【違いを解説】融資型クラウドファンディングと株式型クラウドファンディングを比較

【違いを解説】融資型クラウドファンディングと株式型クラウドファンディングを比較

日本でようやく知名度を獲得しつつある融資型クラウドファンディング = ソーシャルレンディングの一方、株式型クラウドファンディングも日本で活動がスタートしています。

投資家から見ると、「企業に資金を提供し資金的な見返りを求める」共通の側面を有するソーシャルレンディングと株式型クラウドファンディング。
しかし、両者には大きな違いがみられます。

今回は、融資型クラウドファンディング = ソーシャルレンディングと株式型クラウドファンディングの違いについてご説明します。

ソーシャルレンディングと株式型クラウドファンディングは全く別物

相応に認知が進み始めているソーシャルレンディングですが、まだまだその内容について深く知られている訳ではありません。

融資型クラウドファンディングは一般的にはソーシャルレンディングという名称が使用されていますが、購入型クラウドファンディングとは別物です。

資金提供者(投資家)に対しモノやサービスを対価として渡す購入型クラウドファンディングは「資産運用」としての側面はありません。
一方ソーシャルレンディングは、出資したお金に利息が付いて返済されるので資産運用 = 投資商品として考えられます。

このように、ソーシャルレンディングは資産運用を行えるクラウドファンディングの1形式です。

一方、株式型クラウドファンディングも資産運用の側面を有するクルドファンディングです。
この株式型クラウドファンディングと、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)を混同している方が、案外多いように感じます。

資金需要者への資金提供方法が異なる

会社が投資家を募って資金ニーズのある先に資金を提供しま

クラウドファンディングでは、運営会社が投資家を募って資金ニーズのある先に資金を提供します。
この流れは寄付型・購入型・融資型・株式型のいずれにおいても変わりはありません。

ただし寄付型のクラウドファンディングを除くと、投資家は下記のような資金提供の見返りを求めます。

・購入型:資金を利用して完成された成果物のモノやサービス(ex.農産物)

・融資型:融資元本の返済及び金利

・投資型:株式

上記の中で投資家にとって資金回収の可能性がもっとも高いのは融資型クラウドファンディングとなります。

クラウドファンディング運営会社が投資家から集めた資金で融資(貸付)を行います。
返済及び分配の期限が到来すれば元本+金利分を借り手企業が払いますが、そのうち数パーセントを分配金として投資家に分配します。

一方の株式型クラウドファンディングにおいて投資家が受け取るのは、「資金提供先企業の株式」です。

例えば、経営的に苦しい会社が株式型クラウドファンディングで資金調達を行った場合、その苦しい会社の株式を受け取った投資家は、倒産等の最悪の場合は投資元本がゼロになる可能性もあります。
企業の倒産は極端な例ではありますが、投資先の企業の業績が投資後もよくも悪くもならない場合、投資家は投資資金の回収が非常に難しくなります。

後述しますがM&AやIPO(株式上場)によって株式を前向きに売却できる機会があればよいものの、そういった機会が無い場合、原則的に償還期限などが無いため、投資家は永遠に投資先の株式を保有する可能性もあります。

よって融資型クラウドファンディングと比べると、株式型クラウドファンディングは投資家の資金回収のハードルが高いといえるでしょう。

リスクはあるがハイリターンの可能性もある株式型クラウドファンディング

融資型クラウドファンディングと株式型クラウドファンディングの違い

融資型のように融資資金の返済という形で投資家の資金回収手段が確立できない株式型クラウドファンディング。

株式型クラウドファンディング運営会社及び資金の受け手となる企業も、当然投資家に対して報いる手段を考えています。

その代表的なものが、「IPO(株式上場)」と「M&Aによる企業売却」です。

株式型クラウドファンディングを用いて資金調達を行う企業は、会社設立後、間もないベンチャー企業が想定されます。

仮に投資家が株式を1株50,000円で購入した企業が、その後に成長を遂げIPOにまで至った結果として500,000円の株価で株式市場に上場すれば、投資家は多大なキャピタルゲイン(株式売却益)を得ることができます。

もちろん上場時の株価は株式市場が決定するので、最終的には上場するまでどの程度の株価になるかは分かりません。
それでも企業成長の初期段階で株式を取得することができる株式型クラウドファンディングの投資家は、IPO時に大きなキャピタルゲインが得られる可能性があります。

また、M&Aによって投資先企業が大手企業等に買収された場合も、高い株価で株式を売却する機会を手にする可能性があります。

投資先企業の株価がいくらで売却できるかという点は投資段階では分かりませんが、投資先企業が事業拡大を成功させれば、株式の評価 = 株価は基本的には上昇するでしょう。
このような理由で融資型以上に利益を得られる可能性を有しているのが株式型クラウドファンディングです。

ここまでをまとめると、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)は投資家に対して元本 + 金利の返済を前提しているのに対し、株式型クラウドファンディングは元本返済の保証や約束は原則ありません。

その代わりに、投資金額を大きく上回る回収の可能性があります。

まだ日本では数少ない株式型クラウドファンディング

融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)については、多くのソーシャルレンディング事業者が見られます。

一方の株式型クラウドファンディングはまだ数が少ない状態です。

代表的なサービスとしては、まず「FUNDINNO(ファンディーノ)」があります。同サービスは2017年5月に初案件の募集が行われました。株式会社日本クラウドキャピタルが運営しています。

同社は2017年5月に「FUNDINNO」にてFinTech関連業務を手掛けるBank Invoice社の5百万円の資金調達を成功させています。

資金調達を行った企業の事業成果はまだ出ていませんが、今後も「FUNDINNO」では継続的に投資先の募集を行う計画とされています。

また、エメラダ・エクイティというサービスも代表的な株式型クラウドファンディングサービスとして挙げられるでしょう。

同サービスの活動は業界でも注目を浴びていますし、今後の同社の活躍次第で日本の株式型クラウドファンディング発展も大きく変わっていくかもしれません。

また、融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)には、上場企業であるロードスターキャピタルが運営するオーナーズブックや、比較的早期から業界に参入しており、多様なテーマの案件を提供しているクラウドバンクなどがあげられます。

ベンチャーキャピタルと株式型クラウドファンディングの違い

ベンチャーキャピタルと株式型クラウド

設立間もないベンチャー企業に投資を行う金融機関として、ベンチャーキャピタル(VC)があります。
日本でも最大手のジャフコ<東証1部8595>を始め金融系から独立系まで多くのVCがみられます。

VCの多くは機関投資家及び親会社といった法人から大口の資金を集めてファンドを組成して、ベンチャー投資を行っています。
VCファンドへの出資は1億円以上など大口の資金が必要となるため、個人投資家がVCファンドに出資する道はほとんど閉ざされています。

一方の株式型クラウドファンディングは、投資家が直接企業の株式を保有する形かつ法規制もあり、投資家一人当たりの投資上限が50万円までと定められています。
個人投資家も小口でベンチャー投資に参加することができるのです。

株式型クラウドファンディングは、個人投資家がベンチャー投資に参加のためのハードルを下げる役割が期待されている側面もあります。

株式型クラウドファンディングを資産運用の中心と考えるのはリスクが高い

日本においてソーシャルレンディング業界は、おおむね大きなトラブルなく資金調達、資金返済のサイクルが行われており、投資家に対して比較的高い利回りを提供してきた実績があります。

一方、株式型クラウドファンディングにおいてはまさにこれからがスタートという状態です。

よって投資資金の確保が約束されていない株式型クラウドファンディングを投資の中心に据えるのはリスクが高いでしょう。
あくまでポートフォリオの一環で全体の投資資金の一部を充当するというスタンスがよいのではないでしょうか。

まとめ

ソーシャルレンディングは日本でも認知が進みつつありますが、まだ株式型クラウドファンディングは事業者が少ないこともあり認知が進んでいません。
そんな背景もあり、両者の違いについて理解があまり進んでいない現状もあります。

今後、日本でも株式型クラウドファンディングの拡大を予想する声がありますが、投資家もソーシャルレンディングとの違いを踏まえた上での投資判断が必要とされます。