ソーシャルレンディングはフィンテックの中核?フィンテック領域における位置づけとは

ソーシャルレンディングはフィンテックの中核?フィンテック領域における位置づけとは

昨今、フィンテックという言葉をメディアで見聞きする機会が増えています。

今や株式市場では“フィンテック銘柄”という言葉が生まれるほど、ブームの兆しのあるフィンテック。ソーシャルレンディングもフィンテック分野の事業ですが、その事実はまだ日本ではあまり知られていないのではないでしょうか。

今回はフィンテック分野における日本のソーシャルレンディングの位置付けについて考えてみました。

フィンテックとは?

フィンテックとは、ファイナンス(finance)とテクノロジー(technology)から作られた造語です。数年前から欧米では聞かれるようになった言葉ですが、日本でよく耳にするようになったのはここ数年でしょう。

フィンテックとは読んで字のごとく、お金周りのテクノロジーを意味します。

金融機関をはじめとしてこれまで規制があり旧態依然としているお金周りの仕組みを、インターネットを中心とするIT技術を利用して、ユーザーにとって便利になおかつ利益のあるものにするというのがその根本的な考え方です。

株式取引の世界は、2000年代初頭に対面型証券会社からネット証券に大きく取引の中心が変わりましたが、金融含めお金周りの世界はこれまでの慣行や規制が根強く残り、それほどIT化されていない分野といえるでしょう。

フィンテックと呼ばれる分野

フィンテック分野で注目を集めているというと、まず最初に思い浮かぶのはビットコインを始めとする仮想通貨ではないでしょうか。

たしかに仮想通貨もフィンテック領域のサービスですが、フィンテックといってもさまざまな分野のサービスがあります。
フィンテックの分野は主に4つの領域に分かれています。

  • 決済:電子マネー、スマホーフォン決済など
  • 融資:ソーシャルレンディングなど
  • 投資・運用:ロボアドバイザーなど
  • 仮想通貨:ビットコインなど

参考:フィンテックに関する現状と金融庁における取組み

それぞれ密接に連携している部分があるため、上記の各分野を横断するサービスも多く存在しています。

ソーシャルレンディングは投資家の資金の出し手から見れば投資・資産運用となり、お金の受け手(借り手)から見れば融資となります。ビットコインを始めとする仮想通貨は決済手段だけでなく投資の対象とも捉えられます。

フィンテックがもたらす未来

各サービスの目的を大きく分けると、以下の3点になると考えます。

  • お金を増やす(投資)
  • 利便性が高い決済
  • 融資の効率化

これらの3点を最新のIT技術を駆使して、ユーザーの資産を増やしたり、お金周りの利便性向上をはかったりすることがフィンテックの使命といえるのではないでしょうか。

例えば投資商品を手動で選択していたものをロボットが自動で投資してくれるようになったり、現金でいつも会計していたのがスマホをかざすだけで決済ができたりと、お金に関するさまざまなことが便利になってきているのはこうしたフィンテックのサービスが増えてきているからだと考えられます。

ソーシャルレンディングはフィンテック?

フィンテックの領域において、融資の領域にソーシャルレンディングを挙げましたが、本当にソーシャルレンディングはフィンテックに定義できるのでしょうか。

日本のソーシャルレンディングの特徴

改めてソーシャルレンディングについて詳しくみていくと、

  • お金を借りたい企業とお金を増やしたい人をマッチング
  • インターネットを活用して個人が小口できるようにした
  • 財務的に健全でも銀行からお金を借りられない企業の需要をつかんでいる

などの特徴があります。
こうした特徴から、「お金を増やす」や「融資の効率化」といった目的に合うことから、ソーシャルレンディングはフィンテックに分類されると考えられます。

海外のソーシャルレンディングとの違い

欧米のソーシャルレンディングは個人向けの融資が中心であり、個人の与信調査等にAI技術が駆使されています。

借入希望者の属性データやカード及び銀行情報に対して、AIを利用して貸し付け限度額を定め、第三者がインターネットを通じて個人に対して資金を融資する、といったサービスが広がりつつあります。

一方、日本のソーシャルレンディングはmaneo社が個人向けの貸付プラットフォームを運営していたものの、その後に頓挫してしまいました。

その後日本では、個人向けではなく不動産投資というジャンルから市場が形成されつつあります。不動産投資は属人的なノウハウが多いため、日本のソーシャルレンディングはまだ十分にIT化されたとは言いがたい面があります。

よってテクノロジーという部分においては、日本のソーシャルレンディング業界はまだ工夫の余地があると考えられます。

不動産投資の可否も路線価や近隣の売買情報等をベースにAIを利用してのIT化は十分可能でしょう。

投資を身近しているソーシャルレンディング

フィンテックのもう1つの命題である、個人に対し金融取引を身近なものにする、という目的は達成しつつあります。

個人が少額で不動産投資をできるように

これまで日本の不動産投資は、直接的な現物投資、REIT、私募の不動産ファンド等、様々な形で存在していました。

しかしながら、いずれも多額の投資金額が必要とされたり価格変動リスクを取る必要があるため、一長一短の存在となっていました。

日本ではソーシャルレンディング市場が個人の不動産投資を身近なものにしたという側面があります。お金周りの利便性の向上というフィンテックの背景を考慮すると、日本のソーシャルレンディングもフィンテックサービスの拡大に貢献しているといえるでしょう。

テクノロジーという観点はこれから

海外で流行している個人融資型のソーシャルレンディングは、クラウド技術やAI技術を利用という意味でフィンテックのイメージと近いもの捉えられますが、日本では広まらなかった過去があります。

それにはカードローンなどが既に普及しているという背景があったでしょう。

しかしながら、いまAIなどのIT技術を駆使した個人向け融資のソーシャルレンディングが日本でも発展すれば、新しい事業者が参入するの可能性もあるかもしれません。

テクノロジーという観点で見れば、会計ソフトと連動させることで中小企業がソーシャルレンディングを通じて資金を借りること自体は実務上のハードルは高くないでしょう(法規制の問題は除く)。

今後は法人向け融資において、より高度なテクノロジーが活用される日がくるかもしれません。
いずれにしても、市場の立ち上がり時期という観点だけでなく、技術的な観点でも日本のソーシャルレンディング業界はまだまだ成長の余地があるでしょう。

まとめ

フィンテックは「技術=テクノロジー」という側面と、「サービスの向上」という2つの側面を有しています。

日本のソーシャルレンディングは、インターネットを活用した不動産投資の利便性向上を果たしていますが、テクノロジーという観点では欧米に後れを取っています。

金融及びお金周りのインフラは各国それぞれの歴史的経緯もあるので、他国のモデルがそのまま別の国で通用する訳ではありません。規制の強い日本において、フィンテック分野のサービスを活用することで今後さらに利便性が向上することは数多く存在しているはずです。

ようやく立ち上がった日本のソーシャルレンディング市場ですが、フィンテックと言う観点からもまだまだ成長の余地はあるでしょう。現状は不動産投資が日本のソーシャルレンディング市場の中心となっていますが、今後どのような形で成長していくのか、興味を持って見守りたいと思います。