ソーシャルレンディングの投資判断を鈍らせる心理とは?理性的な判断のために気をつけたいポイント

ソーシャルレンディングの投資判断を鈍らせる心理とは?理性的な判断のために気をつけたいポイント

こんにちは。中田健介です。
前回の記事で期待値の考え方について説明しました。

しかし、実際に投資を行う際は理性に従えず、不利な選択をしてしまうこともあります。

例えば、以下の条件の元、コイン投げのギャンブルを行えるとしたら、あなたはどうしますか。

  • 表が出たら150ドルもらえる
  • 裏がでたら100ドル支払う

このギャンブルの期待値はプラス25ドルなので、当然やる方が有利です。
しかし、実際には多くの人がこのギャンブルに乗らないという選択をするそうです。

なぜ不利であるにも関わらず多くの人がこのギャンブルに乗らないほうを選択してしまうのでしょうか。
それには、人間の心理の癖(バイアス)が関係しています。

損失回避性とは

ノーベル経済学賞を受賞した認知心理学者のダニエル・カーネマンは、「たいていの人にとって、100ドル損をする恐怖感は、150ドル得をする期待感よりも強い」ことを調査を通じて確認し、この「損失は利得より強く感じられる」という人間の心理を「損失回避性」と名付けました。

このギャンブルの例でいうと、多くの人の場合「表が出た場合にいくらもらえるならこのギャンブルに乗ってもよいか」という質問に対する答えは約200ドルだそうです。
もちろんこの損失回避性の強さには個人差があります。
また、掛ける金額が多くなるほど損失回避傾向が強まることや、利益を得る場合も損失を被る場合もあるギャンブルにおいては、リスク回避的な選択が行われがちであることなどが確認されています。

損失を回避したいという心理が不利な判断を招き、結果的には利益を逃していることになります。

ソーシャルレンディング投資を恐いと感じる心理とは

ソーシャルレンディング投資も、利得(予定通り返済される)と損失(デフォルト)の両方の結果があります。

前回の期待値に関する記事でも述べましたが、仮に利回りを8%(年利)、デフォルト発生率を1%とすると、ソーシャルレンディングに100万円投資した場合、
・デフォルトが起きなかった場合⇒8万円の利益
・デフォルトが起きた場合    ⇒100万円の損失
となります。

期待値は69,200円となるので、上記の条件のもとでは有利な投資であると考えられます。

しかし、投資額が多く、結果に利得と損失もありうるため、損失回避の心理が働き、ソーシャルレンディングが恐いものであると感じられる人も多くいます。

私は、これがソーシャルレンディング投資をためらう人が多い理由の一つではないかと考えています。

「1%」という確率の小ささはイメージしにくいのに対し、「100万円を失った時のショック」はリアルにイメージしやすいということも影響しているかもしれません。

ソーシャルレンディング投資の損失回避性を乗り越え、冷静に判断するには

ソーシャルレンディング投資において、損失回避の心理を乗り越え、常に冷静な判断を下すことは難しいことです(他の投資でも同様)。
しかし、以下の対策を取ることで、ある程度理性的な投資判断を行うようにできるかもしれません。

期待値を計算する習慣をつける

ソーシャルレンディングは比較的期待値を計算しやすい投資商品です。
利回りや過去のデフォルト発生率といった、期待値の計算に必要な情報もネット上で調べれば入手できます。

主観的なイメージだけに基づいて判断するのではなく、まずは期待値を計算し、それが有利な投資であるかどうかを数字の上で確認することも大切です。

1回あたりの投資金額を少なくする

「掛ける金額が多くなるほど損失回避傾向が強まる」ということは、1回あたりの投資金額を少なくすればそれだけ損失回避的な傾向は抑えられるということになります。

先ほどの例では1回の投資金額を100万円と仮定しましたが、この金額が5万円であればどうでしょうか。
損失額のイメージが少なくなる分、投資への恐れも軽減されるかもしれません。
実際に投資額の集中を避けることは、損失額を軽減するために有効な対策です。

ソーシャルレンディング投資は少額から投資できるので、自分にとって無理のない金額からはじめられます。

万が一投資資金が返ってこなくてもあきらめがつく程度の金額であれば、損失回避性に影響されず冷静な判断が下せるでしょう。

投資方針に従って判断する

目の前に期待利回りの高いファンドが現れるとつい投資してみたくなるものです。
しかし、本来であれば、ソーシャルレンディング投資は担保状況や事業者など様々な要素を加味する必要があります。

こうした際に理性的な判断を下すためには、事前に投資方針を持っていることが大切です。
1ファンドあたりの投資金額や、対象の利回り・期間・担保有無などについて、事前に方針を決めておき、実際に投資する際にはその方針に沿って投資する方法です。
例えば、「1ファンドあたりの投資金額は50万円以内」「期間12ヶ月以内のファンドにだけ投資する」といった方針が考えられます。

こうすることで感情に左右されづらい投資が行いやすくなります。

まとめ

日常生活においては、物事を感情や好き嫌いで判断することも多いかもしれません。
しかし、投資を行う上では感情的な判断は禁物です。

常に合理的に物事を判断できる人が最終的には利益を得られるでしょう。
今回紹介した損失回避性をはじめとする人間の心理の癖を知ることで、資産形成の役に立てていただければと思います。

<参考文献>
「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」ダニエル・カーネマン著 早川書房