ソーシャルレンディングに保険はあるのか?今後の展望まで

ソーシャルレンディングに保険はあるのか?今後の展望まで

実は購入型クラウドファンディングの世界には保険があります。
それではソーシャルレンディングに保険は存在するのでしょうか?

残念ながら、現在のソーシャルレンディング業界において保険は存在していません。
今回は購入型クラウドファンディングの保険の内容を見るとともに、今後のソーシャルレンディングにおける保険誕生の可能性について考えてみました。

ソーシャルレンディングに保険はない

ソーシャルレンディングは、リスクのある投資商品です。

もし融資の対象企業が倒産などした場合は、投資金返済の可能性が低くなりますが、そんな時にあれば便利と思うのが保険の存在。

保険料の支払いを行うことで、もしもの場合に投資額の何%が保証されれば・・・と考えることができます。

しかしながら、現状ソーシャルレンディング向けの保険は存在しません。

ソーシャルレンディングに類似の投資である社債等にも保険は無いため、ソーシャルレンディングの損失を保険でカバーすることは現状では不可能です。

ちなみにリーマンショックの前は、海外の保険会社が金融商品の保険を引き受けるようなビジネスを積極的に行っていました。しかし結果的にリーマンショックで大火傷を負ったという歴史的経緯もあります。

ソーシャルレンディングとは若干異なる内容ですが、金融の知識として知っておいて損はないでしょう。

購入型クラウドファンディングの保険はある

購入型クラウドファンディングでは保険が存在しています。
購入型クラウドファンディングのプラットフォーム運営大手の株式会社CAMPFIREは東京海上日動火災株式会社と連携して、資金調達に成功したすべてのプロジェクトの支援者を対象とした「クラウドファンディング保険」の提供を開始しています。

同保険はプロジェクトの実行者・支援者共に特別な費用を支払うことなくサポートを受ける事が可能です。

リターン(返礼品)の不履行といった不測の事態が発生した際に、支援金額の80%を上限に、東京海上日動が保険契約者であるCAMPFIREを通じ、支援者に対し保険料が支払われます。

CAMPFIREが保険契約者となり各プロジェクトの保険料を支払うことで、支援者のリスクを極力抑えることが可能になっている画期的な制度です。
クラウドファンディング支援者の不安解消に一役買っていることでしょう。

今後、ソーシャルレンディングに保険はできるのか?

ソーシャルレンディングは融資型クラウドファンディングとも言われるように、対象の企業等に融資を行うものです。

現状ではソーシャルレンディング向けの保険は存在していませんが、融資の際に担保を取るのと同様、保証会社を入れている案件も存在しています。
よって実際には保険に類似した仕組みが導入されている案件も存在しています。

しかしながら保険のように、ソーシャルレンディング投資家に資金が直接支払われる内容ではありません(最終的に投資家に資金が分配される形とはなりますが)。

将来的にソーシャルレンディング向けの保険が提供される可能性について考えると、「近い将来ではその可能性は低い」と個人的には考えています。

ソーシャルレンディングは金融商品に位置付けられています。
よってソーシャルレンディングに保険を掛けると言うことは、金融商品に保険を掛けると言うことに他なりません。

金融商品に対する保険となると、金融庁に対する折衝が必要となるため、導入のハードルは相当高いものになるでしょう。

可能性はゼロではない

保険の仕組みは端的に言って、普段は発生しない事故に対する支払いに備えて日常的に資金を広く薄く積み立てると言うものです。
現在のところ(2017年9月時点)、多くのソーシャルレンディング事業者で、これまではファンドの償還が問題なくなされてきています。

実績と言う面ではソーシャルレンディング業界自体が若いため、まだ実績自体が少ない状況です。
しかし今後年数を経過すれば、ソーシャルレンディング事業者及び業界全体の貸し倒れ率等の数字もより信頼できる数字が出てくるようになるのではないでしょうか。

ある意味で保険は確率の世界でもあり、保険会社が「事故発生率×支払保険料」<「受取保険料」と判断できれば、保険会社としては事業が成り立つと考えられます。 現在の日本のソーシャルレンディング業界は、景気の谷の時期を経験しておらず、大きな事故はそれ程発生していません。 しかしながらまだまだ金融商品としてのデータは不足しています。 よって今後ソーシャルレンディング事業者及び業界の歴史の積み上げの中で、「制度上の観点ではなく商売上の観点で、保険を引き受けても保険会社が採算に合う」と判断できるようになれば、将来的なソーシャルレンディング向けの保険提供の可能性はゼロではないと考えられます。 また購入型クラウドファンディングでCAMPFIREが「クラウドファンディング保険」を導入しており、将来的にはソーシャルレンディングの保険も創設される可能性はゼロではありません。 ただしCAMFIREの場合、対象となる(購入型)クラウドファンディングは金融商品との扱いではないため、ソーシャルレンディングと同等に扱うことができない点は留意する必要があります。

まとめ

保険は確率の世界でもあるので、現状のソーシャルレンディング業界は若い業界であり、まだ貸し倒れ率などのデータ不足の感は否めません。

ただし金融業界自体もフィンテックの時代を迎え、これまでには考えられなかった新しいサービスも生まれています。
そしてソーシャルレンディングも、フィンテックの一領域に位置付けられています。

よってこれまでは考えられなかったソーシャルレンディング向けの保険のような仕組みも、今後提供される可能性はあるでしょう。

フィンテック時代を迎えつつある中、ソーシャルレンディングもその周辺領域でどのような動きがあるのか、保険の出現も含め注目すべき部分と言えるのではないでしょうか。