クラウドファンディング「融資型」と「不動産投資型」は何が違う?

クラウドファンディング「融資型」と「不動産投資型」は何が違う?

クラウドファンディングと一口に言っても、リターンを求めない「寄付型」から、ベンチャーやスタートアップに投資できる「株式投資型」まで幅広く存在します。

ここではその中から、堅実なリターンが期待される「融資型」と「不動産投資型」の二つにスポットを当て、類似点、相違点について紹介していくことにします。

 

クラウドファンディングとは?

まずは簡単に、クラウドファンディングの説明から。

クラウドファンディングはCrowd(群衆)とFunding(資金融通、資金調達)を組み合わせた言葉で、「ネット等を利用し、不特定多数から資金を集める」という仕組みのことです。

その集めた資金を何に出資するかによって、クラウドファンディングには種類があります。

リターンを求めない寄付をするなら寄付型、集めた資金で貸付を行うなら融資型、商品を買うことに用いるなら購入型、というように、「**型のクラウドファンディング」と呼ばれているわけです。

一般的にクラウドファンディングというと、応援の気持ちで出資する寄付型や、新商品などをいち早く試す購入型が有名ですが、金額ベースで言えば融資型が大半を占めています。

2019年においては、購入型及び寄付型の市場規模が169億円であるのに対し、融資型の市場規模は1,113億円となっています。

2020年は不動産投資型が大きく伸びることが期待され、融資や投資のクラウドファンディングが市場規模の大半を占める流れは変わらないと推測されます。

(出典:「クラウドファンディング市場調査報告書」 一般社団法人 日本クラウドファンディング協会 2020年6月)

融資型クラウドファンディング

融資型(貸付型)クラウドファンディングは別名、ソーシャルレンディングとも呼ばれています。

これまでお金を貸す主体は金融機関や貸金業者でしたが、融資型クラウドファンディングの登場により、投資家が間接的に貸金業を行うことができるようになりました。

融資型クラウドファンディングでは多くの場合、資金返済の確実性を高めるための保全(担保や保証)が付されます。

(無担保、無保証の案件もあります)

 

担保の例としては、以下のようなものが代表的です。

  • 不動産に抵当権を設定して担保にする
  • 信託受益権(不動産産から発生する賃料などの利益を受け取る権利)に担保を設定する

また保証の例としては、以下のようなものがあります。

  • 貸付先の法人代表者の連帯保証
  • 保証会社による債務保証

融資型クラウドファンディングに投資することで、国債や預金より高い利率(一般的には3~6%くらい)を受け取ることができますが、一方で貸した資金が返ってこないリスクがあります。

また、一部案件では貸付先や担保の情報が非公開になっているものもありますので、よく案件情報を確認する必要があります。

不動産投資型クラウドファンディング

不動産投資型クラウドファンディングは、投資家から集めた資金を不動産へ投資します。

通常不動産を所有するには、大きな資金が必要になりますが、不動産投資型クラウドファンディングでは小口資金から投資が可能となります。

不動産投資型クラウドファンディングと似た投資商品に、不動産の権利を分割した不動産小口化商品もあります。

二つの投資商品の違いは、不動産小口化商品が不動産を直接所有するのに比べ、不動産投資型クラウドファンディングはあくまでも不動産に投資を行うだけで、直接所有するものではないというものです。

(*一部、不動産を直接所有する任意組合型のクラウドファンディングも存在します)

この違いにより不動産小口化商品に比べ、不動産投資型クラウドファンディングは一般的により小口から、より短期間での投資が行えるという特徴があります。

また不動産投資型クラウドファンディングでは、投資する不動産の情報が公開されています。

貸付先や担保が非公開なこともある融資型と比べ、透明度が高いという特徴があります。

不動産投資型クラウドファンディングの利率は、3~4%くらいの案件が多いようです。

劣後出資とセイムボート出資

不動産投資型クラウドファンディングは不動産を直接所有しない代わりに、多くの案件で元本や利金の返済確実性を高める仕組みがあります。

その仕組みは「劣後出資」と「セイムボート出資」と呼ばれ、投資家と同じ案件に事業者が投資することで、対象となる不動産を適切に管理運用しようという動機付けになるものです。

劣後出資とセイムボート出資には一長一短があり、どちらが優れているという性質のものではありませんが、多くの不動産投資型クラウドファンディング事業者では、劣後出資を採用しているところが多いです。

それぞれの内容について説明します。

 

 

・劣後出資

投資家の出資を優先出資として、事業者は同じ案件に劣後出資を行う。

万が一不動産の価値が下がった場合、劣後出資分(事業者の出資金)が最初に損害を受け、事業者の出資金がゼロになるまでは投資家の出資金は損害を受けない。

一方で、不動産の運用が予定より順調であっても、優先出資者(投資家)は当初決められた利率までしか受け取れず、超過利益は劣後出資者(事業者)が受け取る。

事業者の出資割合が多いほど投資家の資金の安全性は増すが、一方で投資家向けの募集金額は減る。

・セイムボート出資

投資家と事業者が順位を付けず同じ案件に出資する。

対象不動産の運用が予定より順調であれ、不調であれ、その超過利益や損失は投資家と事業者が同じように受け取る仕組み(セイムボート=同じ舟という意味)。

融資型と不動産投資型の違い

融資型と不動産投資型クラウドファンディングの違いは、法的には明確に決められています。

融資型の場合、ファンド組成のために金融商品取引業の登録が必要であり、事業者自らが貸付を行うためには貸金業の登録が必要です。

これに対して不動産投資型の場合は、不動産特定共同事業法に基づいて事業を行います。

ただ投資家の側から見ると、どの法律に基づいているかというのは重要ではなく、その特徴が重要です。

融資型と不動産投資型を比較すると、下記のような特徴の違いがあります(案件ごとに詳細は異なるので、あくまでも全体的な話です)。

 

・透明性:融資型≦不動産投資型

(融資型には貸付先や担保詳細が非公開の案件があるため)

・利率:融資型≧不動産投資型

(最低利率は同じくらいだが、融資型の一部には高利率のものもある)

・多様性:融資型>不動産投資型

(不動産投資型は不動産案件のみだが、融資型は再生エネルギーや事業性資金など幅広い)

・出資金の返済確実性を上げる仕組みとして、融資型の多くには担保や保証があり、不動産投資型には劣後出資などがある

 

まとめ

以上が、融資型と不動産投資型クラウドファンディングの簡単な説明となります。

投資家から見ると、融資型と不動産投資型にはあまり違いがないように思えるかもしれませんが、担保の有無や劣後出資構造などの相違点があることは注意です。

融資型と不動産投資型のクラウドファンディングは、どちらが優れているというものではありません。

「クラウドファンディング」というくくりは同じですが、細部は異なる二種類の投資商品として見るべきでしょう。

 

記事執筆:SALLOW