一昔前、投資信託と言うと「証券会社が販売している金融商品」とのイメージでしたが、銀行が投資信託の販売を始めて早10年以上の月日がたち、今では投資信託は資産運用先としてポピュラーな存在となっています。
2017年より大幅に対象が広がった確定拠出年金(iDeCo)も、運用先は投資信託となるので、国民の資産運用に投資信託は必要不可欠な存在となっています。
このように資産運用の主力商品ともなっている投資信託ですが、ソーシャルレンディングと比較してみると、それぞれにどのような特徴があるのかがより明確になります。
今回はソーシャルレンディングと投資信託の違いについて、相場性=流動性の有無、期限の有無、手数料、税金、の4つの観点から解説いたします。
1. 相場性=流動性の有無
投資信託の場合、ETF(上場投資信託)であれば日々そして株式市場がオープンしている時間帯は価格が上下しています。
また、ETFでなくとも、通常の投資信託はその日の株式市場の取引が終わると日々の基準価格が明らかになります。
投資信託は日々の相場変動があるため価格は一定ではありません。
しかしながら投資信託に価格変動=相場性があると言うことは、即ち流動性がある、ということになります。
投資家は保有している投資信託を売却しようと思えば、利益が出ていようと損が出ていようと、その場で売却して換金することができます。よっていち早く危険を察知した場合等は、早期に売却を行い換金することが可能です。
一方のソーシャルレディングは、一度投資を行った後は日々の価格の変動はない一方で、当初の契約期間が到来するまで換金はできません。
投資先の都合で早期償還となるケースも中にはありますが、投資家側は投資期間のコントロールは不可能です。つまり、投資先の状況が悪くとも、途中で損切りすることはできません。
また場合によっては、仮に満期まで1年の案件であっても、資金の回収に1年以上かかるケースがあります(期限通りに資金が返済されない)。このように最終的な損益とは別のところで、予定通りの期間に資金が返金されないリスクは考慮しておかなければなりません。
簡単にまとめると、
- 【投資信託】日々の価格の変動はあるものの換金しやすい
- 【ソーシャルレンディング】日々の価格変動はないものの換金の自由は投資家側にはない
となります。
2. 期限の有無
一部を除いてほとんどの投資信託には期限がありません。よって、一度購入した投資信託は、投資家が利益確定もしくは損切りで現金化しない限り、基本的には永遠にそのままの形で保有することができます。
投資信託での資産形成は、このように「期限がない」という特性を活かしたものとなっています。
例えば長期的な経済成長が望める国があり、その国の経済成長に連動する投資信託を長期間に保有することで、投資信託の値上がりによる長期的な資産形成が可能になります。
この場合、もちろん価格の変動があるため、一時的には含み損となる可能性もありますが、経済成長という追い風があるため、長い期間で投資信託を持つことで、いずれのタイミングで含み損が解消される可能性が高くなります。
よって、投資信託は基本的に長く保有すること多く、年金資金としての性格を有しているiDeCoは投資信託で運用するような設計となっています。
一方で、ソーシャルレンディングの各案件には必ず期限が設定されています。数ヶ月程度から2~3年まで、ファンドの運用期間は様々ですが、ソーシャルレンディングにおいて期限のない案件はありません。
よって、期限が到来した際、問題なく運用がなされていれば元本及び利息分が投資家には返済されます。
たとえ、そのファンドが非常に良い条件であり、「もう少し長く投資していたい」と、投資家が思っていたとしても、返済の遅延等のトラブルがなければ、必ず予定通りの時期に返済が行われます。
よってソーシャルレンディング投資では、継続的に長期に渡り投資を行う場合、随時案件を調べて新規の投資を行う必要があります。
その代わり、価格変動を追う必要および手間を省略できるメリットもあります。
【ソーシャルレンディングにかかる手間について知りたい方はこちら】
ソーシャルレンディング投資はどれくらいの手間がかかる?投資家10名に聞いてみた
3. 手数料
投資信託でもソーシャルレンディングでも、手数料がかかる点には留意する必要があります。
まずは投資信託については、種類によっては非常に多くの手数料が付加されます。証券会社や銀行に対する販売手数料、投資信託会社に対する報酬、年間の管理手数料等、投資信託によっては手数料だけで3%以上の金額が生じることもあります。
昨今はETFをはじめ、安い手数料の投資信託の数も随分増えましたが、毎月分配型の投資信託など、人気の投資信託の中には高い手数料を設定しているものもあります。
同じ内容で同じ利回りの投資信託でも、手数料次第で将来的な実質利回りは大きく異なる可能性があります。投資信託を購入の際は、どの程度の手数料がかかってくるのかも知っておく必要があります。
一方のソーシャルレンディングにおいては、主に入金手数料及び出金手数料が発生します。
手数料の有無は事業者によって異なりますが、いずれにしても少額投資を行う場合は手数料も実質利回り率には大きく反映される可能性があるため、考慮すべき点といえるでしょう。
通常の投資信託とソーシャルレンディングの手数料を比較すると気付くのが、投資信託は様々な手数料が付加されていくのに対し、ソーシャルレンディングは原則ソーシャルレンディング運営会社に対する手数料のみとなります。
手数料の分かりやすさとしてはソーシャルレンディングのほうが明白だと言えるのではないでしょうか。
ソーシャルレンディング投資は自動的に源泉徴収されている
ソーシャルレンディング投資を行っているうち、明細を見て気付くのが、本来の計算上の利息よりも少ない額が入金されている点です。
この差分の理由は大半の場合、源泉徴収分です。
多くのソーシャルレンディング運営会社は、投資家に分配を行う際は源泉徴収を行った上で分配を行っています。
よって中には計算値と実際の差分を手数料と勘違いされる方もおられるかもしれませんが、実際には源泉徴収分であることが多いのです。
源泉徴収は税金であり、手数料ではありませんのでご注意ください。
4. 税金
投資信託は株式と同じく申告分離課税で、源泉徴収方式も認められており、ほとんどの方が「申告分離課税の源泉徴収あり口座」を選んでいます。よって税金の支払いは証券会社が行い、損失の繰り延べ時以外は確定申告無しで良いのです。
一方のソーシャルレンディング投資は、課税方式は総合課税となります。よって給与所得と同じ税率が適用されることになります。
※こちらは「株式投資とソーシャルレンディング投資の違い」にて別途解説いたします。
投資信託とソーシャルレンディングの違いまとめ
iDeCoを始め資産運用の代表となった投資信託と比べれば、ソーシャルレンディングでの資産運用は知名度が低いでしょう。
投資信託は「長期で保有でき、長い目で見た資産形成が期待できる」という特徴を持っています。一方でソーシャルレンディングは各案件の期限が先に決められており、長期の運用に際しては、自ら投資先を次々に選ぶので、若干投資の際に手間がかかります。
しかしながらその一手間を掛けることができれば、年間利回り5~10%という高い利回りを期待できる金融商品に投資を行うことができ、更に日々の価格変動に一喜一憂する必要もなくなります。
ソーシャルレンディングは、まだ金融商品及び業界として発展途上である反面、高い利回りと言う魅力を有している金融商品と言えます。
ソーシャルレディングについて今ひとつ理解できないという場合、上記のように投資信託と比較して見ていくと、その違いや内容が具体的にイメージしやすくなります。投資信託とソーシャルレンディングの比較の際にご参考ください。