
今回は融資型クラウドファンディングに関連する法律のうち、金融庁管轄である金融商品取引法の改正に焦点を当てて説明していきたいと思います。
金融商品取引法とは
「証券取引法」という名称にて制定、運用されていた法律を元に、金融・資本市場をとりまく環境の変化に対応し、利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上、「貯蓄から投資」に向けての市場機能の確保及び金融・資本市場の国際化への対応を図ることを目指し、平成18年6月7日に「金融商品取引法」と改名されました。
この法律は、企業内容等の開示の制度を整備するとともに、金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もつて国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする。【引用:金融商品取引法 第1条-電子政府の総合窓口e-Gov】
有価証券(株式や債券等)の発行や売買に関するルールを定めた法律のことで、金融型クラウドファンディングにおいても本法令の定めに従い運営されています。
金融商品取引法で規制される範囲
クラウドファンディングには、大きく3つの分類「寄付型」「購入型」「金融型」があることは別の記事でもお伝えして来ました。
このうち、国内で運営事業者の数が最も多いのは購入型です。理由として、購入型は金融商品取引法などの規制で制限されることがなく、許認可を取得する必要がないことから参入障壁が低く、誰でも簡単に始められることが挙げられます。また、寄付型も同様ですが、税制優遇の対象となるプロジェクトを実現する場合には、特定団体としての許認可を受ける必要があります。
なぜ購入型・寄付型の規制が厳しくないのかは「金銭によるリターンを伴わない」ことが理由です。購入型のクラウドファンディングでのリターンは、直接的な金銭ではなく、対価を支払い商品やサービスを受け取るという、ECサイトと同じスキームとなっています。そのため、購入型クラウドファンディングでは特定商品に関する法律(特定商品取引法)※に準拠することが求められていますが、特定の許認可を受けなければ参入できないという強い制約は設けられていません。
トラブルが起きやすい「金融商品」を直接扱うことになるため、運営事業者側の体制についても厳しい観点で審査が行われ、一定の基準を満たした事業者のみがクラウドファンディング事業を展開できるようになっています。
※消費者トラブルが生じやすい特定の取引を対象に、トラブルを防止し消費者の利益を守るためのルールを定めている法律です。一方、金融型は返済金利の一部を分配する融資型、収益を分配する投資型、株式取得を行う株式型は全て「金融商品」に該当します。そのため、金融型のクラウドファンディング事業を行う場合は、金融商品取引法上の登録と許可が必須となっています。
※不動産投資型クラウドファンディングの場合には「不動産特定共同事業法」の許認可で運営をしている場合があります。
金融商品取引法改正の背景
2015年から施工された金融商品取引法ですが、インターネットを活用し、有価証券等の金融商品を募集することについては、今まで特別な規則は設けられていませんでした。そのため、金融庁は2014年に実施された金融商品取引法の改正の中で、投資型クラウドファンディングの利用促進に関する制度を整備しました。
そのうち大きな変更点は以下です。
①参入用件の緩和
<改正前>
- 有価証券を勧誘するためには、「金融商品取引業者」としての登録が必要
- 非上場株式の勧誘は、日本証券業協会の自主規制により原則禁止
<改正後>
- 「第一種電子募集取扱業者」「第二種電子募集取扱業者」を新たに設置
- 少額(募集総額1億円未満、一人当たり投資額50万円以下)の投資型クラウドファンディングを取り扱う金商業者については兼業規制等を課さないこととするとともに、登録に必要な最低資本金基準を現行の5,000万円から1,000万円に引き下げ
- 非上場株式の勧誘を、発行価額の総額1億円未満、かつ一人当たり投資額50万円以下の少額のクラウドファンディングに限って解禁(自主規制規則)
②投資者保護のためのルール整備
<改正前>
- 特段の規定が存在しなかった
<改正後>
- インターネットを通じた投資勧誘において詐欺的行為等が行われることを排除するための行為規制を新たに導入
- 詐欺的な行為に悪用されることが無いよう、クラウドファンディング業者に対して、「ネットを通じた適切な情報提供」や「ベンチャー企業の事業内容のチェック」を義務付け。(第29条の4 登録の拒否、第35条の3 業務管理体制の整備、第43条の5)
詐欺的な行為に悪用されることが無いよう、クラウドファンディング業者に対して、「ネットを通じた適切な情報提供」や「ベンチャー企業の事業内容のチェック」を義務付けるとともに、投資者保護の観点から、非上場株式や少額電子募集取扱業者によるファンド持分の勧誘を、ウェブサイトと電子メール等のみ限定し、電話や訪問等による勧誘を禁止しました。
また、ウェブサイトや電子メール等により非上場株式やファンド持分の取得の申し込みをした場合、申込日から8日間は申し込みを撤回できる、クーリングオフの制度を定めることで、消費者が安心してクラウドファンディングによる投資を行える環境が整備されました。
今後、更に法整備が進むことにより、金融型クラウドファンディング市場も拡大していくことが予想されます。大切な資産を運用する上で、関連法令としてどのようなものがあるかを知っておくことは必要な知識です。
金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成26年法律第44号)に係る説明資料(金融庁)
http://www.fsa.go.jp/common/diet/186/01/setsumei.pdf
財務省関東財務局資料:
http://kantou.mof.go.jp/content/000112570.pdf