資産運用会社は顧客から預かった資産を「分別管理」という仕組みで管理し、自社固有の財産とは厳密に分けて管理する義務があります。
今回はその分別管理について、ソーシャルレンディング事業者は他の資産運用会社とはなにが違うのかなどを解説します。
目次
分別管理とは
分別管理とは資産運用会社が、「顧客から預かった資産」と「自社の資産」を分けて管理することです。顧客の資産の安全を確保するため、金融商品取引法により義務付けられています。
厳密には、「資産運用会社は顧客のデポジット金から顧客が投資した金融商品まで」を分別管理することが求められます。例えば顧客の現金を管理する場合、帳簿上だけではなく、銀行口座を運用会社のものと分けなければいけません。
この分別管理が適切に行われることにより、不測の事態(運用会社の破綻など)が起きたときでも、顧客資産の安全が確保できます。
ただし分別管理が実際にできているかは、運用会社の体制によるところが大きいのも事実でしょう。もし行われていない場合、顧客資産の毀損が起こる可能性は十分ありえます。
分別管理はなぜ義務付けられたのか
金融商品取引法により分別管理が運用会社に義務付けられたのは1999年と、比較的最近のことです。
1999年以前、顧客資産は運用会社の固有の財産と同じ口座、金庫で管理されていることも多かったようです。帳簿上だけで別れていたので、実際には会社の運用資金に転用されるなどにより問題となることがありました。
こうした事態を受け、顧客資産の安全を図るために全運用会社に分別管理が義務付けられることになりました。
分別管理のメリットとデメリット
分別管理のメリットは、運用会社の財産と完全に分けられて管理されることにより、顧客資産の安全が図られることです。
もし運用会社が破綻しても、適切な分別管理が行われることにより、運用会社の負債の弁済は顧客資産により行われることはありません。
デメリットはコストがかかることです。
分別管理を適切に行うためには手間も費用もかかります。運用会社は分別管理を徹底するために外部機関の監査を受けていますが、それにも当然コストと時間がかかります。こうしたコストは間接的に顧客が負担することになります。
ソーシャルレンディング特有のデメリットは、その金融商品上の特性により分別管理が他の資産運用会社(証券会社など)ほど厳密ではないことです。
※後述
信託保全は行われていない
証券会社やFX業者が顧客の資産を預かる際、分別管理以外に「信託保全」という仕組みを採用しています。
これは信託銀行と信託契約を結び、資産の管理を委任することを指します。あらかじめ決められた目的だけにおいて、お金の入手金を行うようにするものです。
信託保全により、顧客の資産が運用会社固有の財産と厳密に分別管理され安全性が高まります。
現状、ソーシャルレンディング事業者の中に信託保全を採用しているところはほとんどありません。
運用会社が証券会社(AIP証券)であるスマートエクイティは信託保全を採用しており、案件の募集期間中に投資家が振り込んだお金は信託保全されています。
証券会社とFX運営会社は法律で信託保全が義務付けられています。しかし第二種金融商品取引業においては、分別管理は義務づけられているものの、信託保全までは義務付けられていないことには留意が必要です。
投資後の資産は分別管理されない
株式、債券、投資信託等を購入した場合、それらの資産は「証券保管振替機構(ほふり)」において、厳密に証券会社の資産と分けて保管することが証券会社には義務付けられています。しかしソーシャルレンディングにおいてはこのような仕組みはありません。
顧客が投資したお金は借り手に融資され、事業に用いられることになります。債権も運営会社が保有することになります。
投資者保護基金には加入していない
証券会社に預けられている顧客資産のうち、株式、債権、投資信託を購入するデポジット金は、投資者保護基金により保護が図られています。
これにより、運営会社の破綻時に分別管理が十分でなく顧客資産が毀損する場合、1千万円を上限としてその補償が行われます。
投資者保護基金への加入は全ての証券会社に義務付けられています。
ただしソーシャルレンディングが属する第二種金融商品取引業者には義務付けられていないことにも留意しましょう。
分別管理状況をまとめると
分別管理、その他顧客資産を守る仕組みの採用、加入の義務についてまとめました。
ソーシャルレンディングが属する第二種金融商品取引業の金融商品は、証券会社ほど顧客資産を守る仕組みが整っていないのが現状です。
ソーシャルレンディング事業者における分別管理の仕組み
ソーシャルレンディング事業者の分別管理状況は、各社のWEBサイトや案件投資時に閲覧と承認を求められる各書類(匿名組合契約約款、重要事項説明書、契約交付前交付書面など)に明記されています。
分別管理口座を設けている銀行や管理状況、管理方法が記されています。ここでは一般的なソーシャルレンディング運営会社が当局の指導により行っている分別管理方法をご紹介します。
- 投資家のデポジット金は「投資家用口座」にて分別管理されます
- 貸付実行時に運営会社の「貸金用口座」に資金がまず送金され、そこから融資先口座に送金される。
- 返済された元本、分配金は「分配用口座」にて分別管理される
注目すべきは「貸金用口座」です。通常のデポジット金は「投資家用口座」で管理されます。そのうち投資家が投資申し込みを行い、融資に充てられる資金だけを「貸金用口座」に移送することで厳密な分別管理を行っているのです。
デポジット金を極力預からない分別管理体制をとっている会社もある
スマートエクイティとトラストレンディングは、投資家のからのデポジット金を極力預からない分別管理体制がとられています。
投資家が案件に投資する際は投資確定分のみの振込を行います。投資額以上のデポジット金を預かることはありません。
償還、分配がある場合は「分配用口座」、「投資家用口座」ではなく、投資家の銀行口座に直接送金します。
まとめ 安心して任せられる資産運用会社を見つけよう
ソーシャルレンディング事業者の分別管理体制は、他の歴史がある投資商品(株・投信信託・FXなど)にくらべて不完全な傾向があります。
だからこそ運営会社を徹底的に調べ、安心して資産運用を任せられる資産運用会社を見つけられることが大事なのです。
ソーシャルレンディングはお任せで、投資中はすることが少ない投資商品です。せめてその前段階の運営会社の調査はしっかり行うことを心がけましょう。