今後のソーシャルレンディング業界についてさまざまな角度から分析

今後のソーシャルレンディング業界についてさまざまな角度から分析

ここ数年で日本のソーシャルレンディング市場は急成長を遂げています。

このままいけば数千億や数兆円の規模まで拡大することも予想されますが、今後のソーシャルレンディングはどのような形になっていくのでしょうか。

今回は今後のソーシャルレンディングについて、市場規模はもちろん、利回りや法律を含めさまざまな角度から検証してみました。

ソーシャルレンディングの今後の市場規模

日本

日本のソーシャルレンディング市場規模は矢野経済研究所とフィンテナの調査結果があります。

矢野経済研究所の調査では、2016年度のソーシャルレンディング市場規模は約672億円と発表されました。2017年度は約987億円と前年比約46.8%の成長が見込まれています。※1

フィンテナの調査結果は、2016年のソーシャルレンディング市場規模は約533億円でした。2017年は参入事業者も増加し、単月市場規模最高額を更新するなどさらなる市場規模拡大が見込まれます。※2

2017年1〜9月までの成立したファンドの応募額の合計は850億円を超えており、2017年のソーシャルレンディング市場規模は1,000億円を超えると見込まれます。※2

海外

海外でも欧米ではP2Pレンディングと呼ばれる個人間融資の市場が拡大しており、その中で比較的市場が大きいアメリカのソーシャルレンディング市場を紹介します。

アメリカのソーシャルレンディングの市場規模
アメリカのソーシャルレンディングの市場規模

アメリカでは2015年に約2兆5,000億円に達し、さらにソーシャルレンディング市場は拡大しています。アメリカの大手P2Pレンディングサイト「Lending Club」は、2014年にニューヨーク証券取引所に上場し、時価総額1兆円規模にまで達しました。

アメリカのソーシャルレンディング市場規模と日本を比較するとまだまだ成長の余地があることがうかがえます。

上場企業などの新規参入もあり、今後も市場規模拡大へ

ソーシャルレンディングの参入事業者数
ソーシャルレンディングの参入事業者数

上記画像で示したように、2015年から2016年で参入事業者数が2倍になっており、参入事業者数は年々増加していることがわかります。

上場企業では、東証一部上場企業の株式会社インベスターズクラウドがTATERU FUNDINGを2016年4月にスタート。また不動産に特化したオーナーズブックを運営する株式会社ロードスターキャピタルが2017年9月にマザーズ市場へ上場するなどソーシャルレンディング市場の注目度が高まっていると見て取れるでしょう。

今後もソーシャルレンディング事業者数は増加すると予想されることから、合わせて市場規模も拡大していくと考えられます。

ソーシャルレンディングの今後の利回り推移

ソーシャルレンディング業界レポート(2017年9月)
フィンテナの調査では、近年約8%前後でソーシャルレンディング投資の平均利回りが推移していることがわかりました。(年率・税引前)※4

ソーシャルレンディングの新規参入事業者は0から投資家の方々を集客していくことになるため、高い利回りのファンドを出していくことで運営するサービスに注目を集めようとすることが多いです。

また◯◯億円突破記念ファンドというような形で利回りが高いキャンペーンファンドも数多く出てきているなど、まだ他の金融商品と比較しても高い利回りで推移していく可能性があるでしょう。

ただし、既にソーシャルレンディングである程度の実績を積んできている事業者、すでに目標の投資家数を獲得できている事業者などは平均利回りと比較すると低い利回りになっていることも多いようです。

ソーシャルレンディングに関わる今後の法律

匿名化と複数化

基本的にソーシャルレンディングは金融商品取引法と貸金業法の2つの法律にのっとる必要があります(例外もあり)。

この貸金業法によって、ファンド情報の匿名化及び複数化が行われており、投資家にどこまでの情報を開示するかという線引きは未だに議論されているものの糸口は見えていません。

不動産特定共同事業法の一部改正

金融商品取引法と貸金業法は金融庁の管轄になりますが、不動産特定共同事業法(不特法)は国土交通省の管轄になります。

またこの不特法のスキームを用いる場合、金融商品取引法及び貸金業法の登録事業者になる必要がなく、不動産特定共同事業の許可を得ることで事業を始めることが出来ます。

この不特法の一部改正案が2017年3月に閣議決定され、2017年12月より施行されます。

現行法ではインターネットによる書面交付が認められていませんでしたが、この改正によってインターネット上での書面交付が認められるなど、ソーシャルレンディング、もしくはそれに似たスキームの事業者に対する環境が整います。

この不動産特定事業法を用いたスキームの事業者は、今後さらに増えていくでしょう。

ソーシャルレンディング投資に関わる今後の制度

ソーシャルレンディングのNISA適用はあるか

日本のNISA(少額投資非課税制度)は年間120万円までの投資で得た利益に対して、約20%の税金を非課税にすることができる制度です。
金融機関で開設したNISA口座で取引することでこの制度を活用できます。投資信託の売却益や株式の配当金などで使用している人も多いのではないでしょうか。

日本のソーシャルレンディング投資で得る配当金は、事業者から振り込まれる際に源泉徴収税約20%が引かれており、実質利回りは低くなっているのが現状です。

もし仮にソーシャルレンディング投資がNISA適用になった場合、この源泉徴収税約20%が非課税の対象になり、今後の資産運用で期待利回り通りになる可能性が高くなるでしょう。

イギリスでは2016年にISAというNISAの元になった制度が改正され、ソーシャルレンディング投資(イギリスではP2Pレンディング)も非課税の対象になりました。日本でも今後ソーシャルレンディング投資がNISAの対象になる可能性も十分考えられるはずです。

ソーシャルレンディングの保険適用はあるか

銀行の預金は預金保険法が適用されていますが、投資信託や株式といった金融商品で直接的に保険が適用されていることは通常ありません。

ソーシャルレンディングの案件では担保・保証がついていることも多いため、間接的に保険の役割が担われているともいえますが、金融商品自体に保険がかけられるという可能性は低いでしょう。

ソーシャルレンディングでクレカ払いができるか

2016年5月に金融庁が投資型クラウドファンディングのクレジットカード払いを認める方針を出し、ファンド投資型クラウドファンディングのサイトでは実際にクレジットカード払いができるようになりました。

寄付型や購入型クラウドファンディングでもクレジットカード払いができますが、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)ではクレジットカード払いはできません。

決済方法が増えることで投資家の利便性は高まることになりますが、責任の所在や信用問題といった大きな課題があることから、今後もカード決済が認められる可能性は高くないでしょう。

まとめ

市場規模のほかにも、利回りや法律などさまざまな角度からソーシャルレンディングの今後について検証してきました。

2008年にmaneがスタートし、ここ1、2年で急成長してきた日本のソーシャルレンディング市場。海外と比較するとまだまだ成長の余地があることからも、ますます目が離せない市場になりそうです。


※1:矢野経済研究所:国内クラウドファンディング市場の調査を実施(2017年)
※2:フィンテナ調べ(2017年10月時点)