こんにちは、SALLOWです。
ソーシャルレンディングは安定的なインカムゲインを得ることができ、今後の発展も望める投資方法だと思います。
また、誰かの後追いをすることでもほぼ同じ投資成績が得られる再現性や、投資家同士が競争関係にない事など、他の投資にはない特徴もあります。
しかし、投資であるからにはリスクも付きもの。
今回の記事ではソーシャルレンディングに関するリスクを一通り見た後、私が特に気にしているポイントについて説明します。
目次
ソーシャルレンディングのリスク
まず、ソーシャルレンディングを取り巻くリスクを簡単に列挙します。
1.投資案件のリスク
最も有名なリスクで、ある案件に投資した貸付金が焦げ付くリスクです。
このリスクは一つ一つの案件に対して存在するリスクと、投資している案件全体に対するリスクの2種類に分けられます。
一つ一つの案件で考える場合、案件の種類、返済原資、担保やそのほかの保全性からリスクを評価して投資を決定します。
投資する案件全体で考える場合、一つの案件に巨額を投じず、投資する案件を分散してリスク低減を図ります。
2.ソーシャルレンディング事業者のリスク
個人的には、これが一番重要だと考えています。
投資案件のリスク低減のためには前述の通り、投資案件を分散することが有効ですが、仮に事業者が倒産したり不正をはたらいていた場合、案件の分散自体が無意味になります。
このリスクを評価するには、事業者(経営母体や関係会社も含みます)の規模や経営状態、出資を受けている場合は出資元、代表者や役員の経歴や過去、金融庁の処分履歴、事業者が依頼している監査法人の評判に至るまで、数多くの情報が必要となります。
3.その他のリスク
これ以外にも、日本の法制度が変更となるリスク、海外案件であれば為替リスクやカントリーリスクが考えられます。
これらのリスクは評価することや低減することの難しいものが多いですが、ソーシャルレンディングの案件に投資する際には検討すべきリスクであることは間違いありません。
【為替リスクについて詳しくはこちら】
・ソーシャルレンディングに対する為替リスクの影響と対策
顔が見えない相手を評価する方法
以上、ソーシャルレンディングの一般的なリスクを列挙しましたが、これらとは少し違った切り口で私が気にしているポイントもあります。
それは、「投資家、ソーシャルレンディング事業者、貸付先の利害関係がどうなっているか」です。
ソーシャルレンディングにおい借り手企業の情報は監督官庁の指導により匿名となっています。
この理由は一つに、もし借り手企業の情報を公開してしまうと投資家が直接貸付を行っているのと変わらないことになり、投資家一人一人が貸金業免許を持たなければならないという法解釈によるもの。
また、もし貸し付けた資金が焦げ付いた場合に、投資家が借り手企業に対して違法な回収を行う事を防ぐという、借り手企業保護の意味もあります。
最後に、借り手を公表してしまうと取引先がその情報を目にして、「あそこの会社はソーシャルレンディングで資金調達をしている。銀行から融資を受けられないくらい経営状態が危ないのか?」と思われ、以降の取引に影響を与えてしまう可能性もあるようです。
※資金調達方法として、銀行よりソーシャルレンディングの方が有利という場合ももちろんあります。しかし、ソーシャルレンディングの認知がまだ広がっていない現状では、銀行から資金調達しない事に対して誤解を抱く可能性もあるでしょう。
このような背景があり、ソーシャルレンディングでは貸付先は匿名になっています。
それでは顔が見えない、正体も分からない、もしかすると悪意を持っているかもしれない貸付先を、どのようにリスク評価したらいいのでしょうか。
この問いに対する一つの答えは、「利害関係と損得勘定」だと私は考えます。
「貸付先やソーシャルレンディング事業者が幸せな状況では、投資家も幸せになる」、あるいはこの対偶を取って「投資家が不幸な状況では、貸付先や事業者も不幸になる」と、関係者の利害が一致する状況であれば、相手の顔が見えないリスクは低減されるでしょう。
逆に、投資家と貸付先やソーシャルレンディング事業者との間で利害の相反*が起こる場合は、リスクが高い案件とし、投資は見合わせるべきだと考えます。。
*例えば、貸付先の利益を最大化するためには、投資家を犠牲にするのが最善の方法である場合など。
次にこの利害関係について、具体的な例を出して説明します。
利害が一致する場合とは
まず、下図を見てください。
「事業者」と書いてあるのは、ソーシャルレンディング事業者のことです。
図には2つの案件が並んでいます。どちらもソーシャルレンディングでは主流の案件である不動産を担保とする貸付です。
このような二つの案件を比べた場合、私は下の案件の安全性が高いと判断します。
理由は、「事業者との利害が一致しているから」です。
上の案件では、事業者は投資家から集めた3,000万円をそのまま貸し付けます。この場合、万が一貸し付けた資金が焦げ付いたとしても、事業者は案件をデフォルトさせればそれ以上の損害は負いません。
※実際は、案件がデフォルトすることによる事業者の信用問題があるので、大手事業者ほど簡単にはデフォルトさせられないでしょう。
一方で下の案件では、事業者は投資家から3,000万円を集めますが、そこに事業者の資金を1,000万円を足して、合計4,000万円を貸し付けています。
この場合に貸し付けた資金が焦げ付くと、事業者は案件デフォルトにより信用にも関わることが考えられる上、1,000万円の金銭的損害も受けます。
つまり、資金が焦げ付いて投資家が損害を受ける状況を想定する、下のケースではソーシャルレンディング事業者が受ける損害がより大きいと考えられます。
もちろん事業者は損害を受けたくないでしょう。
上と比べて下のケースでは貸付先をより注意深く検査すると考えられるため、これが投資の安全性を高める「利害の一致」が起きる一例です。
※1000万円を事業者自身が融資しているケースを想定しています。
利害が一致しない場合とは
では、逆の場合も考えます。下記の図を見て下さい。
今回は、「既存建物のテナントとして営業する施設があり、その施設の設備購入費用をソーシャルレンディングで募集する」という場合を考えます。
図には同じく二つのケースがありますが、貸付金などの条件は同じで、保全だけが異なります。
上の保全は二つ、購入した設備に対する動産担保と、貸付先企業の連帯保証です。貸し付けたお金が焦げ付くような場合、購入した設備の差し押さえや、貸付先企業への返済請求が可能です。
下の保全は、テナントの売上に対して質権を設定します。テナントの売上自体が返済原資となるわけです。
この二つの案件を比べると、上は通常あり得る案件、下は投資すべきではない案件です。
その理由は、テナントの経営がうまくいかなくなった場合を想定すればすぐに分かります。
テナントの経営がうまくいかなくなれば、当然売上は落ちます。
下のケースの場合は売上にしか質権を設定していませんので、売上が落ちれば返済は滞りますし、その場合にテナント設備の差し押さえや企業への返済請求はできません。
上のケースの場合、経営がうまくいかなくなり返済が滞っても、テナント設備の差し押さえをすることができます。
設備を差し押さえられれば営業ができなくなるため、貸付先の企業は連帯保証に従って返済を行うことになるでしょう。
保全は、貸付金が滞る場合を想定して行うものです。
ですから、貸付金が滞る=経営が悪化する場合に影響を受けるものは、保全には向きません。不動産担保が堅い案件と言われるのはこのためです。
図に示した二つのケースのうち、差し押さえや連帯保証がなく貸付先にとって得な下のケースは、投資家にとっては損なケースです。
関係者の利害が相反する場合、何も対策を打たなければ高確率で損をするのはより弱者。この場合は個人投資家になります。
これが、投資を行うべきではない「利害の相反」の一例です。
まとめ
以上、2つの例を挙げて利害の一致と利害の相反を説明しました。
ソーシャルレンディングはまだ若い投資商品であり、事業者の社歴も一部を除けば浅く、また貸付先は匿名化されています。
顔の見えない貸付先に、社歴の浅い事業者を介して投資するソーシャルレンディングにおいては、リスクの見積りが難しい事が最大のリスクと言えるかもしれません。
そんなリスクを見積もる一つの方法として、私はこの「利害が一致するか、相反するか」ということに、重点を置くようにしています。
利害の一致も相反もない案件もあるので常に使える方法ではありませんが、案件を評価する際の考え方として紹介させていただきました。皆様の参考になれば幸いです。