【共存できる理由】ソーシャルレンディングと銀行はライバル?借り手から見た違いも解説

【共存できる理由】ソーシャルレンディングと銀行はライバル?借り手から見た違いも解説

企業等に融資を行うという観点では、ソーシャルレンディングと銀行はライバル関係に当たると思えるかもしれません。
しかし、企業等に融資すると言っても、ソーシャルレンディングと銀行は大きな違いが見られます。

今回は現状の日本のソーシャルレンディングと銀行の違いを、借り手からの視点も踏まえて解説致しました。

ソーシャルレンディングと銀行はライバルなのか

現状、日本において、銀行から見てソーシャルレンディングはライバルとは言えません。

規模の違い

まずソーシャルレンディングと銀行における規模の差が挙げられます。
信用金庫でも1000億円を越す資産規模が多い銀行業界の一方、ソーシャルレンディング業界は最大手のmaneoでも成立ローン総額約780億円(17年7月27日時点)。
資産規模で比べると大きな隔たりがあります。

上記からソーシャルレンディングと銀行のライバル関係は成立しないと考えられます。

融資対象が違う

ソーシャルレンディングはプロジェクトに対する融資が中心、という点から銀行とソーシャルレンディングは差異があります。

銀行の融資は企業に対して行われるのが大原則です。
一方、ソーシャルレンディングは企業に融資するものの、企業が行うプロジェクトに融資する、という性格が強くなります。
例えば購入型クラウドファンディングの場合、Aと言うプロジェクトを行うので出資を募ります、という形で出資の募集が行われますが、クラウドファンディングの一種であるソーシャルレンディングもこの性格が強いといえます。

今後、ソーシャルレンディング市場が更なる拡大を見せれば、より企業そのものに対する融資の傾向が強くなる可能性ももちろんありますが、現状としては、ソーシャルレンディングと銀行はライバル関係とはなり辛いでしょう。

ビジネスモデルの違い

ソーシャルレンディングと銀行はライバル?借り手から見た違いも解説

 ソーシャルレンディングと銀行では、そのビジネスモデルが大きく異なります。
 
意外に知られていない、ソーシャルレンディングと銀行のビジネスモデルの違いを改めて整理しましょう。

ソーシャルレンディングのビジネスモデル

 ソーシャルレンディングでは運営会社はファンド運営会社としての性質を有しています。

  1. ソーシャルレンディングファンドを組成する
  2. 出資者を募る
  3. ファンドを運営して手数料をもらう
  4. 期限が来たらファンドを償還(資金を回収)して出資者に元本に金利を付けて返済

上記がソーシャルレンディング運営会社のビジネスの流れとなります。

運営会社の収益源はファンドから得られる手数料です。手数料はファンドによって様々ですが年間ファンド総額の数%が通常です。

そして仮にファンドで損失が発生しても、運営会社としての損失は発生しません。

ただし損失が続いたり、損失発生時の投資家対応がおざなりになれば、そのソーシャルレンディング事業者は投資家からの信頼を失います。
結果的には、継続的なファンド募集に支障をきたし、最悪の場合、ファンドを組成しても資金が集まらないという事態に陥ります。

ファンド組成が出来なければ、そもそも事業の継続自体が困難になってしまいます。

ソーシャルレンディング運営会社は、自らファンドに資金を出していないので会社自身はリスクを取っていませんが、投資家からの信頼をベースに事業を運営していると言えるでしょう。

銀行のビジネスモデル

一方、銀行の基本的なビジネスモデルは、預金者から元本保証で資金を預かり、その資金を企業に融資して金利を稼ぐというものです。
※代表的な例を取り上げています

銀行は預金者から借金をしてその資金で企業に融資をしている構造のため、融資先に対するリスクは銀行がほぼ100%背負っています。
融資先が破綻すれば、銀行は自腹を切って預金者に資金を返済する必要があります。

その代わり、預金者に対する支払い金利と融資先からの受け取り金利の差分(スプレッド)は全て銀行が受け取ることができます。

銀行がこのビジネスモデルを維持するには、金利が高くとも手間のかかる100~1000万円単位の小口の融資を積み上げるのではなく、金利は低くともリスクの少ない企業に大きな額を融資するほうが合理的な考えとなります。

つまり、銀行が積極的に融資をする対象と、ソーシャルレンディング事業者が積極的に融資する対象は異なります。
このことからも銀行とソーシャルレンディング事業者がライバルになりづらい理由が伺えます。

借り手から見たメリット・デメリット

ソーシャルレンディングと銀行はライバル?借り手から見た違いも解説

それでは資金の借り手から見た時、ソーシャルレンディングと銀行にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

ソーシャルレンディングのメリットとデメリット

借り手企業がソーシャルレンディングで資金を借りるメリットは大きく分けて下記4点と考えられます。

  1. 少額でも比較的融資が受けやすい
  2. 柔軟な審査が可能
  3. 審査が早い

ソーシャルレンディングは比較的少額でも融資が受けやすいことが特徴です。
貸出金利が高くとも、できるだけ迅速で少額融資(1000万円ほど)を受けたい企業は多く存在するでしょう。

ソーシャルレンディングは借り手企業が本当に返済可能なのかという点は厳密に審査します。
しかしながら必ずしも前期が赤字であっても融資を受けられないというわけではありません。
融資審査は厳密な一方、杓子定規な審査を行わないため、本質的な融資金返済の蓋然性が重視されます。
※銀行よりも融資を受けやすいという意味ではありません

大手の銀行と比べ、ソーシャルレンディング事業者は比較的少人数で運営されています。
意思決定は非常にスピーディーに行われるため、銀行融資に比べると機動的な資金対応が可能です。

一方でデメリットとして、金利が高いという点が上げられます。

ソーシャルレンディングで投資家が受け取る利回りは日本では概ね5~10%ほどです。
当然その利回りは貸出金利といって、借り手企業をが負担する必要があります。

以上のことから、ソーシャルレンディングの融資は柔軟性を持っており、少額から融資が可能だが金利が高いと表現することができます。

銀行のメリットとデメリット

ソーシャルレンディングと比べると、銀行から受ける融資のメリットは金利が安く、大口融資が歓迎されやすいという点にが挙げられます。

貸出金利は銀行や企業の内容によるものの、日銀がマイナス金利を導入している現在、企業は歴史的な低金利で銀行から融資を受けられる環境にあります。
また、前述の通り、ソーシャルレンディングでは大口の融資を受けやすい傾向にあります。審査の上、融資可能と判断されれば、金利も安く大口の融資を受けることが可能なのです。

 一方、デメリットは下記3点です。

  1. 過去の実績が重要視される
  2. 審査に時間がかかる
  3. 大量の書類を要求される

銀行は過去に不良債権を多く抱えた経験から、融資金の返済可能性を厳密に審査します。
直近の決算書などは注意深く見られることは、企業によってはデメリットとなるかもしれません。

銀行融資は、ソーシャルレンディングと比べ、手間はかかるが金利は安く大口の融資ができます。

まとめ

長い歴史を持つ銀行業に比べれば、ソーシャルレンディングはまだほんの産まれたばかり。
ソーシャルレンディングと銀行の比較を借り手の視点も交えて行うことで、両者の違いがより鮮明に理解できたのではないでしょうか。

欧米、そして日本においてもソーシャルレンディング市場は着実に拡大しています。
昨今よく耳にするフィンテックという言葉とともに今後益々ソーシャルレンディング市場の拡大が期待されています。
そんな中、ソーシャルレンディングは将来的には銀行とライバル関係になっていくのでしょうか。
将来的なソーシャルレンディングと銀行の関係にも注目したいですね。