ソーシャルレンディングと新興国・マイクロファイナンスの関係性・相性と今後について

ソーシャルレンディングと新興国・マイクロファイナンスの関係性・相性と今後について

途上国の貧困層に少額融資の支援を行うマイクロファイナンスは、ソーシャルレンディング事業者も案件として扱っていることがあります。

今回の記事ではマイクロファイナンスについての基礎的な内容を把握するとともに、ソーシャルレンディングとの関係について解説いたします。

そもそもマイクロファイナンスとは

マイクロファイナンスとは、貧困層に少額の融資を行う金融サービスを指します。
日々の資金繰りが大変な商店、次の季節の農作物の種子の購入代金ほか、貧困層の生活のため、また生活向上のため、途上国で利用されている金融サービスです。

マイクロファイナンスの金利は世界平均で20~40%となっており、日本から見れば比較的高い設定がされています。
しかしながら高金利にもかかわらず、途上国中心に多くの貧困層の方がマイクロファイナンスを利用しています。

資金回収に想像以上の手間がかかるマイクロファイナンスでは、当然貸し倒れも発生し、高金利ではありますがマイクロファイナンス事業者が暴利をとっている状態ではありません。
途上国では経済成長が著しいため金利水準が高くとも、経済成長により返済がされやすいという現状もあえいます。

金利水準が低い日本を中心とする先進国から見れば、マイクロファイナンスの高金利は魅力であり、コストを踏まえた実質的な利益は少なくなったとしても、十分採算に合うでしょう。
先進国から見れば、マイクロファイナンスは非常に魅力的な投資案件となります。

ソーシャルレンディングにマイクロファイナンス案件はあるのか

先進国の金利水準から見れば、コストを差引いた実質金利でも、充分に採算が合うケースが多くなるのがマイクロファイナンスとなります。
国内のソーシャルレンディングにおいては下記の事業者によってマイクロファイナンス案件の取扱いがあります。

  • クラウドクレジット-ペル→小口債務者支援ファンド(利回り10%前後)
  • クラウドバンク→カンボジアマイクロファイナンスプロジェクト(利回り5.0%)
  • SBIソーシャルレンディング→カンボジア技能実習生支援ローンファンド(利回り11.0%)

上記においてクラウドバンクは案件全体で利回りが6%前後であるため、5.0%の金利は同社の案件としては通常の利回り水準となります。
一方、クラウドクレジット及びSBIソーシャルレンディングのマイクロファイナンス案件は利回り約10%であり、高い利回り水準を誇る案件といえるでしょう。

ソーシャルレンディングとマイクロファイナンスの相性が良い理由

先進国の日本では融資業務=ファイナンス業務と言えば、銀行やノンバンクがイメージされます。
また低金利でマイナス金利まで導入の日本では、ファイナンス業務による利益は先ほどのマイクロファイナンスよりは大きくないと考えられます。

一方で先進国を除けば、銀行の貸出金利が数%以上の国は多く存在し、銀行以外にも高利貸し等の様々な資金の貸し手が存在しています。
また先進国と異なり、特に経済発展が著しい国では、いずれも慢性的な資金不足に陥ります。

途上国における貧困層は経済的には資金を必要としているものの、国の経済発展の過程において、必然的に資金が行き渡らない層も出てきてしまいます。
しかし彼ら・彼女らの商売自体は、個人主体で非常に利益率の高い商売であるケースも多く、少額の融資=資金がありさえすれば、生活できるばかりでなく生活に豊かさを取り入れられるケースもあります(特に経済発展途上国の場合)。

ソーシャルレンディングの資金の出し手は、主に先進国の投資家となりますが、先進国の投資家は日本同様低金利であることが多いでしょう。
一方マイクロファイナンスでは金利は高くとも、資金自体が不足しており融資できない場合もあります。

よって資金の需要と供給がマッチするため、ソーシャルレンディングとマイクロファイナスは相性のよい組み合わせなのです。

意外に低い貸し倒れ率

「金利の高いマイクロファイナンス」と聞くと高い貸し倒れ率なのではないかと思うかもしれません。
しかしMix Marketというマイクロファイナンス機関のデータによると、マイクロファイナンスの平均年間貸倒率は2.5%程です。

マイクロファイナンスは融資ノウハウおよび資金回収について、自ら融資先に足を運んで資金を回収するなど、比較的手間のかかる融資でしょう。
しかし貸し倒れ率の観点からは、ノウハウの確立がなされれば、イメージよりも成功率の高いビジネスなのではないでしょうか。

マイクロファイナンスは寄付型クラウドファンディングのように、どちらかと言えばボランティア・社会貢献の印象を抱く方も多いかもしれません。
しかし高い金利に低い貸し倒れ率を誇り、充分にビジネスとして成り立ちます。

ボランティアの場合は、支援者の事情でストップせざるを得ないケースも生じますが、マイクロファイナンスをビジネスとして展開することで、継続的に貧困層に対する支援を行うことが可能となります。

ソーシャルレンディングとマイクロファイナンスの今後

世界全体のGDPにおいて、既に先進国が占める比率より新興国・途上国の占める比率が高くなっており、世界的に見れば資金ニーズの高い地域が多くなっている現状があります。

そして世界ではいわゆる高利貸しが未だに多く存在しており、マイクロファインナンスの金利水準以上の金利での融資と回収が行われているところも少なくありません。

リスクに応じて適正な金利を徴収するのは先進国では当たり前ですが、途上国ではまだ高利貸し等が横行しているのが実態で、マイクロファイナンスはむしろ少数派です。

暴利な高利貸しに対し先進国から見れば高金利ではあるものの、現地から見れば決して高すぎる事のない金利で融資を行うのがマイクロファイナンスです。
マイクロファイナンスは通常の銀行や個人運営等の高利貸しとも違う、資金出し手の第3の存在として認知されつつあります。

「先進国から途上国の貧困層をマイクロファイナンスで支援する」という形は、高い金利収入を求める先進国の個人投資家と、日々の少額の資金を必要としている途上国の貧困層との間でwin-winの関係を構築することができるため、今後も発展の余地が大きいと考えます。

途上国の小口金融界の健全な発展を促すためにも、マイクロファイナンスの拡大は望まれます。
マイクロファイナンスの融資原資にソーシャルレンディングが利用される可能性はまだまだあるのではないでしょうか。