当記事ではNISA (ニーサ) について、概要・利用に際した注意点・NISAを活用した資産形成のコツなどをご説明していきます。
目次
NISAとは
NISAの正式名称は「少額投資非課税制度」と言います。その名の通り、投資の一定額を非課税にする制度です。個人の投資活動を促進するために、2014年4月にスタートしました。
NISAという名称は、イギリスのISA (Individual Savings Account) という制度がモデルになっています。ISAに「Nippon」の「N」を足しNISA (Nippon Individual Savings Account) となりました。
NISAでは、年間120万円まで投資ができます。この120万円の投資で得た利益が非課税になります (税金がかからないお金は一般的に「非課税投資枠」と呼ばれています) 。また、非課税の期間は最長で5年です。例えば、2014年に非課税投資枠で購入した金融商品で得た利益は2019年まで税金がかかりません。
NISAを用いた資産形成
投資の利益が非課税になることの恩恵は、値上がり幅が大きくなるほど強くなります。よって、NISAを用いた資産形成は基本的に、短期投資よりも長期投資と相性が良いと言えます。5年の非課税期間が終わったとしても、さらなる成長が期待できそうであれば翌年のNISA口座へ引き継ぐことができるので、資産を非課税のままじっくり成長させることができます。
逆に、短期で何度も売却を繰り返し利益を稼ぐような方法には向いていません。金融商品を売却しても非課税投資枠の再利用ができないので、すぐに年間の限度額に達してしまうでしょう。
NISAの活用例
例えば、100万円の投資によって、1年後に150万円の利益を出せたとします。通常ですと、投資で得た利益に対し約20(20.315)%の税金がかかりますので、利益の50万円のうち約10万円が税金として差し引かれることになります。ところが、NISAでの取引をした場合にはこの税金がかかりません。よって、この場合NISAで10万円の得をしたことになります。
NISAの始め方
①口座の開設先を決める
NISAを始めるには、専用の「NISA口座」を開設する必要があり、銀行、証券会社、一部の生命保険会社などに申請すれば、日本国内居住者の20才以上であれば誰でも開設することができます。
NISA口座の開設先は慎重に選ぶことをお勧めします。NISAで取引できる金融商品は複数ありますが、銀行、証券会社、生命保険会社などによってそれぞれどんな金融商品を取り扱っているかが異なるためです。「口座を開設した後で希望する金融商品の取り扱いがないことがわかった」と後悔しないように、事前にHPなどを確認しましょう。
②口座開設を申請
事前に口座開設資料の申請をしておくと、スムーズに申請ができます。
③NISA口座開設完了
口座の利用の前に、2重口座になっていないかの確認が必要です。確認は、個人で行う方法と税理士に依頼する方法があります。税理士に依頼する場合には、取引開始までに2~3週間かかります。
NISA利用の注意点
口座は1人1つまで
NISA口座は1人1つしか開設できません。
非課税投資枠の再利用は不可
NISAでは非課税投資枠の再利用もできません。例えば、50万円の金融商品を購入した場合、その50万円を売却しても、再びその非課税投資枠を利用することはできません。一度50万円分の非課税投資枠を利用したら、その年で使える残りの枠は限度額の120万円から今回の購入金額を差し引いた70万円です。
余った非課税投資枠の翌年以降の持ち越しは不可
当年で非課税投資枠を1円も利用しない場合でも、翌年にその分が繰り越されることはなく、この場合は単に120万円の非課税投資枠を失ったことになります。
非課税対象にならない金融商品もある
全ての金融商品がNISAで非課税対象になるわけではありません。
NISAで取引できる金融商品は「株式投資信託」「国内・海外上場株式」「国内外ETF・ETN」「国内外REIT」「新株予約権付社債」などです。逆に、「非上場株式」「預貯金」「債券」「公社債投資信託」「MMF・MRF」「e ワラント証券」「FX」「金・プラチナ」などは非課税対象になりません。
損益通算ができない
損益通算とは、それぞれ別の場所で出た利益と損益をぶつけて相殺することを指します。
NISA口座での損益は他の口座との損益通算ができません。例えば、NISA口座で50万円の損失を出し、もう1つ別の口座で50万円の利益が出ている場合には、50万円の利益分は非課税扱いにできず、通常通り税金を払う必要があります。
5年の非課税期間が終わったら
NISAで非課税になるのは、購入から5年までとご説明しました。では、購入した金融商品は5年が過ぎる前に必ず売却しなければならないかというと、そうではありません。NISAで購入した金融商品は、非課税期間が終了する年の翌年のNISA口座へ引き継ぐ (ロールオーバーする) ことが可能です。引き継ぐと、非課税期間を新たに5年間延長することができます。非課税期間終了時点で、購入した金融商品が投資限度額の120万円より値上がりしていた場合でも、全ての金額を翌年の非課税投資枠に移すことができます。例えば、当初100万円で購入した株が150万円に値上がりしていたら、150万円すべてをロールオーバーさせることができます。ただし、そのロールオーバー分で非課税投資枠を全て使い切ってしまうことになるので、その年の新規の枠はなくなります。
また、NISAで購入した金融商品を、通常の課税口座へ移すことも可能です。ロールオーバーをしなかった場合は、自動的に移管されるようになっています。
新制度について
NISAは2024年以降、非課税投資枠が「2階建て」の制度に変わります。
それぞれ限度枠は、「1階」が20万円、「2階」が102万円です。年間の「1階」の非課税投資枠を使い切った場合に「2階」に投資ができます。合わせて5年で610万円まで非課税で投資できるので、従来制度より非課税投資枠が増額された形になります。ただし、「2階」部分は現行のNISAで取引されている金融商品の1部は非課税の対象外になります。