白石代表が辞任へ。今後の運営体制への言及も。みんなのクレジット独占インタビュー【完全版】

白石代表が辞任へ。今後の運営体制への言及も。みんなのクレジット独占インタビュー【完全版】

本日3月30日(木)に金融庁から1ヶ月間の業務停止命令を含む行政処分が下されたみんなのクレジット。フィンテナは、前日29日の夕方に同社の中核的な幹部であり投資運用部の責任者であるS氏にインタビューを実施した。すでに要旨は速報しているが、ここにインタビューの詳細を掲載する。

——行政処分がくだされる前ではあるが、現時点での率直な感想はあるか。

みんなのクレジット投資運用部責任者(以下、「」内はすべてS氏の回答)
「どんな理由であれ、投資家のみなさまを不安にさせたことは申し訳ないと思っています。私も白石も心から申し訳ないと思っております。」

——貸出先について、投資家に誤解を生ぜしめる記載があった。

「現在のところソーシャルレンディングを包括するような法規制はありません。投資の募集勧誘については金融商品取引法、貸付けに関しては貸金業法が対象法令になります。それぞれ管轄する規制当局の部門が異なるため、都度、双方の確認をとりながらサービスの運営を進めてきました。特に、融資先情報の匿名化については、かなり厳しく指導を受けていました。案件情報の出し方はもちろん、ウェブサイトで使用する写真などについても厳しくチェックを受けています。主たる融資先であった親会社は不動産開発事業を行っており多様な案件を取り扱っていましたが、匿名性を高めるために、案件が異なる場合には、融資先が同一であっても表現を意識的に変えていました。その結果、ほぼ同一の貸付先でありながら、複数の不動産事業者に貸付けをしているような見え方になってしまいました。」

「今回の勧告内容の中で、当社の親会社、グループ会社に貸付けが集中していたとの指摘がありましたが、それ自体については、当社として隠す意図は毛頭ありません。グループ間の貸付は同業他社でも行われており、それ自体に違法性はないと考えています。ただし、その表現の仕方についてはもう少し工夫の余地があったのではないかと反省しています。現在は企業ごとにナンバリングを行い、しっかりと識別はできるように修正を行っています。」

——行き過ぎた匿名性追求が原因とのことだが、他社を見ればだいたいの水準も分かるのではないか。匿名性を高めるというのを口実に、意図的に投資家を欺こうとしてたということはないか。

「投資家を欺く意図は全くありません。ウェブサイト上の表現については何度も当局とやりとりをしながら進めてきました。これまで当社が受けてきた指導からすると、他社の中には、融資先を具体化しすぎている会社もあるのではないかと考えています。東京都に2,3回『これはOKなんですか』と相談したこともあります。今回の指摘を受けて、当社としても可能な範囲で融資先の具体化を行っていきたいと考えていますが、どの程度までの開示であれば問題無いかの判断は難しく、関係省庁に相談をしながら慎重に進めて行きます。」

——貸付けの中には担保設定していないものが存在しているにもかかわらず、ファンドの貸付債権が保全されているかのような誤解を与える表示で募集したと指摘されている。

「基本的にすべての融資に対して何かしらの担保設定は行っています。しかし、その一方で融資契約とファンドが社内書類上、紐付けできていないものがあったことは事実です。」

「この事象について戸建分譲事業の例を使って説明します。基本的な戸建分譲事業の工程は、土地の仕入れ、造成、建築及び販売の流れになります。全ての工程でおおよそ12か月から15か月程度の期間を要します。本来であれば、通期にて一括でファンド募集を行うべきでしたが、投資家様から短期償還ファンドのご要望が多かったことから、複数工程を複数のファンドに分けて募集を行いました。当然、複数ファンドの1本目については社内書類上、融資契約書、売買契約書などとの紐付けがなされています。しかしながら、その他のファンドについてはその紐付けができていないものがありました。ウェブサイト上の記載についても匿名性の観点からファンド間の関連性を提示していませんでした。この事象だけ見れば、確かに担保が付いていないファンドがあると指摘されても仕方がない状況だと思います。これについては、当社の管理が不十分であったと反省しています。現在はすべての社内書類を整え、問題ない状態になっています。」

——ファンドの償還資金に他のファンド出資金が充当されている状況があると指摘されている。もしそのような事態があればポンジ・スキームではないか。

「まず、指摘されている”償還資金に他のファンド出資金が充当されている状況”については、意図はしておりませんが、そのように捉えられても仕方がない状況があったことは事実です。通常であれば、借り手は借入金によって仕入れた物件が売れるなどして、売上が立ってから返済するというのが原則ですが、融資先である甲社との取引が活発化し、同時並行で稼働しているファンドが増加するにつれて、甲社の管理が煩雑化し、売上があがる前に返済をしてしまうという事象が複数回発生しました。これは甲社の管理が適切に行われていなかったことが原因です。しかしながら、取引実体があることは検査でも確認が取れており、ポンジスキームでないことは断言できます。もし、これがポンジ・スキームであれば行政処分では済まされず、刑事罰になっているはずです。当社として融資先を充分に管理、モニタリングできていなかったことは事実ですので、その点については深く反省をしています。現在は、融資と対象案件の対応関係をすべてチェックし、問題がないことを確認しています。」

——事務的な落ち度があったということだが、「未必の故意」という言葉もある。このままの体制では危ういという自覚はなかったのか。

「個人的には、このままの体制では危険だと思っていました。免許取得から1年後にあたる2017年3月くらいには検査があるだろう、という予想を立て、実は金融庁の検査が始まる2週間前に、内部で模擬検査を実施しようとしていた矢先でした。結果的にはその前に検査が入りこのような状況となってしまいました。」

——金融二種業者としては、融資後も資金の活用状況などを追跡するなど貸出先をモニタリングしなくてはならないのではないか。貸出先がグループ企業だから、モニタリングが甘くなっていたのか。

「グループ企業なので、フォーマルに報告を求めなくとも、インフォーマルに情報が入るという甘えがあったことは認めます。ただし貸出条件、審査、モニタリングに関しては、外部の弁護士も含めた投融資審査会を設け公平に行ってきました。」

——白石代表がファンド出資金を自身の借入れ返済等に使用している状況という指摘が、最もインパクトをもって受け止められていると思う。この点についてはどうか。

「まずこの話は、みんなのクレジットの話ではなく、甲社の内部で行われていた話です。みんなのクレジットのファンドで集めたお金が直接白石に振込まれていたわけではない点は誤解がないようにしたいと思っています。」

「甲社の支出が先行していたこともあり、甲社の白石に対する役員報酬は、役員報酬ではなく仮払金という形で払われていましたが、オーナー企業であればよくある処理だと思います。その仮払金が貯まってしまっていた、というのが1つありました。また、白石の個人的な支払いや債務について、本来、役員報酬等の形で自分の個人口座で受け取ったお金を、個人口座から最終的な支払先に振り込み支払うべきです。ところが、今回は直接甲社の口座から支払い先に送金してしまっていました。これは現象面を見ればおかしいことだと考えています。指摘を受け、白石が甲社に対して弁済しました。現在ではこのような白石への支払いは精算し終わっています」

「急激に事業が拡大し、管理体制が追いつかなかった部分もあります。検査担当者からも、いつまでも5−6人の商店のレベルで運営していてはダメだと言われました。体制を強化しようとはしていましたが、会社の急激な成長速度に追いつかず、もっと巻きを入れてやらないといけなかったと反省しています」

委員会の指摘において株式会社甲とされている企業は、債務超過の時期があるなど、借入過多であると指摘されている。

——ファンドからの借入れを返済することが困難な財務の状況があったと指摘されている

「まず誤解しないでいただきたいのは、財務についての指摘はみんなのクレジットではなく、融資先の甲社についての話です。指摘にある通り、2016年内は大きく仕入が先行していました。これは、不動産事業をやっている方になら分かって頂けると思いますが、仕入れが先行すると、どうしても赤字は大きくなってしまいます。年が明けてからは、刈り取りの時期にさしかかっており、どんどん売上も立ってきています。例えば今月(17年3月)は黒字です。今年の11月頃までの案件は出口(編注:物件の売却)がフィックスしています。甲社の不動産事業が本格化したのは、みんなのクレジットのファンドが集まりだした2016年5月頃からです。それ以前に、甲社に大きな形での黒字があったわけではありません。」

——甲社の財務諸表など、エビデンスとして何か公表していくつもりはないのか

「この件に関連して、甲社の財務諸表出すことは、貸出先を開示することに当たるため出すことができません。信用不安が無いということについて、証拠として、情報開示の制約がある中でどのように表現したら良いか、また、何らかのものが出せないかということは考えております。今週都庁にも相談に行きます」

——今回の指摘を受けて、どのように対策をしていく予定か。

「勧告内容については粛々と対応していく予定ですが、すでに指摘された事項の80%程度は検査期間中に改善されており、検査官もそのことを理解してくれています。現在は、コンプライアンス態勢、内部管理態勢の強化を中心に進めています。検査期間中にコンプライアンス部門に1名、管理部門に2名、人員を追加しています。また、情報伝達や資金管理の仕組みについて、できる限りシステム化する方向で動いています。」

同社のスタンスは、親会社である甲社の資金管理体制に問題があったことが、今回の指摘の大きな原因の1つであるという立場である。インタビューでは、みんなのクレジットと甲社を含めたグループは、管理部をグループで共通化していることが判明した。

——グループとはいえ、融資元と融資先がそもそも管理人員を共有していることは問題ではないか。

「グループ体制を取っている企業群では管理部門を共通化している会社も多くあると思いますが、弊社グループは急成長をしたので、そこに追いつかない部分は有り、そのことは問題だったと思います。もちろん利益相反が起きないよう、意思決定の段階では第三者が参加する融資委員会を作るなどしていたが、今後は体制を更に強化し変えて参ります。」

最後に、結局投資家の資金がどうなるのかについて聞いた。

——投資家に向けて「お金は返ってくる、大丈夫だ」と一言あれば安心するのではないか

「まず我々の立場としては、勧告が出た金曜日から何十本という投資家からの電話に真摯に対応し、預り金の払い戻し請求がある場合は応じています。私どもの信頼回復というのは、そういうことを繰り返していくしか無いと思っています。これを『大丈夫です』という言葉と受け取って頂けるかはわかりませんが、一度このような事態を招いてしまった私どもとしては、挽回するには、こうして積み重ねていくしか無いと思っています。」

「指摘の通りの不備等はありましたが、それは書類上のことであり、貸付先に対する運用というものは確実にされておりますし、そこに関しては大丈夫です。」

——一言投資家の方にコメントして頂きたい。

「もうお詫びしか無いです。心配をおかけしていることは事実です。書かれようについてはともかく、現象そのものについては存在しました。最終的には帳尻が合っているとしても、わかりにくくなっており金融機関として管理が杜撰であったという点については申し訳ないという思いしかありません。それは白石も言わせていただいています。処分の内容にかかわらず、言葉だけではなく行動で示していくしか無いということを、全員思っています。」

結果としてみんなのクレジット社に対する行政処分は、1か月間の業務停止命令となった。行政処分における業務停止は、あくまで是正のために営業を停止すべき最低必要な期間という意味あいが大きく、期間が短ければ事象として軽いということを直接的に意味するわけではない。

今回の処分を受けて、本日(2017年3月30日)、代表の白石氏が辞任の意向を表明した。ファンド管理態勢及び社内管理態勢の構築を急務とし、その態勢が整い次第、責任の所在を明確にすべく、代表取締役を辞任する。今後の株式会社みんなのクレジットは、新体制で業務再開を目指していくことになる。

今回の処分内容、また代表辞任を受けて、改めてS氏にコメントを貰った。

「本日(2017年3月30日)、関東財務局より1か月の業務停止と業務改善命令を拝受しました。処分内容につきましては厳粛に受け止め、粛々と業務改善を行って参ります。大変なご心配とご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。厳しい勧告内容に対して1か月という業務停止期間に留まったことについては、検査期間中に監視委員会からの指摘事項を早期改善してきたことをご評価いただけたものと認識しております。

この度、代表の白石が辞任を表明いたしましたが、今後は新体制でより一層業務の改善に励んで参ります。実務経験が豊富な各部門の事業責任者が経営メンバーに加わり、合議制で事業の方向性の決定、運営管理を行って参ります。

この数日間、多くの方から大変厳しいお叱りのお言葉をいただきました。改めて深く反省すると共に、このような状況でも弊社を信頼し応援いただいている方々には、感謝の言葉も見つかりません。今後、二度とこのようなことが起こらないよう、今回の処分を真摯に受け止め、スタッフ全員が一丸となり信頼回復に努めて参ります。」

今後、同社がどのように抜本的に体制刷新を図るのか、償還はどう推移するのかが注目される。フィンテナでは、引き続き本件について注視し伝えていく。