成長が続くソーシャルレンディング市場には、新規参入の事業者が相次いでいます。
今回の記事では直近でソーシャルレンディング事業に参入を行った・参入表明をした事業者を紹介するとともに、ソーシャルレンディング事業を行う際に、必要とされる準備内容について解説いたします(2017年10月中旬時点)。
目次
ソーシャルレンディングの参入事業者は増加中
資産運用先の1つとして徐々に投資家の認知度も向上しているソーシャルレンディングですが、認知度の向上に伴い、参入事業者も相次いでいます。
ソーシャルレンディング事業への参入には、後述しますがライセンス取得、システム構築等の事前準備が必要となるため、単なる思い付きで参入できる訳ではありません。そのため、事前に入念な準備があった上での参入となっています。
直近では下記の事業者が新たにソーシャルレンディング事業を開始しています。
1.アップルバンク
- 2017年4月より案件の募集を開始。
- 給料前払いシステムファンドなど特徴的な案件を組成。また不動産案件においてもホテル向けの案件を手掛ける。
- 運用期間が6か月前後の案件が多く、また金利も7~10%程度と高めに設定されている。
2.レンデックス
- 2017年7月より案件の募集を開始。
- 不動産特化のソーシャルレンディング事業者。
- 11か月の期間で利回り10%の案件を募集している。
- 担保不動産については、第三者である東急リバブルによる査定結果を利用。
3.ポケットファンディング
- 2017年8月より案件の募集を開始。
- 沖縄県に本社を置くソーシャルバンクZAIZEN株式会社が運営。沖縄発ソーシャルレンディングで、沖縄の不動産案件中心に案件の募集を行っている。
- 期間6~9ヶ月の案件で、利回りは8%前後。1万円から投資可能。
4.クラウドリアルティ
- 2017年6月より案件の募集を開始。
- 外資系金融出身者が設立のソーシャルレンディング事業者。
- 利回り6~10%前後で期間は13~36ヶ月の案件。不動産案件中心であるが、京都の町家再生案件やエストニア不動産案件など、ユニークな案件を組成している。
今後の参入予定事業者
2017年も市場拡大が続いているソーシャルレンディング市場への参入は、今後も継続すると予想されています。実際に下記事業者のソーシャルレンディング事業への参入が表明されています。
1.ライフルソーシャルファンディング
不動産ポータルサイト「HOME’S」を運営する株式会社LIFULL(ライフル)は、クラウドファンディング事業開始に向けて、クラウドファンディングプラットフォーム運営の株式会社JGマーケティングを17年1月に子会社化。不動産特化型クラウドファンディング事業の開始を計画。
・新規参入予定のライフルソーシャルファンディングとはどんな企業・サービスなのか
2.ケネディクス
不動産ファンド運営のケネディクス株式会社が、株式会社野村総合研究所と共同で不動産の投資型クラウドファンディング事業を展開するため、ビットリアルティ株式会社を共同設立したと、17年8月に発表。
・ケネディクスと野村総研が不動産投資型クラウドファンディング事業を展開する「ビットリアルティ」を設立
ライフルソーシャルファンディングおよびケネディクスともに、不動産分野に対する知見が豊富な会社です。
これまでどちらかというと中小事業者の参入が中心であったソーシャルレンディング・投資型クラウドファンディング市場ですが、ある程度の市場基盤の確立を受け、大手事業者の参入が始まったといえるのではないでしょうか。
【ソーシャルレンディング事業者一覧はこちら】
・どこがおすすめ?日本のソーシャルレンディング事業者・会社の一覧をまとめてみた
ソーシャルレンディングへの参入に必要なこと
ソーシャルレンディングは金融庁の監督下にあります。
ファンドを組成しての活動となるため、事業を行うには金融庁へ第二種金融取引業の登録が必要です。
また対象先に対し融資を行うことになるため、都道府県に貸金業者としての登録も要します。
第二種金融商品取引業の登録要件としては、資本金1,000万円以上で、法令順守の責任者及びコンプライアンス担当者の設置が求められます。
また貸金業の登録には、最低純資産額5,000万円以上、貸付業務に3年以上従事した経験を有する者がいることなどの要件があります。
よってソーシャルレンディング事業を行うためには、上記の体制整備が必要であり、通常の事業以上に社内体制整備に注力する必要があります。
ただし上記は事業活動を開始するための形式的な用件となります。
実際に事業を開始するには、インターネットを経由して資金調達を行うためのシステム整備、実際の投資案件の開拓が必要不可欠となります。
ソーシャルレンディングはインターネットを経由しての資金調達であり、投資家と事業者を繋ぐためのシステムが必要とされます。
そして事業を行うためには、実際に融資を行う先の開拓が必要となります。
重要なのは投資家から預かった資金を、適切な先に投資して投資収益を上げることです。
ソーシャルレンディングでは、金利を支払う能力があり、回収可能性の高い借り手企業の開拓を行います。
この意味において資金の回転が速く、高い利益率の見込まれる不動産案件は、ソーシャルレンディングとの親和性が非常に高いため、日本では不動産案件の比率が高い要因となっているのではないでしょうか。
まとめ
ソーシャルレンディングはフィンテック領域にも位置しており、実はその中核を担う存在です。
2016年より急速な勢いで成長しているソーシャルレンディング市場ですが、2017年も堅調に拡大が続いており、今後も新規参入の事業者が増えると予想されています。
まだ若い市場だけに、ソーシャルレンディング市場のプレイヤーは今後も増えるのではないでしょうか。
今後どのような事業者が参入し、どの事業者が成長を遂げるのか注目といえるでしょう。