任意組合型と匿名組合型の違い、どちらが良いの?

任意組合型と匿名組合型の違い、どちらが良いの?

不動産特定共同事業(不特法事業)に基づいて運営される不動産投資型のクラウドファンディングには、「匿名組合型」「任意組合型」と2つのタイプがあります。

これはどのクラウドファンディングサイトであっても、必ずファンドの説明や契約書に記載されていますが、具体的にどのような仕組みで、違いがどのようなものかご存知でしょうか?

ポートフォリオを考える上でも知っておくべきタイプとなるので、本記事では「匿名組合型」「任意組合型」について解説していきます。

匿名組合型とは

匿名組合型のファンドは、主に短期間での資産運用を検討している方におすすめの仕組みです。

概要

匿名組合型は、その名の通り投資家と事業者との間で「匿名組合契約」を締結し事業を行います。匿名組合契約とは、商法に規定されている契約形態の一つで、投資家(匿名組合員)がファンド運営社(営業者)に出資を行い、ファンド運営社が行った営業により生じる利益の分配を受ける権利を約束する契約です。つまり、投資家はそのファンドに出資を行うのみで、実質的な不動産の所有権はファンド運営社が持つ仕組みが「匿名組合型」です。

仕組み

匿名組合型

特徴

  • 少額(1万円~など)から投資が行える
  • 事業者と投資家との間で不動産の売買契約は発生しない
  • 登記費用や不動産取得税は発生しない
  • 投資により得られるのは配当を受ける権利のみで、不動産の所有権は得られない
  • 相続税対策ではなく資産形成向けのファンド形式
  • 3ヶ月など運用期間が短期のものが多く流動性が高い
  • 有限責任となり投資した額以上の責任は発生しない

少額から始められることや、有限責任となりリスクが少ないことから、節税を目的としないポートフォリオで投資を考えられている方や、初めて不動産クラウドファンディングで投資をされる方におすすめの方式です。

任意組合型とは

任意組合型のファンドは、中長期での運用や節税対策として投資を検討している方におすすめの仕組みです。

概要

任意組合型は、その名の通り投資家と事業者との間で「任意組合契約」を締結し事業を行います。任意組合とは、各当事者が出資をして共同の事業を営む契約です。つまり、匿名組合型と違い、単に出資をするだけでなく、出資比率に応じて不動産そのものを他の組合員と共同で実際に所有する形式が「任意組合型」です。

仕組み

任意組合型

特徴

  • 高額(数十万円~)投資が行える
  • 事業者と投資家との間で不動産の売買契約が発生する
  • 実際に不動産の所有権を得ることになるため、登記費用や不動産取得税がかかる
  • 投資により得られるのは配当を受ける権利と出資割合に応じた不動産の所有権
  • 資産形成よりも、税金対策向けのファンド形式
  • 数年など運用期間が長期のものが多く流動性は高くない
  • 無限責任となり投資した額以上の損失が発生する場合がある

現物不動産取引と同じ節税効果が見込めることから、相続対策等に主軸を置いたポートフォリオを組まれている方におすすめの方式です。しかし、現物不動産と同じように無限責任を負うことになるので、一定不動産投資に対する知識と経験をお持ちになってから検討された方がよいでしょう。

匿名組合型と任意組合型の違い

最も大きいのは節税効果の有無と、責任範囲の違いでしょう。

任意組合型は実際に不動産を所有するのとほぼ同じ扱いとなります。不動産は相続税の対象となる評価額が同額の現金よりも低くなるため、相続対象の資産は現金よりも不動産で持っていた方が相続税の節税に効果的とされています。一方で、現物不動産を保有するのとほぼ同じ扱いとなるため、万一対象不動産物件が自然災害等で損傷を受け、想定していた運用が行えない場合などは、実際の出資額以上の責任を負う可能性がある投資方法です。そのため匿名組合型より上級者向けの投資方法と言えるでしょう。

どちらも特徴があり、それをメリットと捉えるかデメリットと捉えるかは、投資をどのような位置付けとして捉えているか、ポートフォリオ次第になるため、自分が出資するファンドがどちらの方式を用いているのか?その特徴は自分にとってメリットなのか?を、よく考えて意思決定をされるとよいでしょう。

匿名組合型 任意組合型
物件の所有権 なし あり
節税効果 なし あり
分配金の課税区分       雑所得 不動産所得
運用期間 短期間(3ヶ月前後が多い) 長期間(数年単位が多い)
出資単位 低額(1万円からなども可能) 高額(数十万円からが多い)
責任範囲 有限責任(出資した金額以上の責務は発生しない) 無限責任(出資した金額以上の責務を負う可能性がある)

※ 上記の内容は、一般的な一例であり、組合商品によっては異なる場合があります。

まとめ

不動産投資型クラウドファンディングで扱われる小口化商品には、匿名組合型と任意組合型があり、それぞれ特徴が異なる性質を持つことをご理解いただけたかと思います。

中長期で節税を目的とするならば任意組合型のファンドを。短期・中期での資産運用を主軸に考えるならば匿名組合型というように、投資目的に応じ最適な投資先は変わってきます。

同じ匿名組合型でも、優先劣後構造の有無やその割合、収益構造がインカム型なのかキャピタル型なのか、運用期間や最低投資金額(口数)、予定分配利回りなどでポートフォリオの考え方も変わってきます。それぞれのファンドの特徴や内容を理解し、投資目的やリスクを総合的に判断し、選択することが大切です。

優先劣後・収益構造の違いについては次回の解説記事で詳しくご説明します。