
ソーシャルレンディングの借り手はどのような人、企業なのでしょうか。
今回の記事では、銀行に比べて金利が高いソーシャルレンディングによって調達を受ける借り手の背景などを解説するとともに、ソーシャルレンディングの借り手企業の各テーマ(事業)を取り上げました。
目次
ソーシャルレンディングの借り手の特徴
企業がお金を借りる場合、銀行から融資を受けるという選択肢が一般的と考えられるでしょう。
低金利が長期に渡り続いている日本では、企業が借り入れを行う際、銀行から低い貸出金利で借り入れを行うことは合理的といえます。
そんな中、直近数年間で認知が少しずつ広がってきているソーシャルレンディングから、資金調達を行う企業もあります。
ソーシャルレンディングによる資金調達の貸出金利は銀行と比べて高く、15%となる場合もあります。
それではソーシャルレンディングの借り手はどのような企業なのでしょうか。また、なぜ銀行から融資を受けないのでしょうか。
金利面だけに注目すると、「ソーシャルレンディングの借り手企業 = 銀行から資金の借り入れができない」と考えてしまうかもしれません。
しかし、以降説明している、借り手企業がソーシャルレンディングから借り入れを行う理由を見るとイメージが異なるかもしれません。
金額の大きさの柔軟性
ソーシャルレンディングは資金調達額が大きくなくとも検討できるため、比較的少額の資金調達をソーシャルレンディングで行う借り手企業があります。
銀行は貸出金利が低い分、収益を上げるためには借り手に対する貸出金額のボリュームが必要となります。
融資を行うには審査などの手間もかかるため、1000万円の融資を金利2%で行うより、100億円を金利0.5%で融資するほうが、銀行にとっては採算に合います。
ソーシャルレンディングから借り入れを行う企業の多くは、中小及び中堅企業となります。そして借り手企業側としては比較的小口の融資金を調達したいというニーズもあります。
例えばソーシャルレンディングにて多く融資を行っている不動産事業者は、物件のプロジェクト毎に資金調達を行うケースが多いため、特にその傾向が強くなります。
たしかに大口の融資を低金利で受けられる銀行融資にメリットはありますが、借り手企業によっては口の資金を軌道的に調達したい場合は銀行が必ずしも合うとは言い切れないでしょう。
資金調達までのスパンの早さ
銀行からの融資を受ける際は事業計画の作成はもとより、決算書の提出や担当者への説明ほか、様々な手続きが必要となります。銀行融資は決済を取るまで非常に時間がかかる資金調達となります。
一方でソーシャルレンディングでは事業計画書他の書類提出は必要かつ返済蓋然性は厳しく審査されものの、決済までスピードは銀行と比べると早いといえます。
不動産系の借り手企業の場合、不動産を仕入れる際に早期に資金を調達したいというケースもあります。
このように資金が必要になってから調達完了までの早さを重視する場合は、ソーシャルレンディングの借り手企業となるメリットがあります。
審査の柔軟性
銀行が融資を行う対象は企業となります。
企業を対象とした場合、中小・中堅企業の場合、自己資本の関係他から融資を受けられる金額に限度が生じます。
どんなに優良なプロジェクトに対する資金需要であっても、借り手企業の審査の柔軟性には限界があります。
ソーシャルレンディングも基本的には企業に融資を行いますが、見ている対象は企業そのものは当然ながら、融資の対象となるプロジェクトも重視しています。
融資期間が1年程度の案件が多いソーシャルレンディングにとっては、企業に融資するというよりも、プロジェクトに融資する、との色合いが強くなります。
明確な審査内容は不明であるものの、企業の過去実績だけではなく、プロジェクトから見込まれる返済蓋然性も含め、借り手企業が審査されます。
不動産案件に限らず、ソーシャルレンディングの融資は銀行融資と比べると審査基準に柔軟性が期待できます。
もちろん借り手企業が資金を返済できるかという部分は厳しくみられるものの、こうした柔軟性を求める借り手企業にはソーシャルレンディングによる資金調達も考慮の一つとなるでしょう。
各テーマ毎の借り手について
日本においてソーシャルレンディングから借入れを行っている代表的な業界とその借り手について下記に取り上げました。
不動産と再生エネルギー案件が多くの比率を占めていますが、通常の事業会社が借り手として事業性融資を受けているケースや海外のケースもあります。
不動産テーマの借り手
ソーシャルレンディングでは不動産ファンドが多くみられますが、その借り手は一般的な不動産会社からビルの開発、不動産ファンドのような会社まで様々です。
再生可能エネルギーテーマの借り手
不動産に次いで多いのが再生可能エネルギー関連の借り手です。
その多くは太陽光発電関連の企業ですが、太陽光発電の設備が担保となるケース、売電収入が担保となるケースなど様々です。
しかし発電が始まれば電力会社に対する売電収入が見込みやすいため、ソーシャルレンディング事業者にとって親和性の高い業界ともいえます。
事業性資金テーマの借り手
通常の事業会社を借り手とする融資もあります。
海外テーマの借り手
海外案件を中心に取扱うソーシャルレンディング事業者もあります(クラウドクレジットなど)。
日本の事業者が直接海外の企業への融資を仲介するというより、現地のパートナーと共同でソーシャルレンディング事業を行っているケースが見られます。
また一口に海外案件と言っても、事業者向け融資案件から個人ローン案件まで様々な種類があります。
まとめ
「低金利の日本でなぜソーシャルレンディングのような金利の高い先から借り手企業は資金調達するのか?」と、素朴な疑問が生じるのは当然と言えます。
融資と言う観点では銀行融資は本流中の本流ですが、銀行が対応しきれない資金ニーズは多くあります。
上限貸出金利が引き下げられて以降、ノンバンクの数は現象の一途をたどり、ソーシャルレンディングはそのニーズを補う役割も果たしています。
その意味では、現状は銀行とソーシャルレンディングは住み分けが出来ています。
今後も銀行が対応しきれない融資に対するソリューションとして、ソーシャルレンディングの活躍の場は存在を続けるのではないでしょうか。