
黎明期ではあったものの、アメリカではサブプライムローンの崩壊時にソーシャルレンディングサービスは存在していました。
今回の記事では、サブプライムローンの崩壊当時のアメリカにおけるソーシャルレンディングの状況を踏まえつつ、国内ソーシャルレンディングの今後について、不況があった際の最良のケース・最悪のケースの2パターンを考えてみました。
本格的な景気後退期を経験していない国内ソーシャルレンディング業界が、今後到来すると思われる景気後退期にどのような状況となるのか、注目したいと思います。
目次
ソーシャルレンディングはサブプライムローン崩壊を経験している
2007年から2009年にかけてアメリカでは、サブプライムローンの不良債権化が進展し、サブプライムローンの崩壊が発生。
サブプライムローンは証券化の手法を駆使した金融商品であり、その影響は単に住宅の借り手とローンの貸し手金融機関に留まらず、多くの金融機関の経営危機を招き、リーマン・ショックの導火線ともなりました。
当時から10年の月日が経過しようとしていますが、実はアメリカではソーシャルレンディング市場が2007年から2009年には既にありました。
実はソーシャルレンディングがインターネット金融の申し子、Web2.0時代の一角を担うとされ市場拡大が期待されていたタイミングが、サブプライムローン崩壊の頃とほぼ重なっているのです。
当時はまだ市場創成期のソーシャルレンディングでしたが、サブプライムローンの崩壊、そしてリーマン・ショックの影響を大きく受けることなく、市場の拡大に成功しています。
しかし実際には、貸し倒れの増加といった影響はあったようです。
それでもアメリカのソーシャルレンディング業界は、サブプライムローンの崩壊で大きな影響を受けることなく乗り切ることができています。
またサブプライムローン市場の崩壊により、それまで金融機関からの借り入れで対応していた層がソーシャルレンディングに流れ込み、反対にソーシャルレンディング市場拡大の端緒となったのではないかとの意見もみられます。
当時のソーシャルレンディング市場はまだ黎明期であり、現在ほどの市場規模が大きかったわけではありません。
たしかに現在のソーシャルレンディングとは一概に比較はできない面もあります。
しかしながらソーシャルレンディングはサブプライムローンの崩壊を乗り越え、なおかつサブプライムローンの崩壊発生を契機に市場拡大を果たした、という背景もみられます。
【直近の欧米におけるソーシャルレンディング市場はこちら】
・ソーシャルレンディング海外事情
日本のソーシャルレンディングと市場不況の関係性について
日本においてソーシャルレンディングが事業としてスタートしたのは、2008年のリーマンショックの後。
アメリカと比べると数年のギャップがあります。
リーマンショックは日本も経済的に大きな影響を与え、一気に景気が悪化させました。
景気の悪化は急激であったものの、その後の景気回復は息の長いものとなっています。
政府は2017年9月に、リーマンショックの後に2012年11月からスタートした景気回復期について、戦後第2位のいざなぎ景気(1965年11月~1970年7月の57ヶ月)を超える長さになった可能性が高いと発表しています。
こうした意味では、日本のソーシャルレンディング業界は本格的な不景気の時代を経験していないとも考えられます。
長きに渡る景気回復期と市場の立ち上げ期が重なるという幸運に恵まれた日本のソーシャルレンディング業界ですが、景気は良くなる時もあれば悪くなる時もあります。
景気が下向けば金融市況も悪化し、不動産案件に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
それでは仮に景気及び金融環境が悪化した際に、国内ソーシャルレンディング市場がどのような姿となるのか、最良のケースと最悪のケースの2パターンを考えてみます。
最良のケース:市況悪化はソーシャルレンディング市場に影響なし
景気悪化および金融市況の悪化により、各ソーシャルレンディング案件で貸し倒れが発生するのは、やむを得ないでしょう。
個別での貸し倒れは発生したとしても、一部に留まるようなら事業者の経営が行き詰まるなどの影響は生じません。
ソーシャルレンディングの個別案件の内容を見れば、保証会社付きの案件、担保設定の案件等が多いため、融資先の返済が滞った場合でもある程度保全できるように工夫がなされています。
これまでは返済が滞ること自体が少なかったため、実際に担保を売却したケースはほとんどありません。
しかし不況期は、事業者が担保の処分などで返済原資を確保するケースも充分想像できます。
景気悪化で延滞などが発生すれば、事業者側には担保処分手続き開始の手間はかかります。
しかし危機対応が正常に機能すれば、投資家に対する損失はある程度は抑えられるのではないでしょうか。
よって個別案件で損失が発生するとは考えられますが、全体的に見ればソーシャルレンディング市場にとっては大きな影響は生じない可能性があります。
最悪のケース:多くの案件で返済が滞りソーシャルレンディング市場が縮小
景気の悪化によりソーシャルレンディングの融資先企業の状況も大きく悪化するようになれば、返済が滞り、中には貸し倒れするケースが出てくるかもしれません。
担保などでカバーできれば問題ありませんが、担保が事前の担保評価額の通り売却できるかどうかは分かりません。
多くのファンドで元本割れのファンドが発生すれば、事業者に対する投資家の信頼は今よりは薄くなるでしょう。その結果、ファンドの募集を行っても資金が集まらなくなり、市場が縮小するかもしれません。
上記の例はいずれも極端な例かもしれません。
しかし投資の世界では、少なくとも最悪の事態は常に想定するのがセオリーです。
最悪の事態を事前に想定しておけば、悪い事態が発生しても慌てることなく対処することができます。
いずれにしても、景気回復期に市場拡大を果たした国内のソーシャルレンディング市場。
今後到来するかもしれない気後退期に業界がどのようになるのかとの点は、まだ不明です。
まとめ
市場規模はまだ小さい頃だったものの、アメリカのソーシャルレンディングはサブプライムローンの崩壊やリーマン・ショックを乗り越え、現在の姿となっています。
日本においても多少の景気変動では、ソーシャルレンディング市場は影響が少ないかもしれません。反対に、それを契機に市場拡大に繋げられる可能性もあります。
一方で国内のソーシャルレンディング案件は不動産案件の多い状況でもあり、不動産市況が急激に悪化した際、どのような影響が生じるのかは不明です。
こういった点も踏まえ、リスクも考えながらソーシャルレンディング投資をしましょう。