どんな投資にも言えることですが、リターンが見込まれるものには必ずそれに伴うリスクがあります。当然、それはソーシャルレンディングも例外ではありません。
ソーシャルレンディングの基本的なメリットとデメリットについては入門講座 2.基礎知識:ソーシャルレンディングのメリット・デメリットについて理解しようで説明されていますが、本稿ではそれらをもう少し掘り下げ、デメリットに対してどう対応すればいいのか考えてみます。
目次
貸し倒れによる元本割れのリスク
どのソーシャルレンディング事業者も細心の注意を払ってファンドに組み込む案件を審査しているはずですが、それでも絶対に起こらないと言い切れないのが貸し倒れです。
これに関してはリスク相応の担保や保証がある案件を選ぶしかないわけですが、この際に考えたいのが担保や保証自体にかかるリスクです。
担保価値が下がってしまわないか
まず、担保の価値が下がって全額が弁済されない可能性はないかどうか考える必要があります。特に、不動産は価値が変動する可能性があるので、内容や市場を確認することが大事です。
また、担保の価値自体が下がっていなくても、簡単に売却先が見つからず査定価格では売却できないこともあります。
一般的には貸し付けに対する担保の割合である担保率(保全率)は100%以上になるように設定されているべきですが、実際にどのくらい余裕があるのかは自身で確認しておきましょう。
担保物件の価値が下がったり査定価格で売却できない場合、抵当権の順位が低いと全額が弁済されない可能性が特に高くなります。
ですので、担保率が低い場合は抵当権の順位が高いファンドを選び、抵当権が低い場合は担保率が高いファンドを選ぶとリスクが低くなります。
担保については「入門講座 4.基礎知識:ソーシャルレンディングの担保と保証の仕組み。確認方法や抵当権について」でも説明があるので参考にしてください。
保証債務は十分に履行されるか
保証に関して考えたいのは「保証人の財務状況が悪化して保証債務の履行ができなくなる可能性」です。
ただ、通常は借り手の企業の代表者やグループ会社が保証人となる場合がほとんどですので、融資先が匿名化されている状況では案件に記載されている事業内容や返済の実績などでしか判断できず、保証に関して詳細を追求することは難しいかもしれません。
そういう意味では、保証よりも担保を重視すべきでしょう。
例外的なのは、LCレンディングが提供するLCホールディングス保証付きファンドです。
このファンドは関連会社に対する貸し付けに対して親会社であるLCホールディングスが元本を保証するという形になっていますので、LCホールディングスが保証債務を履行できそうか判断すれば良いだけとなります。
流動性のリスク
ソーシャルレンディングは途中解約できません。そのため、万が一の時でも現金化できないというリスクがあります。
ソーシャルレンディングはいずれにせよ余剰資金で行うのが大前提ですが、「ラダリング」という方法を使ってファンドの買い方をちょっと工夫すれば流動性の低さに対応することが可能です。
ラダリングについては「ソーシャルレンディングの流動性デメリットを解消するラダリング!コンセプトと実践方法を解説」を参考にしてください。
早期償還・延滞のリスク
ソーシャルレンディングには予定通りの期日に償還されないリスクもあります。期日ぴったりに資金が償還される前提で再投資を行うつもりでいると、予定が狂う可能性がありますので、気をつけましょう。
早期償還は実際よくあることです。ただ、今※1ではさまざまなソーシャルレンディング事業者が頻繁にファンドの募集をしていますので、実際に早期償還になっても再投資先を探すのはそれほど大変ではありません。
また、延滞はまれではあるが起こっているというのが現状ですが、大抵の場合は一部だけ延滞(途中から延滞、案件の一部だけ延滞など)という形です。
リスクを考慮するため、ソーシャルレンディング投資は余剰資金でおこない、万が一期日より長い期間待つことになっても余裕資金があるようにしておきましょう。
ソーシャルレンディングの事業者自体にかかるリスク・問題点
融資先の詳細な情報がわからないという問題がある中、特に重要なのがソーシャルレンディング事業者の信頼性です。
これまでは、ソーシャルレンディング事業者にかかるリスクといえば、まず「経営悪化して倒産することで投資資金が戻ってこないこと」でした。そしてその対応策として主に推奨されてきたのは分散投資でした。
しかし、ソーシャルレンディング事業者が万が一不正を行なっていた場合という問題を考慮すると、倒産以前の心配をしなければならないことになります。
ソーシャルレンディング事業者は今後も増え続けると思われますので、事業者の信頼性や経営能力をしっかり検討することが必要になってきます。
具体的に考えたい例をいくつか挙げておきます。
ソーシャルレンディング事業者自体の情報を確認する
まずチェックしたいのが、自社の情報をしっかり公開しているかです。
新しい会社の場合は財務状況や実績の情報がなくても当然ですが、それ以外に代表者の経歴や知識、会社の方針や信念など基本的な情報なども提供されているか確認しましょう。
また、誰が出資しているのかなども確認しておきたいところです。必要であれば、親会社のサイトなどもチェックし、信頼性を確認しましょう。
調べた上で、当事者意識や明確なビジョンを持って会社が経営されている印象が全くない会社や、最低限の情報も提供されていない会社は要注意と見たほうが無難といえるでしょう。
案件の情報を開示する努力が見られるか
ソーシャルレンディングにおいて、もちろん融資先の匿名化という制約があるのは確かです。
ですが、情報が少ないことは投資家にとって不利であるということが分からないソーシャルレンディング事業者はいないはずです。
となると、私たちが注目すべきなのは、いかに各社が制約を守りつつ投資家に案件の情報を提供する努力をしているかです。
要は、「匿名化という制約を理由に本当に最小限しか情報を提供していない事業者」と、「制約を守りつつもできるだけ多くの情報を提供しようとしている事業者」のどちらを信用するべきかということです。
コミュニケーションをしっかりとることができるか
問い合わせがしやすいか、そして実際に問い合わせしたときにどんな対応を受けるかということからも、ソーシャルレンディング事業者の経営体制を垣間見ることができます。
問い合わせしても全く音沙汰がない事業者や、問い合わせ先がそもそも見つけにくいような事業者は、何か手違いや問題が起きたときにきちんと対応をしてもらえるのかどうかという懸念が膨らんでしまうのは当然でしょう。
プロモーションはあやしくないか
ソーシャルレンディング事業者のプロモーションの仕方にも経営方針が大きく表れます。
登録者を増やしたり投資しようか迷っている登録者に投資してもらうなど、プロモーションの意図を考えれば、常識的に何が妥当で何が過度かは大体見えてくるものです。
例えば、どう見ても過度なプロモーションを行っている事業者がいたとき、深く考えずに飛びつくのではなく、どうしてそのようなことをしているのか、運営体制として妥当なのか、などの視点で考えてみることも大事です。
海外ファンドに関するリスク・問題点
海外ファンドには特有のリスクがあります。そちらも簡単に見ておきましょう。
為替リスク
外貨建てで投資して返済された資金を日本円に戻す場合、為替リスクが生じます。というのも、円高になっていると為替差損が出てしまうからです。
為替市場のことはよく分からない場合や満期時には円高に進むと予測される場合は、借り手が為替リスクを負うように設定してあるファンドや、為替ヘッジが設定されるファンドを選びましょう。
もちろん満期時に円安になっていれば差益となって利回りが想定よりも高くなる可能性もありますので、そのような場合は、逆に「為替ヘッジなし」のファンドの方が良い場合もあります。
カントリーリスク
投資先の国の市場が暴落したり自然災害があったりした場合、貸付先の財務状況が悪化したり担保物件に影響が出たりする可能性があります。
厳密に言えばこれは日本国内で起こっても同じです。
しかし、海外の場合、日本とは違うことが違うタイミングで起こることがあるということです。
また、法制度という問題もあります。もし法規制がその国で行われると、その変更による影響を受ける可能性もあります。
例えば、最近ではペルーで税制改正があり、貸付返済時の支払利息に対する源泉徴収がなくなりました。
このため、クラウドクレジットのペルーのファンドでは分配金が想定よりも多くなることになりました。
この件は投資家にとって有利な変更でしたが、もし源泉徴収が増えるという改正だったら不利になっていたということです。
委託会社に係るリスク
海外ファンドの場合、海外のパートナー会社に業務を委託していることがありますが、このような委託会社に対してもソーシャルレンディング事業者にかかるリスクと同じことが言えます。
委託会社に関する情報はファンド情報に含まれているはずですので、こちらもきちんと確認しましょう。
まとめ
いかがでしたか。
リスクはリターンを得るうえで取らざるを得ないものですが、その事実を受け入れたうえでできるだけ融資先や事業者の内容をしっかり理解して対策を考えれば、リスクはリターンを生んでくれるものなのだと実感できるようになるはずです。
ぜひこれらの観点を踏まえ、リスクを考慮したソーシャルレンディング投資を行なってみてくださいね。