世界的にFintechというキーワードが注目されて久しいですが、そのFintechの中でも、主要な領域として位置づけられるているのが融資の新しいあり方を提唱したP2Pレンディングと呼ばれるビジネスモデルです。
今回はそのP2Pレンディングについて詳しく解説していきたいと思います。
P2Pレンディングとは
P2Pレンディングとは、インターネットを通じて、資金の出し手となる一般の個人と中小企業や個人を結びつける仕組みのことです。
個人から集めた資金で融資を行い、支払われた利息の一部を分配します。
資金の出し手は、銀行預金や国債などよりも魅力的な利回りを手にすることができ、資金の受け手は、銀行よりも柔軟で使い勝手の良い資金調達の選択肢を得ることができます。国内では「ソーシャルレンディング」「貸付型クラウドファンディング」などと呼ばれています。
海外で成長するP2Pレンディング
P2Pレンディングは、アメリカ、中国、ヨーロッパを中心に世界中でその規模を拡大しています。
2008年のリーマンショック以降、世界的に銀行から消費者、中小企業への金融引き締めが強まる中、その合間を縫って台頭してきたのがP2Pレンディングです。
米国で最大のP2Pレンディング業者が2014年12月にNY証券取引所に上場したLending clubです。当時の時価総額で1兆円を超えるなど盛り上がりを見せるFintech企業の最注目株として話題になりました。
Lending clubはテクノロジーを駆使し、資金を借りたい個人と、資産運用したい個人を効率的に結びつける仕組みです。資金の出し手は、プラットフォーム上に提供されるツールを用いて、借主の格付け、利率、貸付期間、所得に対する借入の比率等の信用状況を閲覧することができます。
自己の投資基準を設定し、それに見合った借主に投資を行うことができます。その他、法人を対象とした貸付を行うfunding circleや学生ローンの借り換えニーズを上手く取り込み急成長中のSoFiなどがあります。
国内のP2Pレンディング市場
日本国内では、2008年より日本初のP2Pレンディング事業者としてmaneoがサービスを開始しました。
その後、SBIグループ傘下のSBIソーシャルレンディング、第一種金融商品取引業者として運営を行うクラウドバンクなどが新規参入し、2016年8月現在で約17社の企業が存在しています。
矢野経済研究所の市場規模は2015年時点で約283億円と他国に比較するとまだ小さな市場である一方、国内の預金残高は800兆円と世界最大であり、高いポテンシャルを秘めていると考えられます。
個人間融資を中心とするアメリカや中国と異なり、日本では個人から資金を集めて中小企業に融資するというスキームが一般的となっています。
P2Pレンディングの仕組み
日本では、投資家が直接貸付を行うのではなく、貸付を行う主体を間に置き、その主体が投資家から融資資金を集めるというスキームが採られています。(例外もあり)
ここで用いられるのが匿名組合契約という仕組みです。
匿名組合契約とは、営業者と匿名組合員(出資者)との間で締結されるもので、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)のために出資し、その営業から生じる利益の分配を受ける契約です。
この利益の分配を受けとる権利を金商法では、集団投資スキーム持分といい、株券や債券と同様、有価証券とみなされます(株券のように実体が無いため、みなし有価証券と呼ばれることもあります)。
匿名組合への投資勧誘を行う行為は、営業者が自ら行う場合、第二種金融商品取引業に該当し、金融商品取引業の登録が必要となります。
一方で、匿名組合への投資の勧誘を営業者自らが行わず、販売を担当する別の第二種金融商品取引業者に委ねる場合は、営業者自身が金融商品取引業者の登録をする必要は無くなります。
P2Pレンディング、貸金業法上の規制
P2Pレンディングは資金を募って貸付を行うというビジネスモデルの性質上、貸金業法上の制約を受けます。貸金業法では債務者保護を第一に考えるため、P2Pレンディングのファンドにおいては、借主を特定できる情報を開示しての募集は禁止されています。
また、一つのファンドから単一の貸付を行うことも認められていません。こうすることで、万一、貸し倒れが発生した際に、貸金業法をよく理解していない一般個人が債務者の元に違法な取り立てに行ってしまうなどの行為を防ぐことができます。
また、貸金業を持っていない業者が、P2Pレンディングのプラットフォームを利用して貸金業を行うという潜脱行為も防止できます。
一方で、投資家の立場からすると、情報の透明性が損なわれてしまっており、情報開示の徹底を要請する金商法との間に矛盾が生じています。
まだ、新しいビジネスモデルあるため、直接的に規制する法律が日本ではありません。貸金業法と金商法という2つの法律にまたがってサービスを展開せざるを得ない状況においてこの課題を解消していくか。十分に議論を重ねていく必要があります。