【ソーシャルレンディングの分配方法】元利均等返済、元本一括返済、満期一括返済の違いとは?

【ソーシャルレンディングの分配方法】元利均等返済、元本一括返済、満期一括返済の違いとは?

投資する案件を選ぶ際に、最も注目しがちなのは投資利回りや投資期間です。しかしながら、それらに加え、リターン分配と元本の償還方法にも注意するべきです。今回の記事では、現在ソーシャルレンディングで採用されている各分配方法、そのメリットとデメリットを徹底解説します。

分配方法は大きく分けて3つ

ソーシャルレンディングにおいてリターンの分配、投資元本の償還には現状大きく分けて3つのタイプがあります。

  • 元本一括返済
  • 元利均等返済
  • 満期一括返済

です。

表1に上記3つの分配方法の簡単な説明と主に採用しているサービスを掲載しました。

表1 リターン分配・償還方法概要
元利均等返済、元本一括返済、満期一括返済の違いとメリット・デメリットとは?

現在※1ソーシャルレンディング事業者に一般的に採用されているのが元本一括返済で、元利均等返済と満期一括返済を採用しているサービスは一部です。
その分配方法が採用される理由、違い、メリット、デメリットを知っておくことは、ソーシャルレンディング投資において、大きな武器となります。
なぜならば、その特徴をよく把握しておくことにより、投資資金の有効活用、リターンの最大化、リスクの把握が行えるからです。

元本一括返済:資金パフォーマンスは最大

元本一括返済はソーシャルレンディングのリターン分配、元本の償還方法としては現在もっとも多く採用されています。20以上あるソーシャルレンディングのサービスの3/4以上が採用しています。

このケースでは、ファンドの運用開始後、リターン分配が毎月支払われ、運用期間が終わった後投資元本が一括で返されるのが主流です。
ただし、リターンの分配は3ヶ月ごと(オーナーズブック、TATERU FUNDING)、1年に1回(スマートエクイティ)を採用しているサービスも少数ですがあるため注意が必要です。

元本一括返済のファンドに投資を実行する例として、運用期間12ヶ月、利回りが10%、毎月分配の案件に10万円を投資した際のイメージは図1のようになります。

元利均等、元本一括、元金一括、の違いとそのメリット・デメリットとは?
元本一括のリターン分配・元本償還のイメージ

毎月の分配の際にはリターンの836円だけが支払われ、最後の分配日である、12ヶ月目に最後のリターンの支払いと、投資元本の10万円が返却される形となります。

不動産開発の場合など売却による利益を得るモデルの案件である場合、この分配方法が採用されることが多いです。融資先にとっても不動産売却を行うまでは、元本を返す資金がないので、この分配方法が最も都合がよいのです。
もっとも投資家にとってわかりやすく、リターンが大きく魅力的にみえるためか、最近では案件の中身を問わずほとんどのサービスがこの分配方法を採用しています。

元本一括返済のメリット

1.元本の運用パフォーマンスが高い
2.利息の計算がししやすい
3.ファンドの運用がしやすい

1.元本の運用パフォーマンスが高い
 元本が返却されず最後までリターンを稼ぎ続けてくれるため、元利均等返済よりもリターンが大きくなります。

2.利息の計算がししやすい
 例えば上記の例の「10万円を運用期間12ヶ月、リターンが10%」ならばリターンは大体1万円です。簡単なものならば暗算でも大体のリターンが計算できます。

3.ファンドの運用がしやすい
 一度元本を投資すれば、その元本は運用期間が終わるまで、リターンを稼ぎ続けてくれます。月々の分配金が大きいわけではないため、その間投資家は分配金の再投資の必要性などを考える必要もありません。

元本一括返済のデメリット

1.デフォルトによる損失が大きい
2.早期償還が多い

1.デフォルトの損失が大きい
投資元本は最後に一括で返されるので、もし案件がデフォルトとなった場合、損失額が大きくなります。
リスク回避策として、担保付きの案件への投資に絞った場合、元本の保証性は高くなります。一方で、無担保の案件に投資した場合、その元本の多額が損失になってしまう可能性が大きくなることには留意しましょう。

2.早期償還が多い
運用期間は融資先が資金を回収できると見込んでいる期間よりも、長く設定されている場合が多いです。もし資金の回収が遅れた場合、延滞となり投資家に不安を与え、延滞金利まで払わなければならなくなるからです。

そのため、元本一括の案件では早期償還が比較的起こりやすいです。早期償還が起きた場合、当初の見込みよりもリターンは小さくなり、償還された元本を再投資するならばその運用先を探すための時間をとられることになります。

元利均等返済:安全性が高く、分散投資に有効

AQUSHとクラウドクレジットが採用している分配方法が元利均等返済です。クラウドクレジットでは主に運用期間が2年以上などの比較的長期の案件でこの分配方法が採用されます。

リターンと元本が毎月投資家に償還されるため、最初の分配月から最後の分配月まで同額のリターンを得られることが特徴です。

例として、10万円を運用期間12ヶ月、利回りが10%、毎月分配の案件に投資した時のイメージは図2のようになります。

元利均等のリターン分配・元本償還のイメージ
元利均等のリターン分配・元本償還のイメージ

毎月、リターンの分配と元本償還を合計して、8千791円が分配されます。

元利均等返済では、初期の分配月であるほど、分配額全体を占めるリターン分配額の割合が多いのに対して、償還日(満期)に近くなるほどその割合が小さくなります。
また「運用資金10万円・運用期間12ヶ月・利回り10%」で元本一括返済の投資を行なった場合のリターンは1万32円でしたが、元利均等返済の場合は5千495円と半分ほどになります。この理由については後述します。

融資先が個人で、その使いみちが事業でなく消費である場合、この分配方法がよく採用されます。理由は、毎月の返済額が一定であるため、融資先が返済計画を立てやすいためです。実際に日本では住宅ローンの返済方式にはこの方法が多く採用されます。

以下、元利金等返済のメリットとデメリットを紹介します。

元利均等返済のメリット

①デフォルトのダメージが小さくなる
②投資先が分散されやすい
③早期償還が起こりくい

1.デフォルトのダメージが小さくなる
元本が毎月償還されるため、デフォルトが起こった場合の損失額は元本一括返済より小さくなります。

2.投資先を分散させやすい
毎月まとまった額の元本が償還されるので、再投資する場合、自然に毎月異なるファンドに資金を分散させやすくなります

3.早期償還が起こりくい
現在クラウドクレジットが扱っている案件のように、融資先が数千~数万に分散されている場合、ファンドが安定的に運用されている限り早期償還は起きづらいです。
そのため、ファンドの運用が通常通りに行われれば、期待通りのリターンを得られる可能性が高いと言えるでしょう。

元利均等返済のデメリット

1.元本の運用パフォーマンスが元本一括に劣る
2.利息の計算がしにくい
3.ファンドの運用がしにくい

1.元本の運用パフォーマンスが元本一括に劣る
毎月分配のたびに投資元本が減っていくため、同じ利回りである場合、投資パフォーマンスは元本一括返済よりも劣ります。これは償還された元本を再投資することにより、投資パフォーマンスを向上させることは可能ではあるものの、それでも元本一括返済には劣るでしょう。

なお、分配時に占めるリターンの割合が後の方の分配であるほど小さくなるのは、毎月分配の度に投資元本が少なくなっていくためです。

2.利息の計算がしづらい
元利均等返済は元本一括返済に比べて投資家自らリターンを計算することが困難です。
※なお、クラウドクレジットは投資家がリターンを計算しやすいように、「投資倍率」というパラメーターを導入しています。投資後にリターンが何倍になるかは、この「投資倍率」により簡単に計算できます。

3.償還される元本の運用に手間がかかる
元利均等返済では毎月まとまった額が償還されるため、償還された資金を再投資に充てようと考えている投資家の場合、再投資の手間が毎月かかってしまいます。

満期一括返済:実は最大の投資パフォーマンス?

クラウドクレジットの運用ファンドのうち、運用期間が13ヶ月以下や比較的短期の案件、スマートエクイティの一部の案件で採用されている分配方法が満期一括返済です。これはその名のとおり元本償還とリターン分配が償還時にまとめて行われる分配方法です。

例として、10万円を運用期間12ヶ月、利回りが10%の案件に投資した時のイメージは下図のようになります。

満期一括のリターン分配・元本償還のイメージ
満期一括のリターン分配・元本償還のイメージ

リターンは元利均等返済と同額の1万32円ですが、元利均等返済のように毎月分配ではなく、12ヶ月目のファンド運用終了時(償還日)にまとめて分配されます。

この分配方式はスマートエクイティが取り扱っている「融資型」でない「事業投資型」のファンドでは通常に採用されている方式です。なお、運用期間が2年以上と長期に渡る場合は、1年に1回の分配を行う方式がとられることが多いようです。

クラウドクレジットでは短期の案件の場合、投資家に毎月分配を行うよりファンド内で再投資を行ったほうが、後述の理由で投資家利益を最大化させられるため、この方式がとられているようです。

以下、満期一括返済のメリットとデメリットを紹介します。

元本一括のメリットである「元本のパフォーマンス最大化」、「利息の計算が容易」、「ファンドの運用が容易」、またデメリットである「デフォルトのダメージが大きい」は前述の通りなので、割愛します。

満期一括返済のメリット

投資パフォーマンスが高い
同じ利回りの案件で考えた場合、元本一括返済と満期一括返済のリターン額は同一です。これを見ると「それならば毎月分配の方が良いのではないか。」と考える投資家も多いでしょう。

しかし、これは投資家にとってもソーシャルレンディング事業会社にとっても「効率が良くない」とも言えます。
まず、投資家にとっては、毎月分配された金額を再投資するには手間がかかります。実際には投資家のお金はファンドに投資しているままにし、ファンド内で再投資をしてもらえる構造であるほうが運用効率は高くなります。※2

また、ソーシャルレンディング事業社にとっても毎月利益分配することに手間がかかってしまいます。

満期一括返済のデメリット

毎月分配が良いという人にはおすすめできない
「ソーシャルレンディングの魅力が毎月分配である」と考える方にはおすすめできない分配方式です。また毎月の分配がないため、デフォルトが起こった際の損失は大きくなります。

まとめ

元本一括、元利均等、満期一括のメリット、デメリットをまとめます。

元利均等返済、元本一括返済、満期一括返済の違いとメリット・デメリットとは?
分配方法によるメリット・デメリット

現状、元本一括返済の案件が圧倒的に多く、そもそも選択肢があまりないため、投資家が選択の際に頭を悩ますことはそれほどないかとは思います。
ただし元本一括返済は上記のとおりデフォルト時のダメージが大きい分配方式です。今一度自分が投資している案件を見返して、リスクを取りすぎているように感じたら、以下のような見直しをご検討いただければと思っています。

1.リターンが低くとも、担保がより堅実な案件への投資割合を増やす
2.リターンが低くとも、デフォルトリスクが低そうな運用会社への投資割合を増やす
3.元利均等の案件を多く募集している運用会社への投資割合を増やす
4.投資額そのものを見直す

ソーシャルレンディングのデフォルトリスクは常にあるものと考え、分配方式からもその見直しを行うことを意識しましょう。

1)2017年4月時点
2)「満期一括の案件がその案件内で再投資しているような仕組みをすでに採用しているならば、元本一括よりも効率的に資金を運用できていることになります。分配方式はあくまで投資における、要素のひとつとしてお考えください。」https://fintenna.jp/1292/#i-6