【利回りや借り手まで】ソーシャルレンディングと債券の違い

【利回りや借り手まで】ソーシャルレンディングと債券の違い

投資家が対象先に資金を貸し付ける点では類似の債券とソーシャルレンディングですが、両者は異なる特徴も複数あります。

ソーシャルレンディングのインターネット上での調達方法がほかの金融商品のそれと大きく異なるということを前提に、両者の違いについて5点取り上げ、両者に共通する一括返済のリスクについても解説しました。

債券とは

債券とは、国や地方自治体、企業等が投資家に対し利率や満期日を決めた上で、資金調達を目的として発行するものです。
債券を購入すると原則、投資家は定期的に決められた利子を受け取ることができます。そして満期日には投資元本を償還金として受け取れます。

投資家から見れば債券は満期日に投資元本が返済され、また投資期間中は利子収入を得ることができるため、安全性が高く継続収入も期待できる資産運用商品でしょう。

ソーシャルレンディングと債券の違い

投資家が対象先に資金を貸し付けるという構造は同じため、ソーシャルレンディングと債券には類似点もあります。
しかしながら、中身を詳しく見ると違いも多いことがわかります。

ソーシャルレンディングと債権の代表的な違いを下記に5点ピックアップいたしました。

なお、両者の募集形式の違い(インターネット上か否か)は前提としています。

1. 利回り

ソーシャルレンディングは比較的高い利回りを誇ります。実に2017年9月の平均利回りは8%超です。

債券の場合は、0.05%(個人向け国債)~数%の幅が一般的でしょう。利回りはソーシャルレンディングよりも低い水準です。

ただし債券は、国や上場会社と言った信用力のある発行体が発行するため、投資資金が返済されないリスクは比較的低いといえます。
両者の利回り差はリスクに応じて異なるとも捉えられます。

2. 途中売却の可否

ソーシャルレンディングでは、投資資金は償還がなされるまで返金されません。投資家が途中で返金の申し入れをお香なうことは原則不可能です。
よって投資した後は、償還日が到来するまで資金が固定化されます(分割返済の場合を除く)。

一方で債券の場合、途中売却が可能の場合も多くあります。
例えば、個人投資家に最も親しみのある個人向け国債は途中償還が可能です。
途中換金できない債券も存在していますが、ほとんどの場合で途中換金が認められていないソーシャルレンディングと比べると大きな違いでしょう。

ただし途中換金可能な債券の場合、途中で換金すると元本が保証されないこともあるので注意が必要です。

3. 情報開示

債券は発行する対象が国や自治体、上場会社となるため、豊富な情報開示がされます。投資家は開示された情報を元に投資判断を行うことができます。

一方でソーシャルレンディングにおいては、貸金業法に基づく行政当局の要請の関係で融資先について限定的な開示しかなされません。
募集ファンドの概要等の情報は開示はされますが、ファンドから融資を行う対象については限定的な情報開示となっています。

投資家の資金が何の審査もなく対象企業に融資されるわけではありませんが、投資家の側で投資検討の判断材料となる情報は限定的となります。

4. 借り手

ソーシャルレンディングの借り手は中小及び中堅企業の利用が多い状況です。

一方で債券の発行は、国や上場会社などの、より大きな組織が多いでしょう。
制度上は引受先が現れるのであれば、中小企業においても債券=社債の発行は可能ですが、銀行融資と比べると手間もかかるため、社債の発行は活発ではありません。

一般投資家を対象とする債券の発行の場合、数十億円~数百億円規模での資金調達が通常となるため、債券を発行できる対象は限られているのが実情です。

5. 調達側の手間

数十億円~数百億円規模の資金調達が目的とされる債券の発行は、金額の規模も大きいだけに手間もかかります。
例えば社債の場合、投資家に対する目論見書の作成、格付け機関からの格付けの取得、証券会社への対応などを要します。

一方のソーシャルレンディングでは、該当ビジネスやプロジェクトの成功は必要不可欠ですが、手間という観点では債券発行に比べると少ないでしょう。
比較的スピーディーな資金調達が可能です。

いずれもリスクが存在

ソーシャルレンディングと債券の違いを上記で取り上げましたが、両者の類似点として一括返済のリスクを取り上げたいと思います。

日本では社債のデフォルトは過去に発生しています。
社債は満期時に一括返済が求められるケースが多く、企業は満期日に社債で発行した資金を用意して投資家に返済する必要があります。
しかしながら業績悪化等で満期日に資金の手当てができない場合はデフォルトが発生する可能性があります。

またソーシャルレンディングの場合も期間満了時の一括返済案件は少なくありません。融資先企業側には同様のリスクが存在しています。
ソーシャルレンディングの案件は、〇〇1号、2号・・・、と1つのプロジェクトで複数回に渡り資金調達を行う事例もあります。

企業側としてはこれまでのソーシャルレンディング事業者とのやり取りの中でスピーディーに資金調達が行える利点があります。
ただし、いざ返済が困難になった際のリスクも認識しておくべきです。

まとめ

対象先に対しお金を貸す点では債券もソーシャルレンディングも同様です。
しかし、両者には前述の通り、複数の違いもあります。

それぞれの違いを認識した上で、両者とも一括返済のリスクが存在している点は投資家として認識すべきでしょう。

類似点のある債券とソーシャルレンディングの違いを理解することで、よりソーシャルレンディングへの理解を深めることができるのではないでしょうか。