収入」を目的とします。
一方でFXの場合は有価証券とは異なるものの、外国為替という通貨を売買することで収益を上げようとするものです。
ソーシャルレンディングの場合、対象企業などに融資をすることで発生する金利を元に収益を得るもの、社債同様に売買での収益は対象としていません。
しかし実際に投資家が手にするのは、有価証券や通貨と言った実在する対象物ではありません。
ソーシャルレンディングは、匿名組合への出資と言う形で投資を行うこととなります。
有価証券とは
有価証券は金融商品取引法第2条で定義されています。
同法では、国債・社債・株券・新株予約権社債・投資信託の受益証券等が、有価証券として具体的に定義されています(2017年11月時点)。
ただし直接的には有価証券に該当しないものの、法令上は有価証券と同じ規制を受ける信託受益権、投資事業組合などは「みなし有価証券」として定義されています。
ソーシャルレンディング事業者が組成する匿名組合も金融商品取引法上も「みなし有価証券」と位置付けられています。
匿名組合とは
ソーシャルレンディング事業者が組成を行う匿名組合とは、匿名組合員が営業者のために出資を行い、その営業から生じる利益の分配を受けることを約束する契約となります。
匿名組合は法的には商法第535条及び536条に規定されています。
商法第535条
匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生じる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。
商法第536条
1. 匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。
2. 匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる。
3. 匿名組合員は、営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない。
4. 匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有しない。
ソーシャルレンディングへの投資と社債への投資は、形の上ではそれ程変わりはないという印象を受けるかもしれません。
しかし社債は有価証券の一方、ソーシャルレンディングは匿名組合への出資となるため、異なる形式での投資となることは、豆知識として知っておいて損はありません。
匿名組合方式を利用する理由
日本では業務としてお金を貸す際には、貸金業法の登録が必要となります。
ソーシャルレンディングにおいても、その規定が適用されるため、個人投資家がソーシャルレンディングに投資を行う際は、本来的には貸し金業の登録が必要となります。
この問題を回避するために考えられたのが、投資家とソーシャルレンディング事業者の間で出資時に「匿名組合契約」を締結する方法となります。
この方法により、貸し金業の登録は事業者の側のみとなることで、個人によるソーシャルレンディング投資がハードルの低いものとなっています。
ただし商法第536条3項の規定「匿名組合員は、営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない。」とある通り、投資家は単に出資を行うのみの存在です。
融資先企業からの回収が滞った際に、投資家が融資先に赴き、直接資金の回収を行うことは認められていません。
まとめ
投資家の側から見ると、ソーシャルレンディングの投資と株式投資、投資信託投資、社債投資に値動きの有無の違いはありますが、「投資」としてひとくくりにすることはできます。
しかしながら、その投資の形としてソーシャルレンディングは他の有価証券を中心とする投資商品と比べると、匿名組合を利用する独特の存在と言えます。