日本ではまだ始まったばかりの株式投資型クラウドファンディング。購入型や融資型(ソーシャルレンディング)とは違い、非上場企業の株式を取得できることが大きな特徴です。
今回はこの株式投資型クラウドファンディングについて、徹底解説します。
目次
株式投資型クラウドファンディングとは?
購入型クラウドファンディングでは、リターンとしてモノ・サービス、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)では、リターンとして金利を得られますが、株式投資型クラウドファンディングはリターンとして非上場企業の株式を取得できる仕組みです。
海外ではすでに株式投資型クラウドファンディングが始まっていましたが、日本は法律や協会の規制があり、株式投資型クラウドファンディングのサービスを運営することができませんでした。
しかし、2015年5月に金融商品取引法の一部が改正されたことによって、日本でも株式投資型クラウドファンディングが運営できる環境になり、2017年以降に国内初の株式投資型クラウドファンディングのサービスが始まったという経緯があります。
【クラウドファンディングついて詳しく知りたい方はこちら】
・クラウドファンディングとは|種類や歴史、メリット・デメリットまで
株式投資型クラウドファンディングのメリット
未上場企業の株式に投資できる
これまで個人が非上場企業の株に投資できる機会は限られていました。しかし、この株式投資型クラウドファンディングの登場により、インターネットを通じて個人が少額でも非上場企業の株式に投資できるようになりました。
グリーンシートといった似た制度も存在していますが、マザーズ市場や上場基準が緩和されたことを受け、活用する企業が少なく、2018年3月で廃止されることになっています。
ベンチャー企業をスタート当初から応援できる
応援の仕方もさまざまありますが、ベンチャー企業に投資して応援していく機会は多くなく、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルがその役割を担っていました。
しかしこの株式投資型クラウドファンディングで個人に少額で投資できる環境が開放されることで、企業・サービスの初期段階から応援でき、かつ将来的にリターンとして売却益を得る可能性ができるというメリットがあります。
エンジェル税制の優遇を受けられる
エンジェル税制は、投資家がベンチャー企業の株式に投資や売却した時点について、税金の優遇措置を受けることができる制度です。具体的には、総所得金額や株式譲渡益から控除されます。
設立年数や財務要件など一定の条件を満たしている必要があるため、全てのベンチャー企業に適用されるわけではありません。しかし、こうした税優遇制度があることで、ベンチャー企業に投資するという選択も増えるため、投資家には大きなメリットになるのではないでしょうか。
株式投資型クラウドファンディングのデメリット
IPOやM&Aにならない限り自由に売却できない
株式投資型クラウドファンディングを通じて取得した非上場企業の株式は、自由に売ることができません。通常の株式投資であれば、上場企業の株のため証券会社を通じて、市場へ売りに出すことが出来ます。
IPOやM&Aといった出口がない限りは、取得した非上場企業の株式は自由に売却できないことに注意しておきましょう。※売却しようとしても譲渡制限が付されていることがあり、仮に株式を譲渡する場合は株主総会の承認を受ける必要があるなど、多くの手続きが必要になります。
金額に制限がある
資金調達をしたい企業は年間に1億円未満、また投資家は1社に対する年間投資金額が50万円までといったルールが設けられています。
1億円を超えると有価証券届出書の提出が必要になることや投資家保護の観点などを考慮して設計されています。これはアメリカやイギリスなども金額に違いはあれど同じようなルールとなっています。
まだ日本では株式投資型で実績がない
まだ国内でも始まったばかりの株式投資型クラウドファンディング。国内株式投資型第一号のBank Invoice株式会社のプロジェクトでもIPOは2022年以降の計画になっており、株式投資型クラウドファンディングで資金調達した企業がどのような結果になるのかはいまだ不透明です。
ただアメリカやイギリスでは、すでに株式投資型クラウドファンディングで資金調達後にM&Aされた企業もあり、今後の日本でもこうした事例が出始めてくるでしょう。
他の種類のクラウドファンディングと比較
株式投資型クラウドファンディングと他の種類のクラウドファンディングをリターンで比較してみました。
寄付型 | 購入型 | 融資型 | ファンド投資型 | 株式投資型 | |
---|---|---|---|---|---|
リターン | なし | モノ・サービス | 金利 | 分配金 | 株式 |
寄付型は特にリターンがありません。購入型はモノ・サービスといった形で金銭以外のリターンが設定されています。
融資型(ソーシャルレンディング)は、投資した金額にプラスした金利がリターンとなっています。ファンド投資型は分配金という形で投資した案件の収益の一部をリターンとして受け取ります。
株式投資型では株式を受け取ることになるため、その特性から現金化が難しい側面を持っています。しかしながら、IPOやM&Aで大きなリターンになる可能性もあります。
リターンで比較してみると、株式投資型は将来大きなリターンが出る可能性はありますが、これに応じてリスクも高いため、入念に確認した上で投資するほうがよいでしょう。
株式投資型クラウドファンディングサイトまとめ
FUNDINNO
2017年4月リリースされた国内初の株式投資型クラウドファンディングサイトです。運営元の株式会社日本クラウドキャピタルは、国内初の第一種少額電子募集取扱業者として2016年10月に登録承認を受けています。
2017年7月には総額1億1,580万100円の資金調達を実施。またプロジェクトでは計4社が資金調達を行っており、出版やファッション、Fintechなどさまざまなジャンルの企業が株式投資型クラウドファンディングを利用しているようです。(2017年8月時点)※1
GoAngel(ご縁ジェル)
DANベンチャーキャピタル株式会社が2017年7月に第一種少額電子募集取扱業者の登録承認を受けて、9月1日より業務をスタートしました。
同社はグリーンシート制度を使って140社を超える非上場会社の株式の募集を取り扱った実績を持っています。すでに多くの企業がエントリーをしており、毎月2〜3社の募集取扱を予定しています。
エメラダ・エクイティ
国内で3番目の株式投資型クラウドファンディングを開始したエメラダ株式会社のサービスです。
掲載される案件の審査基準として、すでにベンチャーキャピタルやエンジェル投資家が投資をしている企業という条件があります。これによって、ある程度の目利きがされた案件に投資することが可能になり、個人投資家が未上場企業へ投資するという選択肢が広がります。
その他に特徴的なものとして、エメラダ型新株予約権があります。これは行使期間が10年以内であるものの、割り当てられる株式数や行使時に支払う金額など一般的な新株予約権とは異なる仕組みになっており、エメラダ・エクイティならではといえるでしょう。
【エメラダ澤村社長のインタビュー記事はこちら】
・「未上場企業への投資機会を」ーーエメラダ澤村社長インタビュー